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STORY ~白銀の物語~  作者: 黒羽カウンター
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vsナウロ1

 宙を舞う無数の酸が次々と凍りついては砕けていく。


『レイ、守るだけでは勝てはしないぞ』

『わかってるよ、このままじゃジリ貧だね……』


 相手の攻撃もレイ自身には届いていないが、レイの氷も宙で溶かされて当たらない。


「その年齢でその魔力量、将来有望だったのだろう。もっとも、君に将来なんてものはもう存在しないんだがね?」


(あの機械達が邪魔だな…。彼の実力も決して低くは無い。あの機械達が厄介さに拍車をかけている)


 白衣の男の周りを飛び交う幾つもの飛行物体からレーザーが放たれる。


氷壁グラスミュール


 氷の壁で幾らかは防げるが、酸とレーザーにすぐに砕かれる。


「どうかね、私の造った化学兵器は?」

「化学……」

「聞き慣れないかね?化学とは弱者の知恵の結晶と言うべき代物だ!魔力を持たざる者達が魔法の代用品として気を扱い、武術を身につけ、戦う力を手に入れた。だが、気を扱えない者、力の弱い者はそこから更に弱者の立場に立たされた。そして生まれた物が科学であり、化学だ!!」


 男は唐突に興奮しだし、語り始める。


「魔法で容易く生み出せる火や水を、化学は誰でも生み出し、飲めるようにした。気を纏わなくても重い物を運び、素手では到底壊せないような物も壊せるように多くの道具や装置が生み出された。強者にしか許されなかった物を誰にでも扱えるようにした物が化学!魔力も少なく、体も虚弱な私が君と対等に渡り合えているのも化学の力だとも!!」

氷結ル・ジェル


 いくつかの浮遊物が凍りついたが、氷を砕き、レーザーが照射された。


「何っ!?」

「残念だがこの飛行型光線照射銃、通称ニードルビーは寒冷地仕様で凍っていても問題なく稼働する。出力はもう少し上げたかったが、まぁ人間を撃ち殺すには十分な威力があるからね」

「凍らせて駄目なら壊すしか無いね」


 氷の壁で攻撃を防ぎながら氷の槍を飛ばすが、ニードルビーの動きは思いの外素早く、まともに当たらない。


「ニードルビーの飛行速度は大したものだろう。当てるのは難しいかな?」


 しかし、先程凍らせたニードルビー達を氷の槍が捉え、撃ち抜く。


「……ふむ、凍りついたものは速度が十全には出ないか。改良の余地ありだな。おっと…!」


 撃ち抜かれた機械を眺める男に氷の槍が飛んでくるがぎりぎりで躱す。


「随分と余裕じゃないか。自分の機械が壊されたのに」

「当然だとも。壊されたと言っても7機のうちの3機、それに君は時間が経てば経つほど生命力を失い、弱体化していく。今でも結構きついんじゃないのかね?」


 レイの顔色は悪く、動きも初めに比べ鈍くなってきている。


「そもそも君こそ、その子供達を庇いながら戦える程の余裕など無いのではないかね?」


 レイの後ろには白衣の男にやられた生徒達をおり、守る様に氷の壁で覆われていた。レイが度々作り直しているから保っているものの、放っておけばすぐに壊されるだろう。


「余裕が無いから見捨てる、という訳にはいかないんだよ」

「それが君の美学かね?美学に準じて死ぬというのなら止めはしないとも」


 男か手を上に翳すと、液体が球体状になって集まっていく。


「今の私はこれだけの量の魔力を操れる。昔と違って魔力が増大した今ならば君を跡形もなく溶かす事も出来るだろう」

「させないよ!」


 阻止する為に飛ばした氷が、男の後ろから飛んできた機械に切り落される。


「飛行型対物切断兵器、通称マンティス。私の脳の電気信号に接続して動いているこれらは、私が思うだけで君を襲う。この兵器達は私では同時に7機までしか動かせないが十分な脅威だろう?その電動刃は掠めただけで肉をズタズタにする。ヒヒッ、かなり痛いぞ」


 鎌の形をした兵器がレイに向かって飛んでくる。


氷剣グラスラム


 氷で出来た剣で横から薙ぎ払うと動いていた刃が砕ける。


『ああいった装置は些細な事で壊れやすい。それにあの光線を撃つ装置よりは速度も遅い。危険ではあるが脅威度は低い』


 フローヴァの言うとおり、マンティスは脆く、強い衝撃で簡単に動かなくなった。それでも追加されるマンティスと、未だ残るニードルビーが脅威である事は変わらない。


「しまっ……」


 足がふらつき、避けるのが一瞬遅れた事でレーザーに足を撃ち抜かれる。


「うぐぅ……氷壁グラスミュール!」


 すぐさま造りだした壁もレーザーで砕かれ、体中を貫かれる。


「タイムオーバーだよ、君ぃ。その体では逃れる事も出来ないだろう」


 男の頭上には巨大な水球が浮かんでいた。


「私と化学を馬鹿にした者達は皆溶かしてやったが、いつ見ても他者を見下す者の絶望した顔は最高だ…、誰もが苦しみに耐え切れず殺してくれと嘆願してくる。君には苦しみの末に死んでもらうよ」

「……おじさんに1つ、教えて…上げるよ」

「何かね?」

「僕の美学っていうのは…ね、僕が誇らしく思う…生き方なんだよ。苦しむ…人を…守らず戦うくらいなら…負けていいし、死ぬのなら…美しく死ぬと決めている。だから…苦しむ顔なんておじさんが見る事はないよ」

「そうかね」


 息も絶え絶えながら、美しき笑みを浮かべ見上げるレイに、男は掲げる手を振り下ろした。

(語り部)

「本編で出てこなさそうだけど、この白衣の男の名前はナウロ。魔力の少なさでいじめられ、首謀者の顔を焼いて停学。魔力の少なさを化学兵器で補っていたが、その実力に嫉妬した他の学生に化学を馬鹿にされ、全身を爛れさせ、通っていた魔法学校を退学、工業国で兵器開発をしていた所で今回の話に乗ったそうだよ」

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