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STORY ~白銀の物語~  作者: 黒羽カウンター
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黒い箱

「なんか数日前からあのエミールって先輩、行方不明なんだってよ」


 パンを口にしながらライガの話を聞いていると、3日前に唐突に屋敷の中から姿を消したらしい。窓が開いていた事から何処かに出ていき、帰ってこれなくなったのかもしれないと王都中を捜索しているらしい。


「大方お前に負けたのが悔しくてダンジョンにでもいったんじゃねーのか?拉致られたんなら音沙汰無しってのもおかしな話だし、伯爵家にバレずに侵入して立ち去るなんて中々できることじゃないだろ」


 大抵の貴族の屋敷には侵入者に反応する結界が張ってある。余程の腕の持ち主でなければ気づかれずに侵入するなど出来はしない。


「あの先輩、プライド高そうだし、行方不明っていうならショウに仕返しする為に身を隠してたりするかもな!夜道には気をつけろよ〜」


 登校中、そうライガは笑っていた。

 学院の正門でコレットを迎え、教室へ向かう。


「今日はワニャンコの新作ぬいぐるみの発売日だから買いにいかなきゃな!」

「あ、ワニャンコ!私も欲しい!」

「なら一緒に買いに行くか!って言っても寄り道許されそうにねーし、姫さんの分も買って明日渡すか」

「よろしくー!」

「すっかり打ち解けたな」

「打ち解け過ぎな気もするけどね」

「……おい」


 ロウダスに促されると、校舎の前には人だかりと、ある人物が立っていた。


「これはこれは、ご機嫌麗しゅう、王女殿下。そして、ショウ・シュヴァルツゥゥ……」


 校舎の前で待ち伏せていたのは行方不明になっていた筈のエミールだった。


「……おはようございます、エミール先輩。行方不明と聞いてましたけど、学院に来てたんですね。安心しました」


 つい先日とはまるで別人のような雰囲気を出すエミールに、思わず警戒する。


「いやなに、ちょっと力を得るのに時間がかかってしまっただけさ。丸2日は気を失っていたらしいが、目覚めた時はまるで生まれ変わったかのようだったよ!いや、本当に生まれ変わったと言うべきだろうね」


 顔色は青白く、不健康そうだが、気分が高揚しており、常に笑みを浮かべるエミールは不気味だった。


「ショウ・シュヴァルツ、1つゲームをしようじゃないか」


 明らかに様子のおかしいエミールだったが、胸元から黒い箱のような物を取り出す。


『あれは……!!』


「おい君、ストレンジス君じゃないか!行方不明と聞いて心配したぞ。今までどこに……」


 近くにいた教師がエミールへと近づいていく。


『近づかせないで!』

「……!みんな離れろ!!」

「呑め、ブラックボックス」


 イブの言葉に反応してショウが叫ぶと同時に、エミールの手の平に乗っている箱が急激に大きくなっていき、ショウ達を呑み込んでいった。

____________________


「……ここは?」


 ショウは四方を真っ黒の壁に囲まれた部屋の中に1人でつっ立っていた。それぞれの壁に扉がついている。


『面倒な物を持ち出されたね』

「これはあの黒い箱の力か。あれは魔道具なのか?」

『あれは魔導具の中でもとびきり厄介な部類だよ。ショウは黒魔道士の事は知ってるよね』

「黒魔道士といったら一人しかいない。……もしかしてあれは……」

『そう、あれは黒魔道士の遺物だ』


 かつて、天に愛されていると言われた魔道士がいた。あらゆる魔法を極め、多くの学問を修め、どの分野の実力者も彼には敵わなかった。どこの国からの誘いも断り、自身の研究に明け暮れ、周りからの羨望と嫉妬の念を集めた。だが、やがて彼の研究は人の道を外れていき、国が滅ぶ事すらあった。彼を恐れた各国は各地の有力な魔道士を集め、彼の魔道士の討伐を命じた。集結した魔道士達は間違いなく実力者揃いだったが、彼の魔道士の力は圧倒的で、殆どの魔道士がなすすべ無く蹴散られていった。残った魔道士達の力では倒す事は出来ず、彼の魔道士を封じる事しか出来なかった。その魔道士の事を黒魔道士と呼び、彼の創り出した強力な魔道具達は黒魔道士の遺物と呼ばれた。


『黒魔道士の遺物は度々争いの火種となってきた危険な魔道具。表舞台に出てきては危険過ぎて破壊されてきた筈だけど、一体いくつあるんだか』


 イブが呆れているとエミールの声が聞こえてくる。


『ゲームの説明をしよう。このブラックボックスは決して壊れる事のない要塞。内外からの攻撃では破壊出来ず、入った者が脱出する事も許さない。解除方法は1つ、この箱の鍵を持つ、私含め4人の所有者を倒し、鍵を奪って解除する事』


 説明を聞いていると息苦しさを感じる。


『それとこの箱は中にいる者から生命力を奪っていく。そしてそれを元に中にモンスターが生み出されていくぞ。君達はモンスターを倒しながら私達を探し出し、倒さなくてはならないという訳だ!それと、今尚この箱は拡大していき、中に人々を呑み込んでいっている。人数が増えれば僕らを探す人手と戦力は増す分、吸われる生命力も増加しモンスターの戦力も上がる。実に面白いゲームだろ?』


 エミールの笑い声と共に目の前に白いモンスター達が現れた。


『精々頑張ってくれたまえ、諸君。そして、私の元に辿り着いてみたまえよ、ショウ・シュヴァルツ?』

(語り部)

「黒魔道士を討伐するのにAランク以上の魔道士が1000人以上集まり、束になっても勝てなかったのだから、相当の実力者だった事がわかる。とはいえ、後に遺物と呼ばれる魔道具達や召喚魔法で召喚されたモンスター達もいたから黒魔道士個人の戦闘力はどれほどかは未知数だね。少なくとも国からの指名手配では危険難度SSSランク指定されていたよ」

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