売られた喧嘩
「私の名はコレット・フォン・アヴァンテンド、これから共に学べる事を喜ばしく思いますわ。宜しくお願い致しますね、皆さん」
教室の前に立ち、挨拶をするコレットの姿は、昨日までとは別人のようだった。ポンコツさは陰に潜み、仕草の一つ一つに気品を感じさせ、見る者に畏敬の念を抱かせた。
「あれがショウの護衛対象ね……本当にお姫様が来るとはな」
「姫様、実に見目麗しい……護衛依頼というのは引っかかるけど、僕らがいればある程度の事は問題ないと思うよ」
「ショウを雇えばもれなく俺達もついてくるし、安上がりでいいよな!」
「別にお前達は護衛しなくていいんだけどな」
コレットは完璧な王女様を演じようとしていたが、実は緊張していたのか、割と直ぐにボロが出た。
「コレット様、素のままでいいんじゃないですか?」
席に向かう最中に足を滑らせ、転びそうになった所をショウに抱きとめられて赤面していた。その後も口調がたまに素に戻る時もあり、周りにも薄々感づかれつつあった。
「良くありません。これでも王族ですからね、王女として恥ずかしくない行動をとらねばなりません」
「皆の前で思い切り転びそうになってショウに抱きかかえられて顔真っ赤にしてた人が言うことかね〜」
「うるさいわね!緊張くらいするのよ、私だって!」
「ほら直ぐに素が出る。姫さんのポンコツさがばれるのは時間の問題だろーな」
「ライガ、流石に不敬だよ。例え事実でも大っぴらに言うことじゃない」
「事実言うな!」
「姫さん、そういうとこ。周りが見てるぞ〜」
食堂では目立つと中庭で食事を取っていた。通り過ぎる生徒達も当然いるので、何人かには見られていた。
「しっかし、姫さんて結構頭は良いんだな。指された問題スラスラ解けてた」
「当然よ、既に学んだ所なんだから。私が魔法を発現させた時から魔法について学んでいるので今行ってる授業内容はいわば復習のようなものよ」
「そういえばコレット様の魔法はどんなものなんですか?」
「それは…」
「ショウ、お前に客だ」
ショウの質問に答えようとした時に、ロウダスが数人の来客を連れて来た。
「貴様がショウ・シュヴァルツだな?」
高圧的な物言い、初対面の筈だが明らかに親しげではない。
「そうですが、貴方は?」
「私はエミール・ストレンジス、五期生だ」
「そうですか。それでエミール先輩、用件はなんですか?今は昼食中なんですが」
「率直に問おう、何故貴様のような平民が王女殿下の護衛などしているのだ?」
「何故と言われても……依頼されたからですが」
「本来そういった話は我々貴族が引き受けるべき案件だ!たかだか少し強いばかりの平民風情が受けていい話では無いのだっ!貴様のような平民が隣にいては王女殿下の品格が疑われる」
王女の護衛を引き受けるのは名誉な話であり、そのまま近衛騎士になった話もある。ストレンジス家は伯爵家、貴族としては名と顔を売る良い機会なのだろう。
「お前みたいなのがどうやって王女に近づいた?姑息な手でも使ったんじゃないのか?ん?」
エミールの取り巻きの一人が蔑むようにショウを睨みつける。
「無礼ですよ、貴方達!彼は私達がその実力を買って雇ったのです、貴方達に口出しする権利などありません!」
「これは失礼、王女殿下。ですが、実力というのならそんな一年坊主の平民なんかより我らの方がいい筈ですよ?」
エミールとその取り巻きは態度はでかいが実力は確か、五期生の中ではトップクラスの成績を誇る。
「私はそうは思いません。ショウの実力は見てたし、貴方達より強いんじゃないの?」
「なっ…!?」
「何より……」
コレットがエミール達を睨みつける。
「私は貴方達と一緒にいたくないわ!」
「コレット様、地が出てますよ」
「くっ……ショウ・シュヴァルツ!貴様など仮初の力でいきがってるただの雑魚のくせに!!」
「?」
何の話かとショウが首をかしげる。
「私は調べたのだ。貴様は魔剣を所持しているな。貴様の魔剣は全てがSランク相当の魔剣らしいじゃないか。それもどうやって手に入れたか怪しい物だが、お前の力は所詮その魔剣の力に過ぎん!貴様など魔剣がなければただの雑魚よ!それを否定したくば私と魔剣無しで戦え!!そして負けたら王女殿下の護衛の任を降りろ!!」
ショウを指差して宣言するエミールにライガ達が思わず呆れる。
「せっこー……」
「格下とか言っておきながら相手に制限を施す、美しさの欠片も無いね」
「………(雑魚はこいつらだろうに)」
模擬戦の申し出に不敵な笑みを浮かべたショウは全ての魔剣を空間収納から取り出し、ライガ達に預けた。
「いいですよ、面白そうだ」
「ショウ!そんなの受けなくても…」
止めようとするコレットに跪き、手に持っていた風の魔剣を差し出す。
「コレット様、この魔剣は俺にとって最も大事な魔剣、この魔剣を今だけ貴方に預けます。勝って必ず受け取るんで待っていて下さい」
「な、なによ急に……わかったわよ、預かっといてあげる」
疾風をコレットが受け取る。8本全てを手放したショウを見てエミール達がほくそ笑む。
「ならば試合場に行くぞ!」
エミール達の後ろをついていくショウ達を見送る神々達。
『なんなら賭けでもしてみる?』
『成立しない賭けを持ち出すでない』
『5分もかからず終わるんじゃないか?』
『いや…それで言うならもう少し持つじゃろ。あれで魔力量はなかなかじゃ』
『私はね〜……』
『( ˘ω˘)スヤァ』
神々にとっては唐突に降って湧いた遊戯でしかない。
(語り部)
「連チャンで昼休みを休めないよね、ショウ。アッシュにコレットにエミール、面倒そうだね。因みにエミールの取り巻きはともかく、エミール自身は本当に成績は優秀なんだよ、実技は5位以内をキープするくらいには。身分差別が激しくて嫌われてるけれど」




