依頼受諾
「そもそも学院内で護衛が必要なんですか?それに護衛なら俺より強い人もいるでしょう」
学院の周辺には結界が張ってあり、不審者の侵入を許さない。
「学院内では従者を引き連れるのは基本的に禁止しています。昔に馬鹿な貴族の息子が連れてきた従者が問題を起こしたことがありましたからね。ですが生徒間の主従関係は認めています。ですから同年代の従者を連れて行くか、学院で従者を探す子もいます。勿論、脅しで無理矢理させている場合は処罰対象ですが」
「それで学年が同じ、それでいて実力も申し分ない君に依頼しに来たんだ。学院内でもトラブルは起こるかもしれないからね。それに、こちら側の事情もあって君に受けてもらいたかった」
「事情…ですか?」
「それについては申し分ないけど説明出来ないんだ。あまり気にしないで貰いたい。あぁそれと、報酬は1日につき10万エラーでいいかな?」
一般的な平均収入が大体20万前後で考えるならたった2日で並んでしまう金額だった。
「結構な金額ですね、子供に払うには多すぎないですか?正直金額はいくらでも、なんなら無くてもいいんですが」
「これは王女の護衛の正式な依頼だからね。金額はそれなりに高くなるよ。命の危険も伴う物だからね、護衛というのは。それに責任も発生する」
もし王族の護衛でありながら王族を死なせてしまった場合は死罪に値する。重大な傷を負わせた場合でも処罰物だろう。
「確かにそうですね。受けたからには死んでも守りますよ、死ぬ気はありませんが」
そう言い切るショウを見てローウェルは笑っていた。
「……君ならそう言う気はしたよ。それでは、明日から通学する予定だから、明日から宜しく頼むよ」
「わかりました。明日から宜しくお願いします、コレット様」
「こちらこそ宜しくね、私の騎士様?」
「騎士は却下で。俺の事はショウと呼び捨てにでもしてください」
「なんでそんなに騎士って呼ばれたくないのよ。嫌いなの?」
「……俺は騎士を尊敬しています。自分がそう呼ばれるにはまだ相応しくなく、呼ばれたくないだけですよ」
「ふーん……」
「あとコレット様を主と思うつもりが無いので私の騎士様は正しくないかと」
「いいじゃない!私がそう思ってるんだから!今くらい主と思いなさいよ!」
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真夜中に刀を振り続ける。今や誰も気にしない光景になってしまった。
『王女様の護衛か〜、実際のとこ引き受けてよかったの?学院に通う間行動に制限がかかるけど』
「別に構わないだろ。クラスは同じらしいし、学院の敷地内だけだからな丸々1日中縛られる訳じゃない」
『そうなんだけどさー、な〜にかありそうなんだよね。また面倒事に巻き込まてる気がする』
何が不満なのかイブから文句を言われ続ける。
「いつもの事だろ」
『まあね〜』
正直言うならまた何かしら起きるのかもしれないとは思っている。俺に依頼を頼む事情というのも気にかかるし、何かが近づいてきている気もする。
「それより、大分魔力操作がうまくなった気がするんだ。前より身体強化も……」
気がつくとイブの姿が見当たらない。先程まで持っていた刀も無く、場所も家の前では無くなっていた。
(急に転移した?……いや、この感覚は……これは夢か)
素振りしている最中に寝てしまったのかもしれない。
(実は疲れが溜まっていたのかな……)
自身の体に少し不安を抱いていると、女の子の泣く声に気づいた。視線の先には茶色い髪の女の子がうずくなっていた。
「君、どうかしたのか?なんで泣いているんだ?」
(これ、俺の夢の中だよな?だとしたら知り合いか?どこかで見たような…)
目の前の女の子は泣きながら小さな声で何かを呟いていた。
「私は……したかった……なのに」
「ん?なんて……」
「私はただ、幸せになってほしたかっただけなのに……」
目の前の女の子の髪が白くなっていき、足元から現れた茨に包まれていく。そして周りには夥しい数の骸骨が転がっていた。
「お前は…幸福か!なんで俺の夢に…!」
幸福からは敵意は感じられず、ただ泣き続けていた。
「私は…あなたを……」
そう言って手を伸ばす幸福に近づこうとした瞬間、無数の茨が伸びてきて、茨が触れる直前で目が覚めた。家の庭で倒れてイブに揺さぶれている。
『大丈夫ショウ!?急に倒れて気を失ったから何かと思ったよ…』
「悪い、なんか寝ていたらしい。夢を見てた」
『もう今日は寝たら?たまにはしっかり寝た方が良いよ』
「そうだな、唐突に倒れるのは流石にまずい」
その夜、眠りについたショウが再び夢を見る事はなかった。
(語り部)
「エラーはこの世界の通貨だよ。分かりやすくいうなら1エラー=1円だね。スタンピードの参加報酬というか、討伐報酬でも4人とも100万エラーくらいは貰ってたと思うから実はショウ達結構お金持ってるよね」




