護衛依頼
「お断りします」
その場の空気が凍る音が聞こえた気がした。
「え……と、もう一度言いますね?私の騎士になって貰えませんか?」
「申し訳無いのですがお断りします」
「もう一度言いますね?私の騎士に…」
「ループしないで下さい。何度言われても答えは変わりませんよ」
「なんで!?なんで断るのよ!私王女なのよ!自分で言うのもなんだけど美少女よ!?私の事嫌いなの?!」
若干涙目で迫ってくる。
「嫌いな訳無いじゃないですか。むしろ好きですよ、今の方が」
「にゃ、にゃに言ってるのよ貴方!…いや別に嬉しくなんか……でもこっちの方がいいならそれでも…こっちの方が楽だし…」
また素が出ているコレットを落ち着かせようとしたら更に落ち着きが無くなった。顔を真っ赤にして小さく何かを呟いている。
「それでは、人を待たせているのでこれで失礼しますね」
「あっ、ちょっと…」
『それじゃあね、お姫様〜』
「今何に頭撫でられたの!?」
イブがコレットの頭を撫でると驚いて慌てふためいていた。気を取られている間に試合場に向かう事にした。
「あれ、ショウ、遅かったね。何かあったのかい?」
「ちょっと人に捕まってな。今はライガとロウダスがやってるのか」
試合場ではライガとロウダスが戦っている最中だった。
「こんなんじゃ俺は倒せねーぞ!」
狼の群れに囲まれながらも、狼達を殴り飛ばしていくライガ。
「狼王の…」
巨大な狼の前脚を掲げながら駆けるロウダス。
「それくらい躱せば…なんだ!?」
ライガの足をロウダスの創り出したモグラ数匹が抑えていた。僅かに戸惑うライガに巨大な爪が迫る。
「鋭爪」
ライガの体が切り裂かれ、壁に叩きつけられた。
「ロウダスの勝ちだね」
「いや…」
『そうでもないな』
フローヴァが呟くと、ロウダスがその場に倒れた。
「……痺れて動けない」
爪に切り裂かれる直前に放たれた電撃でロウダスの体も限界だったらしい。
「かぁ〜、引き分けかー」
「惜しかったな…」
結界が解かれ、傷が治る二人。
「次は僕とショウでやろうか。さっきライガとやった後だけど、魔力もある程度は回復したしね」
「全員やった後なら3人まとめてやろうか?俺は魔力もフルだし、いいハンデじゃないか?」
「はっはっはっ!そりゃ舐めすぎだぜ、ショウ!いくらお前でも無理だぜ!」
「僕らが消耗してると言ってもね」
「面白い」
「決まりだな。休み時間もそんなに無いし、早速やろうか!」
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「やっぱあの鎧はずりーよなー」
結果は僅差でショウに軍配が上がった。
「それ以前に連携にも問題があったね」
ライガとレイがお互いの魔法をくらい、戦闘不能になった事が敗因と言える。
「必ずしも数が多い方がいい訳じゃない。相手に誘導されると今回みたいな事も起こるって事だな」
現在、実技の授業で体力作りに運動場をランニングしながら先程の試合の反省をしていた。
『1学年Aクラスのショウ・シュヴァルツ。至急学院長室に来るように。繰り返す、1学年Aクラスのショウ・シュヴァルツ。至急学院長室に来るように』
学院内に魔道具による放送が響きわたった。
「なんだショウ、なんかやったのか?」
「今日の放課後に呼ばれてはいたけど予定が早まったのかな?」
担当の教師に一言伝えてから学院長室に向かう。
「どうぞ」
学院長室の扉をノックすると、中から返事が返ってくる。部屋の中には学院長の他に、見知った人が座っていた。
「やぁ、ショウ君。久しぶり」
「ローウェルさん!スタンピードの時以来ですね」
王国騎士副団長のローウェル、そして
「さっきぶりですね、ショウ・シュヴァルツ君」
「そうですね、コレット様」
先程出くわした王女、コレットだった。
「授業中にすみません、ショウ・シュヴァルツ君。王女様の申し出で急遽予定を早める事になってしまって」
「それは構わないですよ。それで、用件は何でしょう?」
「さっきも伝えましたけど、もう一度言いましょう。私の騎士になって貰えますか?」
「お断りします♪」
満面の笑みで答えると、再び王女様が硬直してしまう。
「だからなんでー!?なんで断るのよーっ!!」
「落ち着いて下さい、姫様。それでショウ君、断るのは何か理由があるのかな?」
「俺は年齢的にも実力的にも騎士になれないからです」
「え?……ああ、そういうことか。勘違いしないで欲しいんだが、今回の依頼はそういう事じゃないんだ」
ローウェルの返答に首をかしげる。
「というと?」
「姫様はこの度、この学院に編入する事になったんだが、学院に通っている間の護衛をしてもらいたくてね。当然報酬も出すよ」
「それなら構いませんよ」
「即決!?ならなんでさっきまで断ってたのよ!!」
「騎士の称号を受け取る訳にはいかないので」
「言葉の綾よ!昔から王族や貴族の護衛は騎士って相場が決まってるのよ!」
「そうなんですか?……なら昼間のあれも護衛依頼だったのか…なら受けても良かったかな」
『それは違うと思うなー』
昼間の出来事を思い出すショウをイブが否定する。
「でも、働きによっては将来私付きの騎士にして上げてもいいわよ!」
「それはお断りしますね」
「なんでよー!?」
(語り部)
「このポンコツ姫、僕は嫌いじゃないよ。それとこの子はショウ達と同い年だけど本来なら王族は学院には通わないそうだ。宮廷魔道士に教わるからね。――ならなんで今回は学院に通っているのかって?……さぁ…?」




