騎士になる気はない
「私の騎士になって下さらないかしら?」
昼休憩、ショウは今、昼食を食べる前に校舎裏に呼び出されていた。以前の、そして昨日の試合を見ての質問らしい。
「大変光栄な話ではありますが、その申し出、断らせて頂きます」
「……何故かしら、理由を聞いても?」
「俺にはまだその資格がありません。貴方の騎士を名乗れる程の力を持っておりません。周りも納得しないでしょうし、俺自身が認められません。ですのでその申し出を受ける訳にはいきません」
「……はぁ、それなら仕方ありませんわね。今回の話は無かったことに致しますわ。………ふられてしまいましたわね」
その女生徒は最後に小さく呟くと立ち去っていった。
「あ〜あ、またふったのか。いいのかよ?今の、伯爵令嬢だろ?いい話だと思うけど」
物陰で見ていたらしいライガに聞かれると、ショウは当たり前だと言わんばかりに答える。
「仕方ないだろ?俺はまだ騎士になれないんだから。実力的にも年齢的にも」
「そういう意味で言った訳じゃないと思うんだよな…」
王国では騎士になるには成人である15歳以上であること、そして剣、槍、弓のいずれかを使える事が王国騎士になる条件である。だが貴族の私兵としての騎士であるなら、成人であり、雇い主が認めれば騎士になる事ができる。
今回の場合はそういう話では無かったのだが。
「俺はまだ成人してないし、実力もまだまだだ。それに、俺は余程の事が無い限り騎士になる気は無いからな」
(ただ告白してきただけなんだろうけど、言い回しが悪かったな。相手は相手でショウが身分の差で身を引いたと思ってんのかもしれねーな、貴族と庶民だから)
以前から何人か告白して来た生徒はいたが、ショウの鈍感さが凄まじく、告白されている事に気づいていなかった。
「ショウは戦う事しか頭に無いからな〜」
「何するんだよイブ…」
イブに頬を突かれる。
「儂なら即OKするんじゃがのぅ」
「ジジイは脳内ピンクだからな」
「ピンクと肌色の2色じゃ!」
「変わらねえよ意味合いはよ!」
「それより早く食堂に行こう。もうレイ達は行ってるんだろ?というかライガも先に行ってて良かったんだが」
いつも通り言い争う2人を宥めて食堂へ向かう最中、大量の紙が頭上からばら撒かれた。風に飛ばされそうになる紙達を浮遊魔法で全て手元に誘導し、揃えてから上の階の窓まで飛んでいくと、窓から外を泣きそうな目で見ている女の子がいた。手には飛ばされた紙と同じ物を持っている。
「多分全部取れたと思うけど、枚数は合ってる?」
「あっ、えっと?……はい、大丈夫です、全部あります」
「風の悪戯には気をつけて。次は君が連れて行かれちゃうかもしれないからさ」
「はい……気をつけます……」
微笑みながら言うと少し呆けたような返事が返ってきた。顔が少し赤かったような気がしたが気のせいだと思う。高速で下に降りるとライガが呆れた顔をしている。
「こういうのを繰り返すから犠牲者が増えるんだよなぁ」
「ショウだからね」
上の方からはショウを見失った女生徒の「風の精が〜」と言う声が小さく聞こえてきた。
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「明日にはまた噂になっていそうだね、ショウにふられた女の子の事」
「こいつにどう伝えたって伝わらない気がするぜ」
「なんの事だ?」
パンをかじりながら話すライガ達の会話を理解出来ていないショウ。
「ショウには当分理解出来ないだろう話をしてんだ」
「気にする必要はないさ。それより僕達は魔法の練習をしないと。油断しているとアッシュに抜かれかねないからね」
休み時間も練習するつもりらしいレイ達だった。ライガも早々に食べ終えてついていく。
「皆食べるの速いな…」
『ショウは食べる量が多いんだよ』
イブに量を指摘されたが、山盛りで持って来ていたパスタはもう殆ど残っていなかった。
『よく入るね〜』
『魔法を使うとお腹が空くんだよ』
殆ど常に空間収納内で魔法を撃ち続けているショウの消費エネルギー量は計り知れない。その分食べる量も増える。
「ショウ・シュヴァルツ君、また会ったね!」
「ん?貴方は…」
目の前に立っていたのは入学試験の時の受付のお姉さんだった。
告白例
「戦う姿に惚れました!好きです、付き合って下さい!」
「俺も好きだよ、戦うの。やるなら闘技場に行こうか」
例2
「ウチのパートナーになって下さい!」
「ごめん、実技の授業ライガと組むことになってるから…明日ならいいよ?」
例3
「ヤらないか?」
「いいぞ、やろうか(抜刀)」
闘技場にてズタズタにされた相手は恍惚の笑みを浮かべ倒れていた。
(語り部)
「戦う事しか頭に無いのかな?」




