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STORY ~白銀の物語~  作者: 黒羽カウンター
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vsキメラ3

 キメラ、それは複数の生物を合成して創られた新生物。多くの力を束ねて形造られた怪物が暴威を振るう姿は、その場の人々の戦意を容易く奪っていった。だが、己より遥かに弱い筈の存在が戦っているのに動けずにいるのは冒険者達の、王国騎士達のプライドが許さなかった。


「お、おい!俺達も加勢するぞ!」

「え、ええ」


 足を踏み出そうとする者は確かにいた。


「ガアアァァァァァァァァァァァッッ!!!」


 キメラの咆哮がその足を踏み止まらせる。咆哮が引き出す恐怖はそれまでとは比べ物にならない。本能があの怪物との戦闘を拒み、指一本動かすことすらままならない。その咆哮は弱者の乱入を許さず、強者のみを選別する。


(体が…動かせねぇ)

(あんな子供ですら戦っているのに…)

(あれと戦って生きて帰れる気がしない)


 その場の者は皆、戦いの行く末を見届ける他なかった。

____________________


(この少年は確かに強い。だがそれでも実力はBランク冒険者程、よくこの怪物相手に戦い続けていられると称賛すべきだ。あの咆哮に怯みもしないその精神力、最早精神力が強いというより一部の感情が欠落しているのかもしれない)


 触手を切り払い、飛んでくる石礫を躱しながら共闘する少年を観察する。


(……そんな場合ではないな。今やこのモンスターの戦力はSランク相当、先程より倒すのが難しくなった。どうするか…)


 キメラに再び集中するローウェル。決め手に欠け、消耗し続ける戦闘の中、打開策を模索する。

____________________


(硬くなったな…それに速い。何もかもがパワーアップしてる)


 蛇の首を斬り落とすも、脇腹から生えた腕が伸びてきて殴り飛ばされる。


『腕を触手で伸ばしてるね。腕の硬度は鋼以上、斬るのも一苦労だね』


 キメラの頭の角に黒い光が集まり、レーザーを放つ。レーザーに向けて、複製兵装にて創り出した剣を飛ばす。


(ここに来る前に聞いた通りなら…)


 王都に向けて走りながら兵装複製イマジナリーウェポンで造った剣についてイブに聞いていた。


「あの魔法は元になった武装の能力もコピーする。完全に再現できるかは使用者次第、完コピできない物も多くあるけどね。それでショウが創り出したあの剣のことだけど、オリジナルと違って能力は劣化して魔力で生み出した物を無効化するくらいしかできないみたいだし、それも限度があるんだろうけど、便利なんじゃない?魔法無効化の剣がいくらでも作れるようになったんだから」


 放たれたレーザーを創り出された剣が切り裂きながら突き進み、キメラの額に突き刺さる。


(出来なきゃ死ぬのが戦場…ロイドさんが言っていたな)


 今まで瞬間的に出すことしか出来なかった出力の身体強化も継続して行えるようになっていた。だがそれでも速度も力もキメラの方が上であり、凌ぐのが精一杯だった。

 魔力や気を消耗し続けるショウ達が不利だったが、戦況は拮抗していた。だが、ほんの小さな石の欠片でも、天秤は傾く。キメラの蛇が吐いた毒を、魔剣で巻き起こした風で散らす。だが、飛び散った僅かな毒がショウの左目に付着する。


(なっ…!見え…)


 見えなくなって出来た死角から伸びてきた拳が直撃する。


「ショウ君!!」


 宙に浮いていた魔剣達は尚も飛び続け、キメラを攻撃し続ける。それがショウの生存を教えてくれた。


(咄嗟に魔力障壁に魔力を回したけど、キツいか…)


 毒が体に回り、体の力が抜けていく。ショウの意識は次第に遠のいていった。


『……ここは?』


 気づけば目の前は真っ白の何も無い空間だった。


『ここはショウの心の中だよ』

『イブ!』


 振り向くと後ろにはイブがふわふわと浮いていた。


『俺の心の中…ここが?』

『心の中といっても私が普段いる隔離された空間だけどね』

『そうか…でもなんでこんなところに?今は戦ってる最中だったよな、まだ死んでないなら早く戻してくれないか?』

『今戻ってもどうせ死んじゃうよ。あれは今のショウには手に負えない。死んでないと言っても死にかけてるのは事実だからね。』

『それでも…俺は戦いたいんだよ…何も出来ないのは嫌なんだ…』


 下を向くショウの周りをくるくるとイブが飛び回る。


『そんなショウにどうにかする方法を教えてあげてもいいよ』

『本当か!』

『だけどこれは失敗すれば最悪の事態になる。それでもやる?』


 いつになく真剣な顔でイブが問いかける。そんなイブにショウは迷いなく答えた。


『やるよ』

『……まあ即答する事はわかってたよ。失敗より成功した時の事を考える派だものね、ショウは』

『できる事を考え、できる限りの事をする。自分の持つ物でどうにもできないなら周りの物を何でも使うし、いくらでも人を頼る。それが変幻流だろ?』

『……そうだね、そう教えたのは私だったね』


(それでも本当はやりたくはないんだけど…力には責任と危険が伴うものだから…)


『やらなきゃ瀕死の状態で戻るだけだし、仕方ないか。それじゃあこれを』


 イブが手渡してきたのは銀色の鍵だった。イブが宙に手を翳すと何もなかった所に鎖で縛られ、錠前で閉ざされた3m程の門が現れた。


『その門を開けば更なる力を得て目が覚める』

『見ればわかる…強大な力を感じる…』

『目が覚めたとき、意志を強く持って、溢れる力を抑え込んで。そうすればきっと大丈夫、それであの怪物をぶっ飛ばしちゃえ!』

『わかった。…それじゃあ行ってくる』


 錠に鍵を差し込み、鎖を解いて門を開くと空間を埋め尽くす程の光が解き放たれる。光が収まる頃にはショウの姿は無くなっていた。


『器から中身が漏れない為には、それにあった栓がいる。栓は用意した、大丈夫、きっと大丈夫…』


 イブは自身に言い聞かせるように呟いた。

キメラ試作型

Aランクモンスター

実験により複数の生物の特徴を持って生まれたモンスター。推定ランクはAだが、他の生物を捕食することで更に成長する。

強化キメラ

Sランクモンスター

キメラ試作型が成長した姿。体表を岩で覆われ、新たに二本の腕が生え、複数の属性魔法が使えるようになった。全体のステータスの上昇に加え、飛行能力も加わった。

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