スキンヘッドの男
「「うぇっ…!」」
人が斬り殺される所を目の当たりにして気持ち悪くなっているライガとレイをよそに、ショウの目はロイドの纏っているオーラのようなものに向いていた。
「あれは何だ…?」
「あれは気って言うんだよ」
ふわふわ浮いてるイブが実際に気を纏いながら答える。
「生き物には魔力の他に気っていう生体エネルギーかある。これを身に纏えば硬い石を殴って壊す事もできるし、身を守る鎧にもなる。使うことができる人は限られるけどね」
「結構便利でな、気をうまく扱えれば傷の治りを早めたり空を走る事も出来る。炎を掴んで腕に纏ってた奴もいたな」
ロイドが何もない空中を蹴って空を数歩歩いてみせる。
「ってそんな場合じゃねーんだ。おいそこの白衣、この装置を止めろ。それとここで何をしようとしてたか言え。さもなくば死なない程度に切り刻むぞ!」
「ヒィィィッ!!」
白衣の男が装置に駆け寄り操作し始める。ロイドが近づこうとすると、死角からロイドに向かって何かが飛んでくる。飛んできた物体を掴むと、手には金属製の長い針が握られていた。
「やるならもう少し上手くやるんだな」
針が飛んできた方向を見ると、岩陰からスキンヘッドの男が出てくる。
「流石にこれだけじゃ殺せねーか。ま、そうだよなぁ」
「お前らはどこの連中で何が目的か、早いとこ吐きやがれ!」
「剣聖様に名乗る程の大層な名前はねーし、目的を教える程親切でもないんだよなぁ」
ロイドの振り下ろした刀をナイフで受けると、もう片方の手に持ったナイフで脇腹を狙う。
「っと…桜花!」
後ろに下がってナイフを躱し、斬撃を放つ。相手の目の前に突如金属板が現れたが、金属板ごと男を切り裂いた。
(手応えはあったが、血が流れない…。下に鋼鉄の鎧でも着込んでんのかよ)
「何だ、まだ魔力残ってるんじゃないか」
「俺の魔力を吸い尽くすには時間が足りねえよ」
「どんな魔力量してんだかなぁ」
ロイドとスキンヘッドの男は互角に斬り合っていた。男の方は余裕がありそうだが、ロイドの方は急激な魔力低下のせいで動きが悪い。
「魔力を吸われてるのがやっぱりキツそうだな…」
「特定のアイテムを持っていれば問題ないって言ってたな、この男も持ってる筈…」
ロイドに斬られた男の服を探ると胸ポケットに魔力の吸引を防ぐ物と思われる装置が入っていた。だが…
「真っ二つだ、さっきの一撃で一緒に斬っちゃったのか」
「ならあの機械を止めるしかないのか」
スキンヘッドの男が距離を取り、懐から金属の球を取り出す。
「ほらよっ!」
高速で投げられた球が無数の釘に分裂しロイドに襲いかかる。
「効くか!」
「効かなくていいさ、時間さえ稼げればなぁ」
魔力吸引装置の出力が上がり、ロイドの魔力を急激に吸い上げる。
「くっ…」
「あの白衣が…早く機械を止めないと!」
「あの機械の周りにはさっきのより頑丈な結界が張ってあるみたいだね」
イブが言うには先程結界を切り裂いた攻撃数回くらいは耐えられる程らしい。
「魔力が万全でもあのレベルの一撃を何回もなんて出来ないぞ!?」
今尚魔力を吸われ続け、魔力が枯渇して体が怠い。ショウ以外の三人も同様だった。
「ショウ、兵装複製を使って」
「え?でもあれで結界を壊せるとは…」
「いいから!」
イブに言われ、回復しては吸われる魔力を、吸われる前に魔法に回す。
「魔力障壁はすぐには消えなかった。だから魔力で物質を固定すれば一瞬は存在できる。」
「それは理解できる。だけど今まで一度も上手くできてないんだよな」
「ショウはあの魔剣達を思い浮かべて複製しようとしていたよね。それはやめて何も思い浮かべず発動してみて」
「……何か考えがあるんだろうけど、そもそも発動しないんじゃ…」
何も思い浮かべずに発動しようとすると、頭には見知らぬ剣の姿が浮かび上がる。気づけば手にはたった今思い浮かべた剣と同じ物が握られていた。
「これって…」
「直ぐに結界を!」
「…!ハァッ!」
イブの声で直ぐに結界に剣を振り下ろすとまるで結界などないかのように手応えなく結界が切り裂かれた。
「な!あの結界がこんな簡単に!?」
「おい、この機械を止めろ!!」
「止めるわけ無いだろ!」
「任せて」
イブが機械を操作して機能を停止させる。
「何故機械が勝手に!?」
「もう動かさせないぞ」
魔力が戻り、空間収納から取り出した刀を白衣の男に向ける。
「でかした、魔力を吸われるのは気分最悪だったんだ!」
魔力の吸引が止まり、ロイドの動きが正常に戻る。
「うおっ…」
「桜花・乱れ咲き」
幾つもの斬撃が男に放たれ、花弁の粒子が宙を舞う。男の体を斬り刻み、バラバラにしたと思われたが、桜吹雪の中からは全身ズタズタに斬られてはいたものの、五体満足の男の姿があった。
「その体、サイボーグか」
男の体は首から下は全て機械仕掛けだった。
「通りで。機械の体なら斬られても無事だわな」
「世界最硬度を誇るアダマンタイトで出来た体を良くもここまで斬れたもんだ。あちこち不具合が出て仕方ねえんだよなぁ」
「装置も止まった。もう動かす事も出来ねーし、お前じゃ俺には勝てねえ。何をしようとしてたか喋って貰おうか」
「別にいいぜ。ここでやる事はもう終わったからなぁ」
「何…?」
「あくまでここではこの装置のテストをしていただけだが、吸引した魔力を放置してもいずれは爆発する、だから常に使う必要があった。近頃近くのダンジョンでも異変があったよなぁ?」
ロイドが他のダンジョンのモンスターが増えたり、突然変異種が現れたと言っていたのを思い出す。
「狼王森林のモンスターが強化されてたのも多分これが原因だよ。試練の影響で強化されてるのかと思ってたけど…」
イブは狼王を操っていた奴の仕業だと思っていたが、原因はここから魔力が送られていたかららしい。
「近くのダンジョンに魔力を送り、ダンジョンにどんな変化が起こるか見るいい実験にもなったから都合が良かったんだが…ダンジョンに異変があったとなればお前みたいに実力者が調査しにくるのは当然だよなぁ。1番の目的はお前らみたいな奴らの目を引きつける事なんだよなぁ」
「……陽動か!」
「装置に貯めてた魔力は全て送ったし、今頃王都はどうなってるだろうなぁ…!」
スキンヘッドの男は愉快そうに不気味な笑みを浮かべていた。
(語り部)
「気を上手く使いこなせば空を走る事だってできる、凄いよね…え?このショウがつくった剣は何なのかって?……さぁ?僕にもわからない事はあるよ。ほんとに知らないよ?何でも答えられるとは限らないんだよ」




