魔力吸引
炭鉱内は横道が多く、まるで迷路のようであった。上に空いている穴をライガが見上げる。
「何で上にも穴が空いてんだ?」
「ここにはゴーレムの他にロックアントってモンスターがいてな、そいつらが穴を掘りまくるから元々あった坑道以外にも道ができちまうんだ。時々調査隊が入って地図を更新しないと道が分からなくなっちまう」
事実、先程から地図には無い道がいくつも存在している。地図を持っていても遭難する冒険者が後を絶たないダンジョンの1つだ。
中に入ってから1時間程経過した頃には誰しもが違和感を感じていた。ロウダスが疑問を口にする。
「さっきから人もモンスターも出てこないんだが?」
「人がいないのは当然だ、Aランクの調査隊が死んで立ち入り禁止になってる。人は俺達以外いないだろう。問題はモンスターまでいない事だ」
入口付近ではロックゴーレムと何回か出くわした。だが奥に進むと一体も見かけなくなった。更に異変がもう1つ。
「ここは魔力が少ないのぅ。本当にダンジョン内なのか疑わしい程じゃ」
ダンジョンは本来魔力の溜まり場であり、高濃度の魔力から生まれるモンスターがダンジョン内を闊歩している。それがこの世界の常識だった。ならば現状は正に異常である。
「まるでダンジョンじゃなくなったみたいだね。外の方が魔力が多そうだ」
「ああ。だが入口の近くにはゴーレムもいたし、ここがダンジョンなのは確かだ。問題は何があったかだな。調査隊がやられてるのは事実、何かが起きてる」
「でもおかしいよな、スタンピードはモンスターが増え過ぎて起きるはずだろ。ここはむしろ逆、全然いないし魔力も無くて新しく出てくる気配もない。こことスタンピードは関係ないのか?」
「どうだかな…」
話しながら進んでいく内に開けた場所に出た。主な採掘場だった場所の1つであり、ここから道が幾つにも別れている。
「どの道行けば先に進めるんだこれ?」
「地図見ても新しく出来てる奴もあるからか、わからねえな…」
イブが壁の近くを飛んでいると皆を呼び集めた。
「ここ、先に道があるよ。結界で隠されてるけどね」
「本当か!ならこの先に秘密があるんじゃねえか?」
「なら話は早い。とっとと進むぞ」
「開け方わかるんですか?」
「正規の開け方が俺にわかるわけねえだろ。だから…こうするんだよっ!」
鞘に納めていた刀を抜くと同時に結界が両断された。
「これで進めるだろ」
「この結界Sランクモンスターの攻撃にも耐えられるくらいには頑丈そうだったんだけどね…」
道はロックアントが掘った道のようだった。それ程長く続いている訳ではなく、少し歩くと光が見えた。再び開けた場所に出ると、そこには巨大な機械が置いてあった。
「何の機械だこれ…?」
「おいおい、侵入者とか勘弁してくれよ…ちゃんと結界は作動させたのか?」
「作動させたっつーの、俺は悪くねーし。こいつらがどうやって入ったか知らねーけど、殺せば解決っしょ」
声のする方を見ると白衣の男と汚れた布を纏った悪人顔の男が立っていた。
「お前は前も作動させ忘れた事があるからな、気を付けてもらいたいものだ」
「あの冒険者共はちゃんと殺しただろ!」
「冒険者が帰ってこなかったからまた調査しに来たんだろう。殺せば何でも解決するわけではないのだ」
「うるせーな…とりあえず殺してからにするわ」
「こいつらが調査隊を殺した奴らで間違いなさそうだな」
悪人顔がこちらを見る。臨戦態勢に入るとある違和感に気付いた。
「魔力障壁が…張れない?」
「身体強化も解除されてるぞ!」
「体から魔力が抜けてるのか…」
「その通り!そこにある機械はこの辺りの魔力を吸収し続ける装置、魔力吸引だ!特定のアイテムを持ってないと近くの人間の魔力も奪っちまうんだよ!」
「この装置があれば魔道士など恐れる必要など……おいお前、まさかロイド・グレイサーか!?」
「そうだが?」
「おい待て!そいつには手を出すな!」
「何言ってやがる?魔道士がいくら集まろうと魔力が無いなら余裕だろ!」
悪人顔の男が身体強化をしながら距離を詰める。体を魔法で鋼鉄化させたらしい男が拳を振るおうとすると、その体が斜めにずり落ちた。
「おぇ…?な…んで…」
「その男が魔力が無くなったくらいでどうにかなる訳ないだろう」
ロイドの体と刀は白く透明なオーラの様な物を纏っていた。
ロックゴーレム
C⁺ランクモンスター
石で出来たゴーレム。打撃と斬撃に強い。生半可な刃物では刃こぼれするだけでダメージが通らない。
ロックアント
Cランクモンスター
体を石の外殻で覆った蟻型モンスター。石を主食としていて、群れで穴を掘り続けて洞窟が崩落した事がある。




