実技授業
「無事編入できて良かったな!また事務の人が泣いてそうだけど」
制服を着たロウダスにライガが笑いながら言う。
編入試験の際、以前の試験で壊された機械人形達を新型モデルに買い替えたそうだ。以前より攻撃力、速度、耐久力が上がり、数値を調整することで試験内容に合わせた運用ができ、近くの機械人形同士で電波による情報共有を行い集団戦を想定した試験も行えるようになったらしい。
事務職員がドヤ顔であれこれ説明していたが、始まって早々に分身に捕らえられ、狼王の脚で叩き潰したら粉々に砕け散った。事務職員の心も砕けちったようで、完全な放心状態だった。
「あの後足下の機械人形の破片拾って『これは何の欠片ですか?これは機械人形の残骸です。』とか満面の笑みで言い始めた時は流石に気の毒だったな」
「申し訳ないとは思う。本気でやっても壊れないと言うから…」
「どうせ買うなら高級モデルの最新型を買えばいいと思うんだけどね。あれならそうそう壊れないよ」
「それ、あれの10倍する奴だろ。それまで壊れたらもうあの人の胃と心が持たねーぞ」
久しぶりに登校したショウ達にロウダスが加わり、周りのざわめきは以前より更に増した。
「なんで編入生もイケメンなんだよ!しかもあそこで集まってると顔面偏差値高すぎて近寄れねえよ!」
「うっ!」
「どうしたの!?」
「ひ、久しぶりのショウ君で胃が受けつけないんだけど。ちょっと誰か白湯持ってない?」
「数日ぶりに起きた病人か?」
「白湯飲んでも治らないと思うよそれ」
「落ち着け?多分悪いのは胃じゃなくて頭だよ?」
「空気のイケメン成分がまた増した……今日も空気がうまい」
「何気持ち悪いこと言ってるの?」
「あんたは美味しくないと言えるのかしら?」
「美味しいに決まっとるじゃろがい!」
「「イエ~イ!!今日から毎日空気が美味しい!」」
「うちの女子ってかなりやばいかも……」
「ちゃんとした子もいるわよ!」
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「今日も魔力操作の授業始めるぞ」
訓練場に集まったショウ達は実技の授業を受けていた。
「魔力操作は魔術の基礎だ。魔力を上手く流せるようになれば魔法の発動速度、魔力消費、魔法の効果も上がる。それに身体強化や魔力障壁は魔力操作をうまく出来るようにならなきゃ話にならん。もうすでに出来る奴らもいるが…」
教師がショウ達の方を見る。
「どちらにしろやって損はない。身体強化をより極めれば治癒力も上がって生存率もあがるし、上位の冒険者になるには魔力障壁を極めなければなかなか難しいからな。ということでちゃっちゃとやっていこう」
魔力操作は体の中の魔力を動かし、循環させる。普段魔法を使っているのだから魔力を操るなんて簡単だと言う者も多いが、それは違う。
「固有魔法はある程度無意識に使い方を把握してしまっている。だから発動するだけの魔力を込め、発動する手順を行えば発動できる。お前達が誰かに教わらなくてもなんとなく魔法を使えてしまっているのがその証明だ。だからいざ魔法を使うわけじゃなく、魔力だけを動かそうとすると意外と難しい」
教師は自身の魔力をゆっくりと循環させていく。その速度を段々と速めていき、魔力障壁を張る。
「慣れないうちは少量をゆっくりと動かせるようになることが目標だな。そこから量を増やし、速めていく。そうじゃないと魔力暴走を起こす事もある。ごく稀だがな」
生徒同士の距離を取って魔力を動かし始める。
『ショウからしたら常にやってる事だからね、すごく今更なんだけど』
『確かにそうだけど、常にやらないといけないくらい、重要なものだろ』
「おーい、そこの4人!ちょっとこっち来い」
「4人って俺達の事だよな?」
「そうだろうな」
教師へと駆け寄っていく。
「なんですか、レジル先生?」
「お前らは別内容。もう十分出来てるから」
「じゃあ何やるんです?」
「鬼ごっこ」
「「「「鬼ごっこ?」」」」
「そ、鬼ごっこ。時間は授業が終わるまで、魔法は無しで身体強化のみOK。4人の内の誰かが俺に触れた時点で終了だ。残った時間は好きにしていい」
「それだけでいいのか?」
「おう。範囲はこの訓練場の中だけな。それじゃあ今から始めるぞ。あとそれだけって言うけど、すごく大変だからな?」
それだけ言うとレジルは目の前から姿を消した。
「なっ!?」
その姿は数十m先の観客席にあった。
「もう始まってるぞ?頑張れよー」
(速い…一足飛びで壁まで飛んで観客席まで飛び上がった。あそこまで15mは高さがあると思うけど)
「よし、とっとと捕まえるぞ!」
「おう!」
「正直気乗りしないんだけどね」
「獲物を追うのは得意だ」
それからの5人の動きを目で追える者はこの場にはいなかった。
「ショウ君達の姿が見えない…!」
「なぜ私は目を身体強化出来ないのか……」
「その為のこの授業でしょ」
「それはそう」
「そうか…?」
レジル先生
実技担当教師。魔力操作に長け、通常の身体能力も高い。
(語り部)
「彼、実は学院長がスカウトしてきたらしいよ。元は冒険者だそうだ。命を危険に晒さなくて済むからだって。危険が無いわけ無いだろうに……」




