実技試験
実技試験の中でも攻撃魔法は人数が多く、会場を分けて行われている。試験会場は怪我などを負ってもいいように結界が張られており、結界の外に出れば死んだとしても生き返るようになっている。魔法を暴発させた時のための安全装置だ。
「攻撃魔法の試験内容はこの機械人形がこの試験会場を走り回る。それに向かって魔法を放ってくれ。持ち時間は一人3分、魔力が切れても終了だ。オートマタはそこそこ素早いから魔法が当たらなくてもそれはそれで評価するから安心してくれ。それに頑丈だからな、お前達の魔法ではそうそう壊れはしないからそこも気にしなくていいぞ。何か質問はあるか?」
「もし壊しちまった時は予備はあんのか?無いと困ることになるぞ」
燃えるような赤髪の少年が不敵に笑いながら質問した。
「随分な自信だな……まぁもし壊れても予備はある。壊せる物なら壊してみるといい。(これ結構高いからあんま壊れてほしくはないがな)」
「ならいいぜ。これで思い切り魔法をぶち込める」
それから程なくして試験が始まったがまだ学院に入る前の者達では動く的に上手く当てるのは至難の業。大半は当てることが出来ず、当たったとしても傷1つ付きはしなかった。
『それでショウ、この試験どうするの?この試験内容じゃ大したこと出来なそうだけど』
『これくらいならどうとでもなるよ』
「次の奴始めるぞー」
「受験番号0408、ショウ・シュヴァルツです」
「それじゃ今から3分な。では、始めっ!」
「……妖精の舞踏」
開始の合図と共に会場には風が流れ込んでいた。動こうとしていたオートマタを竜巻が呑み込み、上空へと投げ飛ばして地面へと叩きつけた。
「これ以上やると使えなくなるかもしれないのでここまででいいですよ。」
「あ、ああ。見事な魔法だった。では次の奴準備しろよ」
(今のは風魔法か?あのレベルは上級生レベルだったぞ。知り合いに魔道士でもいて教わっていたのか?どちらにしろ期待の新入生になるだろうな。)
「受験番号0409アッシュ・ファーレンだ、とっとと始めようぜ!」
「おい、次はあの魔道士の名家、ファーレン侯爵家のアッシュ様だぞ!」
「数々の宮廷魔道士を輩出しているっていうあの……」
「噂じゃファーレン家の中でも天才って呼ばれてるとか!こりゃ見ものだな!」
「早いうちにお近づきになっておいた方が良さそうですかね……」
(あれはさっきの赤髪の子…かなりの魔力を感じるな。)
「では、始めっ!」
「前の奴ので多少ボロくなっちまった見てーだからよ、替えやすくスクラップにしてやるよ!」
手を上に翳し、魔力を込めていく。掌の先には遠く離れていても目視できるほどの巨大な炎の球体が出来上がっていた。
「吹き飛びな!!エクスプロードフレア!!!」
ドゴオオオォォォォッッッ!!!
轟音が鳴り響き、音が止んで試験会場を見渡すとオートマタの残骸が落ちていた。魔法を躱そうと着弾点から距離をとっていたにも関わらず壊れてしまったらしい。
「まじかよ……あれを壊しちまった」
「魔力はもうねえがな。俺は言ったことはやる男だ」
周りからは歓声と羨望の眼差しが向けられていた。
『あれは確かに才能がずば抜けてるね。魔力も高いし、伸び代もある。今後の本人の頑張り次第でどこまでも伸びるかもね』
『それは楽しみだな!』
次の魔力測定へと向かう中、試験が続く会場で一人だけ先程の爆炎魔法に見向きもしなかった少年がいた。
『あれがそうなんだよな?』
『イブがついていたのじゃから間違いないじゃろう。魔力をしっかりコントロールして悟られないようにしておるがなかなかの魔力量じゃな。お主より高いじゃろうよ』
『まじかよ、そりゃ楽しみだな!』
少年はプレゼントの箱を開ける前の子供のような顔をしながら自分の試験に臨んだ。
後日、今年の試験ではオートマタが複数体壊されたと聞いて新入生に期待がかかる中、事務職員は機械人形の補充費用に胃を痛めていた。
来年からはより耐久性のあるオートマタにする事になったみたいです。その分値段が張るのでまた胃を痛めるわけですが……