夜は更ける
「凄い数の死体だな」
戻ってきたショウ達の前に広がるのは切り刻まれたモンスター達の山と血の海だった。
「うーん…地獄絵図」
「おっ、戻ったか。やるじゃねーかお前ら、勝てねえかと思ってたぞ」
にこやかにロイドが小屋から出てくる。
「最後はかなり厳しかったですけどね。こっちも無事で何よりです」
「こんだけモンスター倒したら魔石とり放題だな」
魔石とはモンスターの体の中にある結晶である。魔石は冒険者の収入源の1つであり、生活においてかかせない物でもある。魔力を持たない者が魔道具を使う為に、魔力を持つ者でも魔力を節約、又は魔力切れの際に使われる。
「おうよ。これだけで当分生活に困らないぞ」
ロイドの持ってる袋には大小様々な魔石が入っていた。
「それより風呂でも入ってきたらどうだ?さっきフットが沸かしてたぞ」
「そりゃありがてえ。もうくたくただからな」
「僕も汚れを落としたい」
「風呂ってどこだ?」
「こっちだ」
4人が裏庭の方へと歩いていく。だがイブだけはその場に残っていた。
「――君なら呪われた狼も解呪法無視して殺せただろうし、外の結界を斬っていつでも出れただろうに」
「手を出さなくてもどうにか出来たんだからいいだろ。お前らの思惑はともかく、ショウ達が強くならなきゃならねえのは事実。あいつらが残したものを壊す訳にはいかねえしな。――あいつらをどうしようと勝手だけどよ、死なせたら俺がお前らを殺しに行くぞ」
今、仮にこの場に他の人間がいたならば、殺気だけで死者が出てもおかしくはない。少なくとも大勢の人間が意識を手放していただろう。目の前の妖精にはなんら影響はないのだが。
「それはショウ達次第だけど…死なない為に強くなろうって話だし。まぁ大丈夫だよ、ショウは私が絶対に死なせないから」
満面の笑みでそう言い張るイブを見て、ため息と共に殺気が散る。
「まぁいいさ。信じとくぜ、妖精さんよ。それ言う為に残ったのか?」
「いや、結界張り直さないとでしょ。血の臭いでまた集まってきちゃうし」
「それもそうか」
結界を張り直し、死体を結界の外へと運び出していく。
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ノックと共にドア越しに声をかける。
「父、起きてるか?」
もう間もなく日付が変わろうという時刻。フットは自室で1冊のノートを読み返していた。
「ああ、起きているよ。どうかしたかい?」
読んでいたノートを閉じ、ロウダスに向き合う。
「……最後に母を撃った銃弾、あれは父の物だな。」
「他に撃った人がいないならそうだろうね。当たってよかった。」
「すまない。……父に母を撃たせたくはなかった」
「親が子を守るのは当然だ。私の方こそ、彼女と戦える程の力がなくて申し訳ないよ」
フットの顔はそれ以上気にやんでほしくなさそうだった。
「……ありがとう、おかげで助かった」
「うん、どういたしまして。やはりこういう時はすまないよりありがとうの方が気分がいいね」
「そういうものか」
「そういうものだよ」
少しの間の沈黙。時計の針の音が無ければ時が止まったかのように感じただろう。
「もう遅い。早く休んだ方がいいだろう。ロウダスも疲れただろう?」
「そうだな。ではな、父よ」
「ああ、おやすみ」
ロウダスが部屋を出ていく。扉の向こうからは誰かのいびき声が聞こえてくる。ショウ達とロイドはリビングで寝ている。戦闘の疲れのせいかぐっすりだ。
「不甲斐ない父親だけど、ロウダスはいい子に育ってくれている。ロウダスの成長した姿を君にも見せてあげたかったよ…ルウ」
交換日記と書かれたノートを机に仕舞い、灯りを消してベットへと向かった。
(語り部)
「モンスターの魔石は冒険者の稼ぎの1つだね。モンスターのランクが高い程より良い魔石がとれる傾向にある。今回とれた魔石だけでも数ヶ月遊んでいられるだけの稼ぎになったんじゃないかな」




