説得
「俺は赤ん坊の時にここに捨てられていたらしい」
「そこを狼王に拾われたのか」
「母は良く人間の話をしていた。俺は母の話でしか人間を知らなかったからきっと人間は良い物だと思っていた。だがこの森林に入る者は冒険者ばかりだからな、恐ろしい物に見えた。そしてあの日、母は冒険者に襲われ、死んだ。……父に預けられた俺は最初は人間を恨み、憎んでいたが、俺が熱で倒れた時、森中を駆け回って薬をつくり、助けてくれた父もまた、人間だった。それ以来、人間の全てを憎むのは止めたんだ」
「……ロウダスって意外と喋るんだな」
「聞いた感想がそれか?……お前は何故か話しやすかった。普段はこんなに話すことは無い。本当は人間じゃないんじゃないか?」
「俺は人間だぞ?」
沈黙が支配し、鳥達の鳴き声ばかり聞こえてくる。
ショウが立ち上がると鳥達が飛び去って行く。
「ちょっとさ……狼王倒してくる」
「急に何を言ってるんだお前は!?」
「倒さないと出られないんだから誰かが倒さないとだろう?」
「一人で行く必要は無いだろう!他の仲間を連れていけばいい!」
「そうだな、皆でやればいい。ならさ、なんでお前は一人で戦いに行くつもりだったんだ?」
「……!」
「母親に俺達を傷つけさせたくない。だがあのまま放置も出来ない。だから自分一人で倒しに行こうとしてたんだろう。でもロウダス一人じゃまず勝てないぞ」
「……勝算はある」
「でも死ぬ気だよな。良くて引き分けに出来るって所か」
「よくわかるな。そんなにわかりやすいとは思わなかった」
「死にたそうな目してるからな。髪で隠せるようなもんじゃないぞ」
「──母が冒険者と戦っていた時、冒険者の魔法が俺の方へ飛んできた。それを母が庇ってから、冒険者は俺を狙うようになった。相手の攻撃を受け続けて母は血塗れだった。なんとか冒険者を倒した時にはもう手遅れだった。俺を庇いさえしなければきっと無事だった!俺の存在が!母を殺した……俺は自分の存在が許せない。俺みたいな足手まといがいなければと母もそう思った筈だ。母になら殺されてもいい」
「そっか……」
ショウは無言でロウダスに近づき、ロウダスの顔面を殴り飛ばした。
「な、何を…」
「思うわけ無いだろ!自分の体で守って、死にそうな体でフットさんの所までお前を連れていった母親が、死に際にお前を恨むわけ無い!どれだけ卑屈に育ってんだ馬鹿!」
ロウダスは殴られた頬を押さえながら呆然としていた。
「生きて欲しいから死に物狂いでフットさんの所まで連れて行ったんだろ。そんな母親にお前を殺させるのか?そんなの駄目だろ。……ロウダス、俺に仲間と戦えばいいって言ったよな。だったら、お前だって周りを頼って良いんだよ」
屈んで手を差し出す。
「周りを頼れ。頼ってでも生きろ。生きている事を誇りに思え。狼王が守りぬいた命なんだから」
「──頼る相手なんていないと思ってた」
差し出された手を取って立ち上がる。
「せめて父親は頼っても良かっただろ」
「父に母を撃てなんて言えるわけないだろう」
「それもそうか、まあ俺達の事は存分に頼れ。お前が思っているよりは俺達は強いからさ。最近負けてばかりだけど」
「お前達の事は鳥達から聞いた。俺と同じくらい強いそうだな。頼りにさせてもらう」
「だそうだ、お前達にも頑張ってもらうぞ」
下を覗き込むとライガとレイが座り込んでいた。
「バレてたか」
「出てきたなら上がってくればよかったのに」
「盗み聞きは美しい行動とは言えないけれど、割って入るほど無粋でもないからね、僕達」
「もうすぐ日もくれるし、戦うのは明日だな」
(語り部)
「ロウダスは森育ちで動物の言葉がわかるそうだよ。オネイロスと話してても動物と話していると誤魔化せるからいいよね。他なんか変な目で見られるのに」




