四人目
「あれについてなにか知ってんのか、フットさんよ」
「いえ、私も詳しい事は何も。しかし私よりは詳しい事情を知る者がいますよ」
フットの視線の先にはロウダスがいた。
「この坊主が知ってると?」
「ロウダスも知らないでしょうね。ただもう一人、ああ、もう一柱と言ったほうがいいですね。いるらしいですよ、知ってる方が」
『僕の事だよそれ~、久々に見る顔がいくつかあるね』
目の前に現れたのはボサボサの長い紫髪と眠そうな顔をした雲に寝転がっている女性だった。
『ゼウス様お久~。ついたのが男の子で残念だったね。相手が女の子ならヘラ様が許さないだろうから当たり前だけどさ~』
『お主がいるということはこの小僧がそうなのか』
『そ。この僕、オネイロスがついているのがこのロウダスだよ〜。皆の同類だね』
オネイロス、夢を司り、人にあらゆる夢を見せる神と言われているが、どちらかというと本人の方が眠たそうにしている。
「まさか四人目にこんな所で会うなんてな。意外と神様を連れている人は多いのか?」
『そんなわけ無いじゃん。そうそういるものじゃないんだけどね、運命めいた何かで引き寄せられるんじゃないかな』
「立ち話もなんです。この先に私達の小屋がありますので、詳しい話はそちらでしましょうか。結界も張ってありますのでモンスター達は近づいて来ませんからね」
十分程歩いた先に一戸建ての小屋があった。
「ここが私達の小屋です。どうぞ中へ、あまり広くないですがね」
小屋の中へ入っていくフット達だったが、ライガが一つ不満を口にする。
「あのロウダスって奴、いくら話しかけても無視するんだけど。感じわりーよな」
ロウダスは既に小屋の中に入っていってたが、オネイロスが近寄ってくる。
『ごめんね〜、あの子人見知りなんだ。そもそも同年代の人間なんて初めて見ただろうから戸惑ってるんだと思うよ〜。だから気を悪くしないで、良ければあの子と友達になって欲しいな〜』
「まぁそういう事なら俺は一向に構わないぜ」
「早く中に入るぞ。ユナちゃんも寝かせてあげたいし」
中に入るとフットが壁に猟銃を掛けていた。
「客室はこちらに。お嬢さんを寝かせておきましょう」
ユナを寝かせ、机を囲んで椅子に座るとロイドが切り出す。
「まず一つ聞くが、あれはあんたの仕業って訳じゃないんだな」
「私には出来ませんし、出来たとしてもしませんよ」
「まぁそうだろうな。狼王堕としのあんたがするとは思えないからな」
「狼王堕とし?」
「ああ、そう呼ぶ人もいましたね。今ではあまり呼ばれませんが。それより、女神様なら犯人の心当たりもあるそうですよ」
「そうなのか?」
雲に乗るオネイロスを見てみると、
『zzz……』
完全に寝ていた。
『起きてオネイロス!起きないと永遠に眠れなくするよ』
『──それは困る……。おはよー、それで犯人についてだっけ』
「話は聞いていたみたいだな」
「それで起きるのかよ」
『イブに不眠にさせられると本当に何をやっても寝られないんだ。あれは一種の拷問だね。あれ受けるなら一時の間起きていた方がずっといいとも』
オネイロスが若干震えていた、間延びした口調もなくなっている。余程恐ろしかったんだろう。
『犯人は僕達と同じ神だと思うよ〜。誰がやったかは知らないけどさ〜』
「神だと?神がどんな理由であんなハリボテ用意するって言うんだ」
「ハリボテ?」
「あれは見た目は間違いなくジェヴォーダンの獣だった。元々あった死体に仮初の体を与えて動けるようにしたんだろう。だが中身が伴っていない、あまりにも弱過ぎる」
「あれで弱いのか……」
「あれでもA⁺くらいはあるだろうがな。本来の奴であれば、あった時点で大半は死んでいただろうよ」
(確かに天災とも呼ばれるSSSランクのモンスターにしては弱かった……。幸福の方が余程脅威だと思う)
『弱いのは当然だよ、多分これはそいつが用意した試練なんだ』
「試練だと?」
皆がイブを見る。
『ショウ達が勝てるかどうかギリギリの敵を用意したんじゃないかな。私達がここに来たと同時にあれが現れてそれが神の仕業ならそうとしか思えない。ここにロウダスもいたんなら尚更だね』
「目的はこいつらに戦わせることって事か。やり方が兵士の短期育成みたいだぞ」
「どうしてそんな事を?」
『神々はね、英雄を求めているんだよ。多くの困難を乗り越える英雄を探して世界中を見守っている。そして見込みのある、気に入った者に試練を与えることがあるんだ。それを乗り越えて更に成長する事を望んでいる』
「………その試練のために母は利用されているという事か」
今まで口を閉ざし続けていたロウダスが喋った事に皆が驚いていた。だがそれより口にした内容の方が気にかかる。
「母ってどういう……」
話を聞く前にロウダスが小屋を出ていってしまう。
「出ていっちまったぞあいつ」
「話は終わったんですか?」
フットはイブ達の声が聞こえない為、状況を把握しきれていない。
「母ってどういう事ですか?」
「そのままの意味です、彼は私の実の息子ではありません。彼は狼王の子なんです」
(語り部)
「不眠の呪いは辛いらしいよ。なんせどんなにボコボコに殴りつけても意識を飛ばす事が出来なかったらしいから。ただ痛かっただけで」
「───」
「ん?気に入った英雄に試練を与えるのがそんなに不思議な事かな?よくある話だと思うんだけど。ほら、好きな子にちょっかい出しちゃうアレ。それに近いよ。迷惑な話だよね」




