筆記試験
クラヴィス学院の筆記試験は、一般常識、魔法の知識、魔物の知識、王国の歴史に関する問題などが出題される。貴族であれば家庭教師に前もって教えられる事も多く、成績上位者の大半が貴族によって独占される事が恒例だった。今回もそうであるとは限らないが。
『私が答え教えれば間違いないんだけどなぁ』
『それじゃあカンニングになるだろう。俺はする気にはなれない』
『真面目だなぁ…まぁカンニング防止の魔導具も使ってるから教えても意味ないけどさ』
『それに意外と簡単だったからな。モンスターについても有名どころが多かったからそこまで悩まなかったし。かなり上位に組み込めるんじゃないか?』
(上位どころか1位なんじゃないかな?確認した感じ間違ってそうなのは1問くらい。第一、他の子の反応からしてそこまで簡単じゃなかったんじゃないかな?)
一方その頃、昼休憩を挟み、学院の教師陣は試験の答案の確認を始めていた。
「今年は難易度が少し高かったのか、正答率は芳しくないな」
「貴族連中でもなかなか苦戦しているぞ。誰がクリスタルヒューマンの弱点なんて知ってるんだ?あれ、未踏破区域のモンスターだろ?体硬すぎて物理攻撃はほとんど効かず、魔法への耐性も高くてほぼ無敵。討伐の報告なんてSランク以上の冒険者パーティのゴリ押しくらいしか無いんじゃないか。討伐方法確立してたっけか……」
「儂は知らんな」
「私もです」
「これ誰が作ったんだよこれ」
「確か学院長ですね」
「あの人なら知ってんのかもな……新入生に出す問題じゃないと思うけど」
「でも解いてる子いますよ?」
「ま?誰だよモンスター博士か?」
「このショウ・シュヴァルツと言う子ですね。すごいですよこの子、ほぼ全問正解ですよ。カンニングを疑うレベルですね」
「この答案はカンニングして解答したらその場で燃える魔道具の紙だからな。してないんだろうよ」
「後1問で全問正解だったんですがね……」
「何の問題を間違えてるんだ?」
「ほらこれ、7年前に起きた戦い、通称Dの侵攻における英雄の名前を答える問題です」
「は?それって最近で1番大きな戦いだぞ?しかもその英雄って王都のギルドマスター達じゃないか。間違えようがないだろう」
この世界には冒険者が所属するギルドが各国に存在し、ギルドマスターはギルドの責任者達である。特に王都に存在するいくつかのギルドのマスター達は戦争の英雄として名を轟かせていた。
「でも解答はポール・シュヴァルツって。これ、誰です?」
「聞いたことはないな」
「まああの戦いの参加者は多いし、名前からして親族なんだろう。こいつにとっては英雄なんじゃないか?まあ答えとしては間違ってるが」
「間違っていませんよ、その答えは」
「が、学院長!?」
彼はクラヴィス学院の創設者であり、学院長であるヴィンセント・クラヴィス。エルフであり、クラヴィス学院は100年以上の歴史がある以上歳は100を越えているのだろうが見た目は20代の優男、実年齢は誰も知らない。
「学院長はこの名前を知ってるんですか?ってそういえば学院長も参加者でしたね」
「でも英雄っていえばこの戦いの最功労者の名前ですよね?でもこの人の名前は聞いたことないんですが……」
「この方は自分の事を英雄などと思ってはいなかったですからね。表舞台で英雄に祭り上げるのはやめたんです。ですが、間違いなくあの戦いに参加した者は皆が彼を、彼等を英雄と呼ぶでしょう。だから、この解答は合っていますよ」
「へー、じゃあ全問正解か!すげーな、こいつ!」
(しかし、ショウ・シュヴァルツ……彼が今後どうなっていくのか、何を為すのか、楽しみですね。)
解答の確認が進む中、試験は実技試験が行われようとしていた。
クリスタルヒューマンは全身魔水晶でできた人型のモンスターで、動きは速く、力も強く、耐久性もあり、出没場所もまだ人が調査しきれていない場所な為、一般的には討伐報告がほぼ無いモンスターです。弱点は周りから酸素を奪うと機能が低下し、耐久性が下がったところを攻撃する、です。呼吸器官があるのかは不明ですが酸素が無くなると弱くなります。