襲い来る茨
「確かこっちの方から……」
『ちょっと待ってよ~。これだけ離れてて声が聞こえる訳無いよ。空耳だって絶対!』
服を引っ張って止めようとするがショウの足は止まらない。
「テレパシーみたいなものだから距離はあまり関係ないと思う。それに……行かないといけない気がするんだ」
進み続けると開けた場所に出る。
「ここだけ木が無い。他は木が光を遮って薄暗かったのにここは明るいな」
『ショウ、最悪の事態になったよ』
この空間の中央に、それはいた。
『彼女が、幸福の本体だ』
それは小柄な少女だった。ウェーブがかった長く白い髪、端正な顔立ち、金色の瞳に光は無く、顔からは感情を感じられない。
「あれが幸福……」
『幸福を見ても影響を受けてないのは本当に良かったんだけど、ここまで本体に近づくと何をしてくるかわからない。基本こっちが何もしなければ何もしてこないと思うけど……』
「どうして……眠らないの?」
幸福が語りかけてきたことに驚く二人。
「「!!」」
「あなたはおかしい……幸福になるのが全ての生物の目的……身を委ねればたどり着ける……なんで幸福にならない……」
地面から無数の巨体な茨が生えてくる。
「あなたは幸福にならなくてはならない……受け入れて……幸福を」
眼前を覆うほどの茨が一斉に襲いかかる。
『物理的に眠らせに来たんだけど!?早く逃げないと!ショウ、上空に飛んで森を出よう!』
ショウは立ち尽くしていた。目の前の光景が目に入っていないかのようである。
『まさか能力にかかったの!?』
「いや、かかってないよ。ただあのお婆さんの占いを思い出しただけだ」
眼前を覆うほどの茨、白い長髪、森の中、確かに一致する。
『確かに状況は一部一致するけど!茨に閉じ込められてないし泣いてないでしょ!ていうか早く逃げる!』
「そうだな、流石に不味い」
上空に逃げようとすると頭上を木々が覆い隠し、枝もショウを狙って伸びてくる。
「本当に逃げ場が無いな」
伸びてくる枝を斬り、茨を弾いてなんとか凌ぐが全方位を木々に囲まれている森の中では逃げ道がない。
「このままじゃ……」
「困ってんなら助けてやろうか?」
ショウへと伸びてきた茨ごと木々を切断する斬撃が通過し、横に道が出来る。その先から現れたのは刀を手にし、少女を肩に担いだ赤髪の男だった。
同じ赤髪でもアッシュとはなんの関係もないです。




