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STORY ~白銀の物語~  作者: 黒羽カウンター
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幸福

『転送陣が一方通行になってなければ直ぐに戻れたのに』

『幸福…またネガティブシードか』


 ライガとレイを、ゼウス達がそれぞれ担いで森の外へと向かう。


『あれは厄介だよ。あれは他者へ危害を加えようとしている訳じゃない。この力もバフのような物だし、自ら受け入れているものだから防ぐことが出来ない』

「これはバフなのか?眠らせてるのはデバフなんじゃ……」

『相手が望む夢を見せる。そして夢を見ている間はあらゆる状態から回復する。それが幸福の能力。夢を見ている間はお腹も空かないし、傷を負っても痛みも感じないしすぐ治る。そして夢を見ている本人はそれを夢と思わない。寝ている自覚が無いから起きようとも思わない。お腹が空かなくても生物は食べなければ生きていけない。そのうち衰弱して死に至る』

「つまりライガ達が自分から起きる事は期待できないか。でもそれ、俺に効いてないのはなんでだ?」

『ああ、それはショウの精神が他と構造が違うんだよ。ショウに精神系の魔法は効かない』

「そうなのか……」

(それに、ショウを満たす夢なんて見せられないから、っていうのもあるんだろうけど)

『それと、幸福の魔法が状況をより悪くしてる』

「幸福の魔法もわかってるのか?」

『この森自身が、あれの魔法そのものだよ』

「この森が!?」


 地図にも載る程の広大な森林。その全てがたった一体のモンスターの魔法でつくられている物だという。


『幸福の能力の発動条件は幸福を五感で感じ取ること。目に見る、声を聴く、触れる、五感であれを認識すればそれだけで能力の影響を受ける。そしてこの森があれの魔法によるものである以上この森を視認しているだけでも効果が発揮される。本体よりかは効果は薄いけど』


 ショウは冷や汗をかく。この森が幸福の魔法であるならば、この状況はもう既に詰んでいると言ってもいい。


『幸福は危害を加えようとしている訳じゃないから攻撃してくる事は多分ない。それに森から離れて影響力が下がればライガ達も目を覚ます。あまり長く居続けると離れても起きなくなるかもだけどね』

「攻撃されないなら有り難い。急いで森を抜け……」


『……けて……』


「え……?」


『誰か……たす……け…て……』


『……?どうしたのショウ?』

「今、誰かが助けを呼ぶ声が聞こえて……」

『ここに送られた生存者は多分もう助からないよ。時間が経ちすぎてる。それに森が広すぎる、探すのは無理だよ。声も私には聞こえなかったし、空耳じゃないの?』

「いや、確かに聞こえたんだ。助けを求める声が。ゼウス!先に森の外へ行ってくれ。後から行く!」

『あまり離れたくないんじゃが……問答しとる時間もないか。先に行っとるぞ!早く戻ってくるんじゃぞー!』

『あー、もう!絶対面倒事だよこれ!火に飛び込む蛾じゃあるまいし、自重してほしいよ全く……』


 イブは愚痴をこぼしながらもショウを追い、中心部へと向かっていく。

森1つ操れて、能力の影響範囲森が視認できる距離って凄いですねー。

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