夢の中
「くぅっ……!」
「俺の勝ちだ!」
全ての魔剣を弾き飛ばし、拳をショウの眼前に突きつける。
「まさか、この短期間でここまで強くなるなんてな。俺の負けだ」
周りからは歓声が上がり、称賛の声が投げかけられる。
「俺もまだまだだな。もっと強くなって、今度は俺がリベンジしてやる」
「次もまた俺が勝つぜ!」
闘技場から出るとレイが待ち構えていた。
「君の戦い、実に素晴らしかったよ。おめでとう」
「ありがとよ。お前にも今度勝つからな、覚悟しとけよ!」
「その時を楽しみにしてるよ。それじゃ」
学院からの帰り道、商店の前で立ち止まる。
「こ、これは!ワニャンコシリーズの新作、『真の姿を解き放つワニャンコ』じゃないか!人気すぎて見つからなかったのにこんなところにあるなんて!」
ワニャンコシリーズは人気子供アニメのキャラクターグッズである。猫の皮を被った、もとい猫の被り物を被った犬、の振りをした狼である。
「ショウにも勝ったし、ワニャンコの新作も見つかるなんて、今日はいい日だな~!」
ご機嫌な表情でライガは家へと帰っていく。
「おお!!これがあの天才、レイ・フリーストの彫刻か!」
そこにあるのはレイ自身の全身彫刻。他にも多くの展示が置かれている。
今日はレイの作品の展示会が行われており、多くの人が訪れていた。
「人がたくさん来ているな。盛況なようで何よりだ」
「見に来てやったぜ、レイ!」
今や聞き慣れた声にレイが振り向く。
「やぁ、来てくれたんだね。ショウ、ライガ」
「俺には芸術ってのはあんまりよくわからねーけど、お前の作品はなんか、見てて心が洗われる」
「自分の彫像とは……ふふっ、レイらしいな」
「そうだろうとも!ぜひともゆっくりと見ていってくれたまえ。終了後には打ち上げに招待しよう。夕食をご馳走するよ」
「マジ?楽しみだな!一流シェフのレシピを学ぶ良い機会だぜ!!」
「それじゃあ僕は行くよ。こう見えて他にも会わなければならない人が大勢いてね、忙しいんだ」
「ああ、頑張れよ」
立ち去る二人を見送り、自身も会場へと戻る。
「さて、より多くの人を魅入らせて見せようじゃないか」
「どうしたんだ、二人共!何にやられたんだ?」
『二人は今は夢の中さ。今はまだ問題無いけど、長く居続けるとかなり不味いね。早くここから抜け出さなきゃ』
ライガ、レイは夢の中にいた。森に転移した直後から意識は朦朧とし、それからは夢を見続けていた。
「一体何があったんだ!?イブはわかっているんだろ?」
『ここは安楽の森、ここに入った者の多くは二人と同じ状態になる』
「安楽の森?S級危険指定区域じゃないか!ここには何があるんだ?」
『ここは別に危険なモンスターの巣窟という訳じゃない。ただ一体、SSランクのモンスターがいるだけ。二人の症状もそのモンスターによるものだよ』
「たった一体?それは……」
『そのモンスターは感情の種魔の一体、名を幸福。あらゆる生命に幸せをもたらす為だけに存在するモンスターさ』
ワニャンコは人と共に生きたいと願う狼であり、討伐されないように知り合いの妖精、フェアリーニャンコマザーから貰った魔道具、『猫被り』を被り狼であることを隠して街の中で生活しており、人懐っこく、街中の人気者。人が困っている時は力を抑えている被り物を外し、真の姿で困難を打ち破る正義の味方、という設定のキャラクター。正体がバレないように毎度苦労しながら事件解決しているが、正体はバレがち。グッズの売れ行きは大盛況である。




