表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
STORY ~白銀の物語~  作者: 黒羽カウンター
27/105

vs虚無感2

「さっきまでの威勢はどうしたのかな?」


 激しく消耗しているショウ達に対し、未だ余力を残している虚無感。明らかに劣勢だった。


「……いくつか聞いていいか?」

「ん?時間稼ぎ?まあなにか企んでたとしても君達に逆転は無理だけどね。何が聞きたいのかな?」

「なんで俺達を殺そうとしない。ネガティブシードに寄生させても暴走したら困る、それにお前みたいに理性が残ったとしたら間違いなくお前を攻撃するだろう。さっきもいっそ殺すかと言ってたよな。なのになんでだ?」

「それは俺の上がそうしろって言ってきたからでーす。それにその方が俺にとっても都合がいいかもだし」

「お前はなんでこんな事をしてる?組織か何かに入ってるとしてもだ。何か目的があるのか?何かしらの目的の為に戦力集めをしてるのか」

「上の考えはどうかわからないし、言う理由も無いんだけど、俺の理由なら教えてもいい。俺はさ、面白い事が起きてほしいんだよ」

「……?」

「俺は昔からさ、何をやっても何も感じなかった。楽しいとも、辛いとも、悲しいとも、苦しいとも思わなかった。心から笑った事もない。泣いた事もない。そんな俺が初めて人を殺した時、何を思ったと思う?何も思わなかったんだよなぁ。何も感じないを感じたんだよ。──その時だよ、この虚無感に取り憑かれたのは。魔力暴走を起こして、周りをズタボロに切り刻んで、駆け付けた衛兵なんかも皆殺しにしたけどやっぱ何も感じなくてさ。それで路頭に迷ってた時に今のボスに拾われた。俺みたいな怪物が溢れて世界を滅茶苦茶にしたら少しは面白い事が起きるかなって思ってボスについてきた」


 貼り付けた笑顔を消し、ショウ達を見る。


「さっき興味があるっていうのは嘘といったがあれも実は嘘だ。本当は少し、お前達に期待してる。お前達の魔力の底知れなさを見た時、俺の心が少し、動いたような気がするんだ。だから、もしかしたらお前達なら俺の心を動かしてくれるんじゃないかって思い始めてる」

 

 再び笑顔が戻る。


「そんなもんだ。俺としては拉致った子供が上手く寄生されてもされなくても正直どちらでもいい。面白くなるなら出来たほうがいいけどさ?そんでもってお前らが面白くなりそうなら生かしといたほうがいいから生かして連れて行こうかとも思ってる。どうだ?いい時間稼ぎになったかな?」

「ああ、少しは魔力も回復したし、体も休めた」


 八本の刀を構え、戦闘態勢をとる。


「これから使うのは、俺の数少ない技だ。これでお前を倒す」

「いいね~。とっておきって奴?せめて一矢報いられるといいね」


 手に鋼糸を束ね、球体を成す。


「なら俺も少しは本気を出すよ」


 八本の刀全てに魔力が集まっていく。その輝きは八色の虹。


八閃花ようせんか


 ショウの切り上げによる斬撃に合わせ、他の七本からもそれぞれ中心に向けて斬撃を放つ。それは中心から八色の色を放つ虹の花のようだった。その中心には全属性の力が集まり、膨大な破壊力となる。


玉鋼襲ぎょっこうしゅう


 球上に凝縮し、幾重にも重ね、解き放たれた鋼糸は目の前の床を尽く切り刻んでゆく。

 二つの技がぶつかり合い、決着はすぐに訪れた。八つの花弁は切り刻まれ、その後ろにいたショウ自身も巻き込まれる。咄嗟に氷の壁で身を守ったレイ達も容易く吹き飛ばされていった。しかし、


「まさか、俺に届くなんてな」


 虚無感の頬からは紅い雫が頬を伝う。僅かだが確かに斬撃は届いていた。


「あの攻撃を受けてまだ体が残ってるなんて、結構相殺されちゃったか。本当に健闘したほうだと思うよ」


 そこには左腕と右脚が切り飛ばされ、全身傷だらけのショウが転がっていた。


「ま、後は連れて帰るだけか。まあ今後に期待できそうかなぁ」


 そう言ってショウに手を伸ばす。


『ショウはこんな所では終わらせない』


 



 気づいた時には虚無感の体は肩から腹まで切り裂かれ、地に付していた。

 今、何が起きたかわからなかった。何故、自分は今地面に転がっているのだろうか。確かにショウ達は先程まで傷だらけで倒れていたのに、一体誰がやったのか。

 目の前に立つものに目を疑った。

(何故、ショウが両足で立っている?何故、両腕で刀を振っている?何故、先程まであった傷が無くなっている?)

 

 よく見ると他の二人も気絶はしているが傷はどこにも見当たらない。まるで最初から無かったかのようだった。


(そんな馬鹿な……夢でも見せられていたとでも言うのか?)


 血を吐きながらも虚無感は初めて、ある感情を抱いた。──恐怖、虚無感本人にその自覚は無かったが、本能では確かに恐怖を感じていた。今、目の前に立っている少年は自分の遥か上を行く化け物に見えていた。だがそれは一瞬でその少年は先程と変わらない自分よりも遥かに弱い少年に戻っていた。


(今のが何だったのかはわからない。でもこの傷は不味い。流石に撤退しないとな)

「今回は…引いてあげるよ。これだけの痛手を…ゲフッ…受けると思わなかった。ああそれと健闘のご褒美、そこにある転送陣の先に……いらなくなった子達ならいるよ。生きてるかは……わからないけど」


 物陰に隠してある転送陣を指差してショウに伝える。とうのショウは立ちながら気を失っており、聞いてはいなかったが。


「それじゃあ俺は行くよ。また……楽しませてくれよ」


 虚無感は一足先に転送陣に乗って立ち去っていった。残されたのは気を失ったショウ達とそれを見守る神霊達のみ。


『随分危険な橋を渡ったのぅ』

『ショウ達が死ぬくらいなら賭けにだってでるよ。それにショウが言ってたでしょ、俺は死なないって』

()()()()()()()()()()()になる可能性はあったがな』


 三柱の神は子供達が起きるのを見守り続けた。

戦闘って難しい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ