vs虚無感
「「ショウ!!!」」
切り離された腕が宙を舞い、鮮血の海が広がり続ける。
「ショウ、早く止血しなきゃ!」
「ヒール!」
光の魔剣により傷口からの血は止まった。だが急激に血を失い、足元がふらついている。
「不思議な感覚だ、腕が切り落とされたのに痛くない」
「あいつの能力の影響か、俺もさっき蹴られた時、怪我はしてるのに痛みがなかった」
それはどんな致命的な傷を負っても気づく事が出来ない、という事。どんなに負傷し、行動不能に陥ったとしても、体は異常を認識出来ず動けると錯覚してしまう。どんなに血を流していても気づかず、手遅れになりかねない。虚無感の力は、標的に悟らせることなく死に至らしめる事ができる。
「部屋中の糸を水で濡らして見えやすくし、張り巡らせた糸を切った。──それで道が拓けたと思ったのかなー?まだまだ経験不足、他にも手札があるに決まって……っ!!」
無数の刀と炎や風の刃が同時に飛んでくる。
「余裕ぶっていられると思うなよ」
「話してる最中に斬りかかるのやめない?なんかいつも喋りきれないんだけど……。それにさ、もっと切られた腕を気にした方がいいと思うんだよ」
「腕の一本くらい、死ぬよりはましな状態だろ」
「可愛くないガキめ」
右手に風の魔剣を持ち、他の魔剣を全て虚無感へと向かわせる。宙に浮いた魔剣から炎や雷が撃ち出された。
「お前手から離れてても魔剣の力を使えるようになったのか!」
「昨日の夜、やっと上手くいったよ」
魔剣は魔道具の一種。そして本来、魔道具は手に持って魔力を込める事で力を発揮する。だがショウは遠隔で魔力を操作する妖精の舞踏によって手から離れた物を浮かせているのなら、離れていても魔法越しに魔力を込められるのではないか?と思い、試行錯誤を重ねていた。魔力を魔法に使う分と二重に送らなければならない分魔力が拡散し、上手く発動出来ないでいたが、今では全ての魔剣を同時に発動する事が出来る様になっていた。
「氷床」
「おわっと!」
足元が凍り、足を滑らせる。その隙に、
「落ちろ、雷槌!」
少しずつ溜めていた雷撃を虚無感目掛けて振り下ろす。
土煙の中にいたのが黒焦げになった虚無感であったなら僥倖であったのだが、そこにいた虚無感には火傷一つない。だが、雷が落ちる直前の光景をショウ達は見逃さなかった。
「手から伸びた糸、それが雷を真っ二つに割った。それで俺の腕も斬ったのか。」
「ああそうだ。俺は様々な糸を作り出し、操れる。お前達を捉えたのは伸縮性のある糸だった。割と頑丈だが、焼かれたりすりゃ燃えるし、お前たちを捕まえるには強度不足だった。だから別の糸を作り出した。人の体が豆腐のように切れる鋼糸だ。」
三人の体は気づかぬ内に切り刻まれ、多くの血を流していた。
『時間をかけると体が持たないよショウ』
『わかってる。長引かせて好転はしないことくらい』
虚無感の足元から岩の棘が飛び出すが飛び上がり難なく躱す。
「空中なら躱せないだろう!」
空中の虚無感に向かって八本の刀が飛んでいくが、糸によって阻まれる。
「さっきまでのと強度が違う。お前程度がいくら魔力で強化しても俺の糸は斬れないよ」
「斬る必要は無いよ。刀が至近距離まで近づけばね」
「何……?」
虚無感を狙っていた魔剣の一つから水があふれ出し、虚無感を球体状に包む。それと同時にライガの雷撃が虚無感を襲う。
「ガポァッ!?」
そしてレイによって水球は完全に凍りついた。
「あいつならこれくらいじゃ死なねえだろうけど、これで身動きは取れないだろ」
「血を流しすぎたよ。なんかフラフラするし、服も血でドロドロだ」
「こいつからは連れ去られた子達の居場所を聞かないとな」
完全に戦いが終わったように思っていた。だが目の前の男は、凍りついた程度で終わる程容易い敵ではない。
「まだ、終わりにさせてあげないよ」
氷は粉々に砕け、中からは未だ笑みを浮かべる虚無感が現れる。
「いい連携だった。でも凍らせたくらいじゃ俺は止められないぜ。糸に振動を与え続ければあれくらいの氷、簡単に砕けるしな」
疲労困憊の中、虚無感との戦いは未だ終わらない。
虚無感の魔法
製糸魔法
色々な種類の糸を作り出し、操る事ができる。
殺す気なら捕まった時点で詰みだったかもしれない。




