最下層
階段を降りていき、開けた空間に出ると目線の先にはあの男が立っていた。
「よくここまで辿り着いたね君達。ってあれ?なんか知らない子が一人増えてる。まぁいいや。しっかしここに来るまで何人くらい死んだ?」
「一人も死んでないよ。俺達は三人だけで来た」
「まじ?いけないなぁ。悪人の居場所がわかったならちゃんと衛兵さん達に言わないとだろう?」
「罠の可能性が高いのに連れてこれるわけ無いだろう」
「それでこの罠の可能性が高い場所に君達三人だけで来てどうしようっていうのかな?もしかして本当にスカウト受けに来てくれたり?そっちの子も条件にピッタリだしさ」
レイを指差して言う。
「僕はお断りだけどね。モンスターになる気はさらさら無いとも」
「あら、バレてた?ネガティブシードを寄生させる計画」
「俺達が来た目的は二つ、連れ去られた人達を返してもらうこと、そしてお前を捕まえる事だ!」
双剣を抜き、斬りかかるが、ショウの刀の先に虚無感の姿は無い。
「危ないなー。でもその二つ、残念ながらどっちも無理だね。連れてきた人達ならもう死んでるか他の所に連れてかれたし、今の君達に俺を捕まえるなんて絶対に無理だって」
「今回は前回と違って僕もいる」
虚無感の立っていた空間を凍らせようとするが笑みを浮かべながら躱される。
「で?君がいたとしても大して変わらないみたいだけど?」
「ぐぁっ!?」
後ろから殴りかかろうとしたライガの攻撃を躱し、蹴り飛ばす。
「どうせなら君達から仲間になってほしいけど、断るなら無理矢理寄生させるだけさ」
「どうしてそんなに俺達を仲間に誘うんだ?」
「言っただろ?俺は君達に興味が湧いたって。君達はいい兵士になると期待してるんだよ」
「嘘を吐くなよ虚無感。お前が他人に興味を持つとは思えない。だってお前、何も感じないんだろ?」
途端に虚無感の表情が無くなる。
「虚無感のネガティブシードは歴史上一度だけ確認されている。記録には何も感じ取れず、何も感じないモンスターだと記されていた。痛みも感じない。精神系の魔法も効果がない。感情を持たない魔物だってな。お前もそうなら興味以外の理由がある事になる」
笑みの消えた表情のまま虚無感が喋りだす。
「確かにお前達に興味があるというのは嘘だ。お前達はただの素材の一つでしかなかった。俺には特別な目があってな、視れば相手の魔力量が分かるし、目に見えない存在なんかも見える事もある」
(やっぱり魔眼持ちか。ただ子供を連れ去るんじゃなく魔力の高い子供を連れ去るならそういう力がないとだからな)
「お前達を見た時は変わった子供がいるなとしか思わなかった。目に見えるけど姿がはっきりしない存在は初めてだからな。だがお前達の魔力を見て黙り込んじまったよ」
ハハッと乾いた笑いを上げる。
「お前達はその気になれば俺を簡単に倒せる程の力がある。そんな連中を捕まえようとして返り討ちは困る。力を与えて暴走して止められなくても困る。後々敵対したら厄介な存在になるかもしれないからいっそ殺そうとしても返り討ちにされたらやっぱり困る。ならいっそ引き入れればいいとなったわけだ」
「その気になればお前を倒せる?何の話だ?」
「引き入れるのが無理そうだから罠で殺そうと?」
「罠で死んでくれるなら楽だったけど、どうせ無理だろうと思っていたよ。だからここで待っていたんだ」
直後、ショウ達は体が何かに捕らわれて身動きが取れなくなった。
「くっ!」
水の魔剣で辺り一面に水を撒くと部屋中に糸が張り巡らせてあった。
「気づかなかっただろ?俺が仕掛けたものは存在を認知できない上、元から気づきにくいよう極細の糸を使っているからな。これでいつでもお前達をばらばらに出来る」
糸が引かれると体に食い込んで体中から血が滲み出て来る。
「これくらいで俺達を止められると思うなよ!」
糸を刀で切り、雷で焦がし、凍らせて砕いて体が解放される。その勢いのまま虚無感へと斬りかかろうとする。
「分かってないな~」
虚無感へ辿り着く事はなく、ショウの左腕が斬り落とされていた。
虚無感について
気配が無くなり、彼が使用する道具も認知出来なくなる。彼自身も感情がほぼ無く、基本顔に笑顔を貼り付けているが本当に笑っていることは無い。




