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STORY ~白銀の物語~  作者: 黒羽カウンター
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感情の種魔

「君達、俺の仲間にならないか?」

「仲間だと?まさか俺達を勧誘するなんてな」

「周りも騒がしくなってきてすぐにでも衛兵さん達が来るだろうから手短に話すけど君達は俺が探してた条件に当てはまる可能性が高い、そして俺が気に入った、だから欲しい、以上だ。それで返答は?」

「承諾するとでも?」


 電気を流した水の斬撃を飛ばすが軽々と躱される。


「あっぶねー、掠っただけでも大惨事だぜ。当然メリットもあるぞ、今すぐにでも俺くらいに強くなれる可能性がある」

「今すぐに?」

「ごめん盛ったわ!流石に今すぐに俺くらいは無理だわ。でも、この先俺達についてくるなら確実に俺より強くなる。その素質が君達にはある」

「彼の提案を聞く必要はないよ。方法も検討はつくけどとてもじゃないけど承諾できないよ」

「だろうな。あいつと同じくらいって、あいつと同じ何かになるってことなんだろうけど、得体がしれな過ぎる」


 会話しながらも攻防は続いているが男の余裕な表情は崩れない。


「くそ、一向に当たらねえ。視界から消えたらどこにいるかも全くわからなくなるし、ほんと厄介だな」

「もうちょい遊んでいたいけど、そうも言ってはいられなそうだね」


 騒ぎを聞きつけて衛兵達がやってきていた。


「この街じゃもう動き回るのも面倒だから俺達は他に移るけど、もし仲間になりたいなら明日の夜までにここに来るといいよ」


 投げ渡されたのは一枚のカード。


「そこに俺達の居場所が入ってるからさ。それと俺の名前は虚無感、どうせなら覚えといてくれよ~。それじゃ!」


 その男、虚無感は最初からそこにいなかったかのように姿を消した。


「お前達、ここで何をしてるんだ!さっき住民から街中で戦ってる連中がいると通報されたぞ。子供の喧嘩なら家でやりなさい。というかこんな時間に出歩くんじゃないよ!ただでさえ人攫いが出るらしいんだから」

「その人攫いに出くわしたから戦ってたんだよ」

「はぁー!?それ本当か?本当に人攫いなんだろうな?」

「本人が認めてたんだからそうだろうよ」

「まじか!やっと目撃者が出てきてくれたぜ!捕まえる手がかりになる!」

「手がかりっていうなら……」


 ショウはライガを制し、会話を進める。


「証言なら明日しますので、今日はもう帰っていいですか?流石に疲れてしまって……」

「まあもう遅いしな。それなら明日駐屯地に来てくれ、話を聞きたい」

「わかりました」

「それと、こんな時間に子供だけで出歩くなよ」

「わかったよおっさん」


 衛兵と別れてから少ししてライガが切り出す。


「なんでそれを渡さなかったんだ?明らかに目撃証言よりも確実な手がかりだろ」

「衛兵が来てるのに自分達の居場所を教える時点で用意万全で突撃されてもいいように罠が仕掛けられていると思ったほうがいいだろう。何より、さっきイブに教えてもらったけど、あいつの魔力は三百万を超えてるらしい」

「まじかよ!?」

『儂も確認したから間違い無いじゃろうな。あ奴がどのような戦い方をするかもわからんかったし、それにあの名前……』

『間違いないよ、彼は感情の種魔(ネガティブシード)に寄生された人間だ』

「ネガティブシード?新種の種か?」

感情の種魔(ネガティブシード)はかなり昔から度々歴史上に現れるモンスター達の名前だよ。人に寄生するモンスターで、その名前にあった感情に起因して寄生するらしい。こいつらに滅ぼされた国も存在するくらいには危険で名前に懸賞金がかかってる』

「名前に?」

『あれは討伐しても時が経つと別の宿主を見つけて蘇る。完全な討伐法がわかってないんだ』

「厄介過ぎるだろそれ……。つまりだ、あの虚無感って奴はそのネガティブシードって奴であいつの言ってた強くなる方法ってのは同じネガティブシードになるってことか?」

「多分な。それに俺達って事は他にもいる可能性が高い。災害級のモンスター複数を相手の呼び出した場所で相手取るなんて流石に無謀だと思う」

「とはいっても俺達だけでもどうにもならないだろ?」

「そうなんだよな。しかも明日の夜にはいなくなるなら今から国に連絡した所で準備が間に合わないだろう。だからせめて拉致された人達だけでも不意をついて助け出そうかなと」

「それも簡単な話じゃねーだろ。姿を消していてもバレたんだぞ」

「正確には見えにくくなってただけだけどな」

『それに言い難いけど、多分今まで拉致された人達はもう手遅れだと思うよ?』


 イブが申し訳なさそうに喋りだす。


「なんでそう思うんだ?」

『彼らの狙いがネガティブシードの人為的な寄生だと思うからだよ。ネガティブシードを寄生させるにはいくつかの条件を満たす必要がある。逆に言えばその条件を知り、それを満たす事ができれば寄生させることが出来る可能性がある。だけど、失敗すれば大抵は感情が死に、廃人となる事が多い』

「つまり……」

「成功してもモンスター化、失敗すれば廃人、どちらにしても救いはないよ」

「だけどまだそれが行われたと決まったわけじゃ……他の理由で拉致されたかもしれない」


 イブは首を振る。


『ネガティブシードは感情の起伏が激しい子供の方が寄生しやすい。そして拉致された被害者は子供が多いらしいね。目的は人為的なネガティブシードの増産と思ったほうがいい』

「そんな……」

『今のショウ達じゃどうせ敵わない。行く理由もおそらくもう無い。正直行ってほしくはないんだよ。本来さっきの戦いで殺されていてもおかしくなかったんだから』


 ショウの顔が曇る。その自覚があったからだ。


『今回は諦めるしかない。奴等が再び現れた時こそ倒せるように力をつけないとね』

『儂としても今回は分が悪いと思うぞい。相手の気まぐれで引いてくれたが、わざわざ出向いて交渉を蹴って殺されに行く必要もなかろう』


 ゼウスの言う事はもっともだった。だが、ショウの顔が晴れることは無かった。

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