夜明け前
二人と二柱のパーティは何事もなく終わり、既に夜も更けているのでショウの家に泊まることになったライガ。
「お前って実は貴族だったりするのか?」
「違うぞ?」
「だってよ、見た目からして明らかに一人で住むサイズじゃねーぞ。貴族の別荘って感じだ。王都の中なら本邸と言われても納得する。部屋もいくつかあるし絶対家族三人用ではねえって」
「それは父さんの仲間がいつでも泊まれるように大きめに造ったかららしい。王都の外に建っているのも仲間達が暴れても問題ないようにって事だし。と言っても暴れるのは主に父さんだったらしいけど」
そう言ってショウは笑っていた。
「まあ今は俺とイブの二人だけで確かに広すぎるけど、騒ぐには丁度いい立地だよな。周りに家は無いし。だからたまには遊びにでも来てくれ」
「いや、普通にここに住みてーくらいだけどよ。キッチンは型古いけど上等な物だし、風呂は大浴場、冷暖房もしっかりついててベッドとかいつも寝てるのとは雲泥の差なんだけど。俺朝起きられないかも……」
「何ならここに住んでもいいぞ。王都の外だから買い物とかは不便かもしれないけどな」
「マジ?ならちょっと親に相談してみるか……」
「そろそろ寝るか。ここから学院まで距離があるから早めに出ないとだからな」
「そうだな。そんじゃおやすみー」
ベッドに潜り込むと数秒で寝息を立てて寝てしまった。
「早いな……。さて、俺も寝るか」
「――んぁ?……まだ夜明け前か、中途半端な時間に目が覚めちまったな」
まだ周りは暗く、時計は午前3時を指していた。
「喉乾いたし、水でも貰うか」
階段を下りてキッチンに向かうと外から何か物音が聞こえてくる。
「ん?何の音だ?」
外を窓から覗くとそこではショウが素振りをしていた。汗だくであり、だいぶ前から行っていたのだろう。
「朝早くから鍛錬か?まだ日も出てねーのに精が出るけどよ、ちゃんと寝た方がいいと思うぜ。4時間くらいしか寝てないだろう」
「おはようライガ、お前こそ早いな。確かに睡眠は大事だな、でも心配無いぞ、今も寝ているから」
「……何言ってんだ?どう見ても起きてるぞ」
「人間は脳のほんの何%かしか使えていないんだ。それを俺は普段から少し多めに使えているらしい。その割合を減らして休ませることで脳の何割かは寝ているんだ」
「なんかよくわからんけど凄い事言ってる気がする」
「ようは脳が複数あって、それをローテーションで眠らせているんだ」
「それ体は結局休めてなくねーか?」
「体は動かせるなら動くからな。動けなくなったら休まざるを得ないけどさ」
「すっごい脳筋な事言ってる!?」
ショウは再び素振りを再開する。
『ショウはいつものことだよ。あんな感じで夜だろうと鍛錬し続けてるんだ。今日はまだ休んでいる方だよ、素振りしかしてないから』
「おぉ、イブおはよう」
『うんおはよう。そもそも体よりももっと頭おかしいのは魔法の方なんだよね』
「どういうことだ?」
『ショウはずっと魔法を使い続けているんだよ。日常生活の中ずっと』
「それは常に魔力障壁を張ってるのとは別に?」
『そうだね。魔力障壁は張って脳を保護しないと脳が保たないっていうのもあるけど、それとは別に発動しているよ。ショウは収納魔法が使えるよね』
「ああ、あれ便利だよな。でもあれは出し入れする時だけ使うやつで常時発動してるわけじゃないだろ」
『その収納魔法の異空間で常に刀を浮遊魔法で浮かせて振り続けているんだ、それぞれ別の思考でね』
「別の思考?」
『刀二本ずつを浮かせて、二刀流の自分をそれぞれ用意して戦わせているんだよ。一本同士の時もあるし、一対多の時もある。ショウは今も脳を分割して眠らせているのと同じ要領で別の事を同時に行うことができる。日常生活を送りながら異空間内で自分自身同士で模擬戦を繰り返しいるんだよ』
「……頭おかしくねーか?流石にドン引きだぞ」
『因みに君と戦ってた時はちゃんと本気だったよ。まるで複数の剣士のパーティに襲われてる気分だったんじゃない?他の事にかまけていられるほど余裕があった訳じゃないし。それに人と接する時は必ず止めてるみたいだし』
「あっ、そうなんだ。まぁ勝手にハンデつけて戦われてたっていうわけじゃねーんだな。……まぁあんだけ強いのも納得ではあるわな。そんな事やってんなら。……ちょっと待てよ、あいつの魔力が多いといっても子供にしてはだし、そんなずっと使い続けてたら魔力保たねーよな?」
『ショウは魔力の回復速度も異常なんだよ。魔力は休んだり、精神を安定させたりするといくらか早く回復する事は知ってるかな?』
「ああ、知ってる」
『ショウは鍛錬と同時に瞑想し続けることも出来るから、魔力の回復速度も常人より早い。元々の精神力も他の人より高いから尚更ね』
「つまり、とんでもない修行馬鹿にそれができるだけの能力が備わっちまったってことか」
『そういう事。まぁかなり変わってる子だけどこれからも仲良くして欲しいかな?』
「いや、それはいいけどよ。相手が強い程燃える方だし俺。でもこれだと俺尚更差が広がる一方じゃねーか」
『だから頑張ってショウについてきてね?』
「やってやるわ!!ついてくどころか追い抜いたるわ!」
そう言ってショウの元にむかう。
「おいショウ!自分自身とだけ戦うより他ともやった方が経験になるだろ、模擬戦やろうぜ!」
「寝なくていいのか?」
「今から寝てもどうせ寝付けねーよ。それに目は完全に覚めた!」
「なら、手合わせ願おうかな」
戦い始める二人を眺める存在が二つ。
『朝から元気じゃのう』
『おはようおじいちゃん!』
『おはやすぎよう。まだ暗いのにようやるわい』
『子供は元気が溢れ過ぎちゃうもんだよ』
『元気溢れ過ぎて公害を周りにまき散らかす妖精もいるがのぅ』
『元気が下半身から溢れて他人の人生すら滅茶苦茶にするおじいちゃんよりはマシだよ』
『ショボーン(๑•́ ₃ •̀๑)』
『キモーイ♪』
『笑顔でキモいは傷つくんじゃが!?』
ショウは割と脳筋




