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二日目の昼ご飯選び

 時刻はお昼時。

 飲食の模擬店を行なっているクラスの人の行き交いが激しくなり、生徒たちも慌ただしく動き回っている。

 

「俺たちもそろそろ昼にしよっか」


「はい。他のクラスはなんの模擬店をやっているんですか?」


「島田先輩のクラスは焼きそば作ってたな」


 俺は持っていたパンフレットを広げて、視線を落とした。焼きそばの他にもフランクフルトやチョコバナナ、焼きおにぎりなどいろいろあるが、それらは全部昨日真司たちと食べてしまった。


 俺個人の要望としてはそれ以外のものを食べたいというのが本音である。


「優奈は何か食べたいものとかある?」


 優奈に尋ねてパンフレットを差し出す。それを受け取って「そうですね……」と考えていると、


「よっ。お二人さん」


 目の前には仲睦まじく手を繋いで指を絡ませて歩いていた斗真と瀬尾さんの姿があった。

 

「相変わらず仲がよろしいようで」


「珍しく梨花の方から『手を繋ごう』って言ってきてくれたからな」


「や、やめてよ!恥ずかしい……」


 嬉しそうに笑顔を見せる斗真に、瀬尾さんは顔を赤らめる。


「じゃあ離そっか?」


「……いや」


 いつもは斗真が甘えるのがほとんどだったので、瀬尾さんの方から甘えるというのは珍しい光景だ。お互い文化祭の準備で忙しかったのだろうから、少しでも一緒にいる時間を感じていたいのだろう。


 意地悪な質問を投げかける斗真に、「もう知らない」とそっぽを向いたものの、手を握る力は先ほどよりも強くしていた。


「そう言う良介たちも今日は随分と距離が近いじゃん。よっぽど信頼されているだねぇ」


「あ、それわたしも思った」


 一緒にいる機会が多い斗真や瀬尾さんですらそう思うのだから、やはり俺と優奈の今の距離感はいつもより近いのだ。それでも彼女はそんなことないの一点張りである。


「そうだ。良介たちはもう昼ご飯食べた?」


「いや、今から食いに行こうと思ってどこの模擬店行くか考えてたところ」


「だったら二年生のやってるたこ焼きの模擬店がおススメ。俺たちもそこで済ませてきたんだ」


「そんなに美味いのか?」


「それもあるけど、今昼限定であるサービスをやってるんだ。是非行ってみるといい」


「へぇ。どんなサービスなんだ?」


「それは行ってからのお楽しみってことで」


 俺たちが模擬店の話をしている傍ら、斗真と手を離した瀬尾さんと優奈も会話に花を咲かせていた。


「天ちゃん、今日はやけに積極的だね」


「良くんの性格だと自分からきてくれることはないですし……これぐらいしないとわたしのことを意識してくれないと思ったので……」


「確かに。でも意識していないことはないんじゃない?」


「それってどういう……」


「いつか分かる日がくると思うよ」


 きょとんとした顔を浮かべる優奈に、瀬尾さんはフフッと笑みを溢した。


「斗真くん。そろそろ行こう」


「そうだな。良介、お互い片手に花を携えて残りの文化祭楽しもうぜ」


 そう言って、斗真と瀬尾さんは廊下を歩いていった。


「どうした?」


 二人の背中を見送り優奈の方へと視線を向ければ、じっとこちらを見つめていたので尋ねてみる。


「いえ。なんでもありません」


 そう静かに答えたので、「そっか」と返事を返す。


「今からたこ焼き屋の模擬店やってるところに行こうと思う。俺はたこ焼き食いたいと思ってるんだけど優奈はたこ焼きで大丈夫?」


 たこ焼きは夏祭りやこんなイベント毎がない限り食べられるものではない。斗真も美味しいと言っていたので是非とも食べてみたい。


「はい。行きましょうか」


 優奈の了承も得られたことだし、俺たちはたこ焼きの模擬店を行ってる二年生の教室の方へと向かい、歩き出した。

お読みいただきありがとうございます。

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