斗真のお母さん
学校に着いた俺たちは、早速準備にとりかかった。
先に学校に来ていた家庭部の生徒と二手に分かれる。俺は食堂へと向かい、前もって準備しておいた食材をクーラーボックスに入れて持ち運んでいく。
教室の中に入れば、斗真の姿があった。
二日目ということもあってか、今日はいつも通りの時間に学校に来ていた。
「おはー」
「おはよう斗真。はいこれ。予算の残りと昨日買ってきた材料のレシート」
俺が封筒を差し出すと、斗真はその場で会計に使用する電卓を叩く。レシートの数字と封筒に入っている残りの現金にズレがないことを確認する。
「確かに受け取った。先生に渡してくる」
「おう。食材と珈琲豆はもう持ってきて準備は済ませてあるから、先に着替えてくる」
「俺もすぐに向かうわ」
文化祭二日目の今日は、最初のシフトに入っているため今のうちに着替えを済ませておかなくてはいけない。
斗真は予算費を中村先生に渡しに職員室へ。俺と優奈は更衣室へと向かった。
☆ ★ ☆
メイド服に袖を通して、鏡で自分の姿を見渡す。おかしなところがないことを確認して「よしっ」と小さく呟く。
慣れたとは言いたくないのだが、メイド服姿の自分にだいぶ違和感や恥ずかしさを感じなくなってきた。一日目の接客もそつなくこなすことができたことによる自信によるものか。
それでも母親にこんな姿を見られたくないという気持ちもやはりあるので、少しだけ憂鬱な気分になっていた。
やがて職員室に向かった斗真も更衣室へと入ってきた。
「なぁなぁ。今日沙織さんって来る?」
隣のロッカーを開けて、制服をハンガーにかけながら斗真が尋ねてきた。
「来るよ。美樹さんは?」
「同じく」
美樹というのは斗真の母親の名前である。母さんと同い年で、小学校から仲が良い俺たちの影響か、二人も非常に仲が良い。
ちなみに美樹さんもこの青蘭高校の出身である。斗真が青蘭高校に合格したと聞いたときは跳ねて喜んでいたそうだ。息子が自分と同じ高校に入学するというのはすごく嬉しいことなのだろう。その気持ちは自分がそういった立場になってみないと分からないものなのだろうが。
「二人で来店してきたらどうするよ?」
「その席だけは絶対に対応したくないな」
美樹さんも斗真ラブの母親である。母さん一人でも不安なのに、一緒に喫茶店に入ってきたら……俺は思わず苦笑いを浮かべた。
前話に続いて短くてすみません!
最近色々と忙しく執筆の時間が取れなくて……
なんとか時間を作って執筆して参りますので応援よろしくお願いします。
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