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水族館にお出かけ

今回は少し短いです

「あちぃ……」


 日曜日。玄関を出るや否や、照りつけてくる太陽に手をかざしながら俺は言葉を漏らした。蝉の鳴く声が聞こえてきて、夏が来たのだと実感させられる。

 もう一週間後には夏休みに突入するため、高校では浮かれている生徒もちらほら見受けられた。


 約束からあっという間に二週間が経過して、今日は水族館に出かける日である。


 自分の服装が変ではないかと、振り返って確認する。


 ベージュのクロップドパンツに、白の半袖Vネック、その上から黒の七分袖ジャケットを羽織っていて黒のスニーカを履いている。できるだけ爽やかな印象を出そうと、髪も軽く整えている。


 アパートのエントランスへと向かうと、既に優奈の姿があった。


「おはようございます」


「おはよう。今日は髪縛っているんだな」


「暑いですからね。縛った方が涼しいんです」


 普段髪を下ろしている優奈だが、今日は髪を高い位置で結んでいてポニーテールにしている。体育祭のときにも似たような髪型であったことを思い出す。


「変じゃないですか?今日の服装……」


「いや、とても似合ってる。可愛いよ」


 膝下まで隠れた白色のフレアスカートに半袖のブラウス。その上からは涼しげな印象を与える水色のアウターを羽織っている。肩には小さなショルダーバッグがかけられていた。

 褒める俺を見て、優奈は少し頬を染める。


「その、良くんもかっこいいですよ」


「お世辞でもそう言ってもらえて安心した」


 俺はファッションセンスが壊滅的と言っていいほどである。一応ネットで調べたはいいものの、それが果たして似合うのかどうかは分からなかったので、俺はホッと息を漏らした。


「お世辞じゃなくて、本当にそう思っていますよ」


「そ、そうか」


 真正面からかっこいいと言われたことがないため、どう反応したらいいか分からなくなってしまう。もちろん褒められたことは素直に嬉しい。


「優奈。ご飯食べ終わったあとってどこか行きたいところってあるか?」


 今日は水族館に行って昼ご飯を食べる予定までは決まっているのだが、そのあとは未定である。

 水族館に行きたいというのは俺の要望であるが、そのあとは二人とも退屈しない場所を選びたいと思ったからだ。


「そうですね……カラオケとか?」


「カラオケか。久しく行っていないな」


「良くんの歌聴いてみたいです……どうでしょうか?」


「別にいいけど……俺あんまり歌上手くないぞ」

 

「カラオケは歌を楽しむ場ですから。わたしもどちらかといえばあまり得意ではないのでお互い様です」

 

 優奈の言っていることはもっともである。

 上手くないと言ってしまったのは、情けない姿を見られたくなかったからだろう。

 

「分かった。水族館行ってご飯食べたあと、カラオケでって流れで」


「はい、そうしましょう」


 一日の予定が無事に決まって、優奈ははにかんで見せた。


 身体を巡る血液が沸騰するような、熱くなる感じがする。それに釣られるかのように鼓動が少し早まる。無意識なのか意識してその笑みを見せているのか俺には分からないが、朝からそんな笑顔を見せられたら、今日アパートに帰るまで俺の心臓が果たして持つのだろうかと心配になる。


 だが、そんな表情を俺だけに見せてくれているという事実に、俺は嬉しくなった。


「そんじゃ行きますか。お姫様」


「はい。王子様」


 互いに学校で呼ばれたことのある二つ名を口にして、俺たちは笑うとアパートを出て、バス停へと向かい歩き出した。

お読みいただきありがとうございます。

ブクマ、評価等いただけたら嬉しいです。

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