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クリスマスパーティ

 帰ってきた俺たちは、荷物をそれぞれの家に置き軽く身支度を整えたあとに、再度いつもの場所に待ち合わせすることにした。


 俺は髪を軽くセットし直したくらいなので、大して時間は要することなく、ロビーの椅子に腰掛けて優奈を待っていた。


「すみません。遅くなりました」


 しばらくしたあとに、身支度を整えた優奈もロビーに姿を見せた。


 どうやら着替え直したようで、白のリブニットに紺青のロングスカートの組み合わせ。上からベージュのアウターを羽織っている。

 一緒に出かけていたときの可愛らしい甘いファッションとは正反対の引き締まったクールなコーデ。どちらも優奈の美しさを引き立てている。


「似合ってるな。その洋服」


「ありがとうございます」


 (俺ももうちょっとしっかりした服を着てった方がいいのか?)


 優奈は普段から身なりにはかなり気を配っていて、今も綺麗で上品な印象のコーデにナチュラルメイクを施している。

 

 俺も最低限の清潔感を出すために、グレーのスキニーパンツに白のモックネックニット、その上に黒のジャケットを羽織り同じく黒のシューズを履いている。

 正装で来なくていいと斗真は言っていたが、豪邸と呼ばれている東雲家のクリスマスパーティに参加するのだ。下手な格好で参加するわけにもいくまい。


「心配しなくても今の格好の良くんも素敵ですよ」


 と、俺の不安を掻き消すかのような天使の一声が投げかけられた。俺が自分の格好を見直している姿を見てそう声をかけたのだろう。


「おう。ありがとうな」


「行きましょうか。きっとみなさんも来ているでしょうし」


 そう言って優奈が手を差し出す。

 いつもは俺からだったので、逆な立場になるのは少し新鮮なような感じもする。けれども歩幅はいつも通り合わせて、東雲家へと向かった。

 

☆ ★ ☆


 東雲家へと辿り着いた俺たちは、柵門前のインターホンを鳴らした。


 (なんかもう凄いって言葉しか出てこないな)


 優奈は何度か訪れているのでもうあまり驚きはないだろうが、俺はこれが初見。辺り一面は東雲家の所有物らしく、豪邸の周りは門で囲まれていて、出入り口はこの柵門しかない。

 

 しばらくして柵門がゆっくりと開いて、俺たちは東雲家の敷地へと足を踏み入れる。

 天然芝はきちんと管理されていて、大きな池も見受けられる。もうこの時点で規模が違いすぎて、もはや笑えてくる。


「柿谷様、天野様、お待ちしておりました」


 玄関と思われる大きな扉を開けると、メイドらしき女性が俺たちを出迎えた。本物のメイドさんが着ているメイド服姿に感動を覚える一方で、美しい所作に目を奪われる。


 こちらです、と俺たちは階段を登り二階へ。シャンデリアやら普段目にかからないインテリアに視線を向けながらメイドさんの案内についていく。


「結月様、ご友人がお見えです」


 部屋のドアをノックしてそう言ったメイドさんが部屋の扉を開ける。


「いらっしゃい。これで全員揃ったの」


 この豪邸の令嬢である東雲さんが出迎えてくれる。どうやら俺たちが最後だったようだ。


「案内してくれてありがとう」

 

「ありがたいお言葉でございます。それではごゆっくりどうぞ」


 俺たちをここまで連れてきてくれたメイドさんが、最後に一礼すると背を向けてこの場から去っていった。

 この一場面を見るだけで、東雲さんが本当のお嬢様なんだと認識させられる。


「廊下は寒いでしょ。入って」


 案内された部屋は広々としていてクリスマスツリーやら飾り付けやら施されている。この人数でパーティをするのには十分すぎる広さだ。


「天ちゃん、その洋服お洒落だね」


「梨花さんもとても似合ってますよ」


「二人とも洋服ってどこのお店のやつ買ってるの?」


 優奈たちは早速、各々が着てきた服の話とそのお店のことで盛り上がりを見せる。

 

「あれ?秀隆と純也は?」


 上着を脱ぎながら俺は言った。

 東雲さんは全員だと言っていたが、この部屋に秀隆と純也の姿が見当たらない。


「二人はそれぞれ予定があるんだと」


「あー。なるほど」


 秀隆は同じバスケ部に彼女がいるんだった。今頃は仲良く一緒に過ごしているんだろう。

 純也の方は今年は奏さんと過ごすのだろうか。雰囲気が良さげなのはもう周知の事実だが、親しい関係になったまでは知らないので、今度聞いてみることにする。


「それで、プレゼントは持ってきたか?」


「あぁ、はいこれ」


 斗真に手渡したのは少し縦長なコンパクトな箱。これなら誰に当たってもそれなりにウケるだろうと思ったので、まぁ多分大丈夫だろう。


「それじゃあ全員集まったことだし、クリスマスパーティ始めるの。みんな今日は楽しんでいってねー」


 東雲さんのその一言で、クリスマスパーティが始まった。

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