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ハロウィン②

「カッキー。放課後なんだけど、優奈ちゃんの時間貰ってもいい?」


 休み時間、次の授業は移動教室のため必要なものを準備していたときに、東雲さんが俺の前に訪れてそう尋ねてきた。

 そして、その理由を問おうとしたのが分かっていたかのように、東雲さんは続けて言った。


「今日ハロウィンでしょ。さっきわたしの家にあるいろんなコスプレ衣装着てファッションショーとかお菓子食べて遊ぼうって話になったの」


「つまりハロウィンパーティってことか」


 俺の言葉に東雲さんは「そうなの」と頷いた。

 というか、ファッションショーできるくらいにコスプレ衣装があるってことが何よりの驚きなのだが。それも東雲家の財力が成せるものだと舌を巻く。


「だからカッキーと優奈ちゃんに特に予定がなければ、どうかな?」


「あーそうだな。まぁ俺としては夕飯前まで……七時前くらいまでに戻ってきてくれれば、全然いいよ」


 夕飯は俺が作る予定だし、買い出しも一人で事足りる。東雲さんに言ったように、夕飯の時間までに戻ってきてくれれば問題ない。

 それに話を聞く限りとても楽しそうなので、俺がそれを止める理由もなかった。


「ありがとう。カッキーもきっと喜んでくれるはずだから期待しておいてほしいの」


「期待?どういう意味だよ」


「お楽しみって意味なの」


 そう言い残した東雲さんは、次の授業の教室へと向かった。

 なぜ優奈たちがハロウィンパーティをするのに俺が期待をする必要があるのか、首を傾げたあと数秒ほど天井を見上げて考えたが、その理由は分からずじまい。


「良介。俺たちも早く行こうぜ。遅れちまう」


「おぉ。すぐ行く」


 気がつけば次の授業のチャイムまで三分を切っていて、斗真の呼びかけに返事をすると急いで準備をして次の授業へと向かった。


☆ ★ ☆


「良くん」


 放課後、帰り支度を済ませてスーパーへと向かおうとしたときに、優奈に名前を呼ばれて視線を向ける。


「ごめんなさい。買い物を任せることになってしまって」


「いいって。俺が優奈に任せることだって多々あるんだからさ」


 俺が優奈に、優奈が俺に向ける時間もそうだが、その他の時間も大切にすることはお互いが決めたことなので、こういうときはお互い様だ。

 申し訳なさげに告げたあと頭を下げた優奈に、俺はそう答えると、優奈の薄紅の口元が和らいだ。


「夕飯の食材の他に何か必要なものでもある?あったらついでに買っておくけど」


「いえ。特にないので大丈夫ですよ」


「分かった。それじゃあハロウィンパーティ楽しんできてな」


「はい。良くんも買い物よろしくお願いします」


 短い会話を交わしたあと、優奈は瀬尾さんたちの元へと向かった。俺もバックを担ぎ直したあと、教室を出て校門をくぐりスーパーへと向かった。




 スーパーで夕飯に必要な食材と日用品を買い揃えた俺は帰路についていた。


 案の定、今回も俺の順番というところでレジ打ちが顔馴染みのおばちゃんへ入れ替わり、会計を終えるまでの間話し相手になっていた。

 今回のようなことを除けば、基本は学校帰りに一緒に買い物をするので、優奈もしくは俺がいない場合は大抵おばちゃんの質問という牙が剥く。

 それにはもう随分と慣れたもので、俺は小さな笑みを浮かべたままその牙を上手くいなした。


「さて、と」


 自宅につくと、日用品の整理を行って購入した食材を取り出して夕飯の準備に取りかかる。

 ハロウィンというのもあって、今日は見た目にも少しこだわりを加えたものを作ろうと思っていたので、いつもよりも早めの時間の準備になる。


 ハロウィンといえばかぼちゃなので、今日はかぼちゃメインの夕食となる。スーパーも今日のかぼちゃの値段は少し安めになっていて助かった部分もあるのだが。


 優奈が思わずおかわりしたくなるような夕食を作るべく、エプロンを身につけた俺は腕を捲って、夕食の時間ちょうどに出来上がるように準備を始めた。


☆ ★ ☆


 (そろそろ優奈が戻ってくる時間だな)


 俺は置き時計に目を向ける。

 先ほど優奈から、帰宅とおよそ二十分ほどで到着するとの連絡を受けた。こっちもちょうど出来上がり間近だったのでタイミング的にはバッチリだろう。


 盛り付け用のお皿を用意していたところで鍵の施錠音が聞こえて、俺は優奈を出迎えるべく玄関へと足を運んだ。


「お邪魔します……」


「おぉ優奈。おかえ、り……」


 発した言葉の語尾が、消えかかるほど小さいものとなる。


 開けた扉の先には、数時間前までとはまるで違う格好をした、仮装姿の優奈が帰ってきたからだ。

お読みいただきありがとうございます。


気になる優奈の衣装は……

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