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帰宅後の

 三日目のコース別実習も無事終えて、こうして俺たちの二泊三日の修学旅行も幕を閉じた。

 そして――、


「疲れた……」


 帰宅するや否や、俺は持っていた荷物をそこら辺に放り投げて、クッションを手にしてソファーへとうつ伏せの状態で倒れ込んだ。


 慣れない長距離移動と自宅に着いた安心感も相まってか、今になって疲労感が波のように押し寄せてくる。


「斗真たちはなんであんなに元気なんだよ……」


 疲労感と共に強烈な睡魔が襲ってきて、欠伸混じりにそう呟くと、クッションを顔に当たるように置いて、そのまま埋め込んだ。


 三日目のコース別実習は午前で終えて昼一番に乗り込んだ帰りの新幹線。名物と言われている駅弁に舌鼓を打ったあと、しばらく身体を休めようと瞼を閉じようとしたのだが、それを隣と向かいの席に座っていた斗真や真司たちがそれを許してくれなかった。

 お菓子を挟みながら、真司のあの一件やたわいのない話。持ち込んできたゲームをするなど、結局着くまでの時間一睡もすることができずに疲労困憊状態の今に至る。


 (しばらくしたら優奈も来るって言ってたから、荷解き……その前に部屋の掃除もしないとだな。埃溜まってるだろうし。ていうかまず着がえねぇと……)


 あれこれ考えている今も、睡魔が俺の身体へと襲いかかり、意識が段々遠のいているのが分かる。


 (ちょっとだけ、ちょっとだけ寝るか)


 優奈も片付けや準備があるだろうし、そんなに早く来ることはないと思うので少しくらい目を瞑っても問題ないだろう。五分ほどで目を覚ましてからやることをやればいい。


 皺にならないようブレザーだけ椅子にかけて、ソファーに横になるとそのまま睡魔に身を委ねた。


☆ ★ ☆


「お邪魔します」


 修学旅行の荷解きや諸々の準備を終えた優奈が、良介の自宅の鍵を開けて玄関を上がる。


 明かりは灯っているが、部屋がやけに静かだったので、優奈は小首を傾げた。

 一緒に帰宅したし、部屋に上がる直前に良介の靴があることも確認したので、家にいることは確実。入浴中かとも一瞬考えた優奈だったが、シャワーを浴びている音が聞こえることもない。


 一抹の不安が横切りながらも、優奈はリビングへと足を運ぶ。

 そこには、毛布もかけず床で寝息を立てる良介の姿があった。


「良くん。寝ているのですか?」


 静かに歩み寄って、良介に近づく優奈。

 彼の目の前で静かに膝を突いて座り耳を近づけると、穏やかな寝息を立てていたので今頃は深い眠りの中なのだろう。


 優奈が片付けや身支度を整えてから良介の家に着くまでに、およそ三十分ほど経過している。

 この様子だと自宅に着いたあとすぐ眠りこけた感じだと、優奈は推測した。


「制服姿でしかも毛布もかけずに床で寝ちゃうなんて、身体を痛めますし風邪をひいてしまいますよ」


 優奈は少し呆れながらも仕方がないと言いたげに溜息混じりの言葉を吐いたあと、立ち上がって毛布を取りに向かった。

 良介の家のどこに何があるのか、優奈は既に把握済みで、毛布を取り出したあと気持ちよさそうに眠っている良介にかけた。


 本当ならソファーかベットに移動させたいのだが、良介を持ち上げるほどの筋力が優奈にあるわけがないので、せめてクッションを頭の下に置いて少しでも眠りを損なわないようにする。


「気持ちよさそうに寝ますね」


 そう呟いて良介の頭を撫でてやると、どことなく和らいだ表情へと変わる。毛布に頭を支えるクッションと睡眠を安定させるアイテムが支給されたおかげだろう。

 もちろんそれだけではないが、今はそれを口にする必要はない。


 起こそうという気は、優奈にはなかった。

 変に起こすのも少し気が引けたし、気持ちよさそうに眠る良介の顔を、独り占めしたかったから。


 まるで子供のように安心したように眠る良介の姿に、優奈の母性がくすぐられて穏やかで優しい眼差しを向けたあと、小さな欠伸をする。

 良介の寝姿に誘われてか、優奈にも眠気が襲いかかる。


「わたしも少しだけ……」


 本当は夕食の準備でもしようかと迷ったのだが、今は睡魔に身を預けることに決めた優奈はクッションを手にして、良介の隣で横になる。

 身体を痛めるかもしれないが、今は彼と一緒の眠りたいという意思の方が勝っていた。


 良介が使っている毛布を少し拝借して身体にかけたあと、良介の腕が自分を包み込むように誘導させる。

 思わず口元が緩んでしまうのを感じながら、優奈は良介の胸に顔を埋めて、そのまま目を閉じた。


 自分たちの家に帰ってきたという実感が、ようやく湧いたような気がした。

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