将来のこと
しばらく間が空いてしまいすみません!
ひと段落がついたのでまた投稿できると思います!
あ、いい忘れてましたが三日前誕生日でした。(だからなんだよって話)
「なぁ。優奈って将来のこととか考えてる?」
昼休みの屋上。
優奈が作ってくれた弁当に舌鼓を打ちながら優奈にそう尋ねた。
「き、急にどうしたんですか?」
「別に。言葉のままの意味だよ」
優奈が今時点で進路のことについてどれだけ考えているのか、あくまで参考にさせてもらえばと思ったのだ。
だが何故だろう。進路のことを聞いただけなのに、優奈の箸を動かす手が止まって驚いたような様子で声をあげながら目をパチパチさせると、頬を赤らめた。そんな優奈を見た俺は首を傾げながら、卵焼きを口に運んだ。
「……その……将来は……少し大きな一軒家に住みたいです……」
しばらくの間が空いたあと、優奈が小声で呟く。
「そうか。一軒家か………………ん?一軒家?」
「キッチンも広い方がいいです。良くんと一緒に料理するにはアパートのキッチンは少し狭いので……それにお風呂場も……」
「ゆ、優奈さん?」
「あとお庭が付いているのが望ましいですね。お家でも思いきり遊べる環境があったほうが楽しいですし……」
俺が想像していた返答とは遥か遠く、予想の斜めをいく。楽しそうな妄想を広げて微笑む彼女に、俺は困惑の目を向けることしかできなかった。
「えっと……優奈さん。俺が求めていたのは将来の夢といいますか……進路のことでして……そういう意味の将来のことを聞いたわけではないのですが……」
俺は質問の意図を優奈に伝える。
告げられた優奈の顔は途端に茹でたこのように真っ赤に染まって、
「し、進路のことならそう言ってください!将来のことなんて言うからわたしてっきり勘違いしちゃって……!」
「いや、あの……はい。すんません……」
「全くもう……」
そう言って、優奈は手で火照った顔を仰ぐ。そしてもう一度俺の方を見て「良くんのバカ……」と呟いた。
「でも驚いたな。優奈の中でまさかそこまでの未来想像図が出来上がっているなんて……」
夢のマイホームというのは誰にでも憧れはあるものだろう。もちろん俺にもゆくゆくは……という想いは密かに隠し持っている。もちろんそうなったときは隣には優奈がいてほしいとも思っている。
だが、優奈が言ったそうなってほしい未来の話は俺の何倍も膨らんでいて夢に溢れていたものだった。
キッチンとお風呂場の話はまだいい。確かに今のアパートのキッチンで優奈と二人で準備をするのは少し窮屈に感じていた部分も確かにあったので、同意している。
お風呂場に関しては優奈個人の意見だ。入浴は汚れと疲れを流してリラックスできる場所の一つであり、お風呂が大好きな優奈にとっては入浴スペースは広々とした空間を望んでいるのだろう。
俺もカタログなどでキッチンやお風呂場などを見て自分の好みのものを探したりするので、そんなことを考えたりするのは分かる。
「だって……わたしのこと手放すつもりはないんですよね?」
「そりゃ……まぁ……」
「じゃあ……早かれ遅かれいつかはそうなるんですから……今から考えてたっていいじゃないですか……」
「あ、はい……」
隠しても隠しきれない照れを滲ませた、どこか浮かれていると思わせる蕩けた瞳を浮かべながら優奈はそう言うので、俺はただ頷くことしかできない。
驚きはしたが、優奈がそんな将来の未来図を描いてくれていたことは素直に嬉しかった。一つ聞きたいのは優奈の中での俺はどんな風になっているのかということだが、今はそんなことよりも……
「そ、それで。進路のことですよね。わたしは服飾関係の仕事に就ければなって思ってます」
優奈は気を取り直すように咳払いをして、一呼吸置いたあとにそう言った。
「小さい頃から洋服は好きですし少なからずお母さんの影響もあると思うんですけど……」
「確か希美さんはデザイナーの仕事をしてるんだよな」
「はい。志望大学も服飾関係が学べる国立大学にしようと思ってるんです」
親の仕事している姿に憧れを持ってその背中を追いかける。それも将来なりたいものを決める一つのやり方なのかもしれない。
「そっか。優奈はもうそういうの考えてるんだな。俺は何も考えてないからな」
今はこうして隣にいるのに、ちゃんと先を見据えて行動している優奈の姿がとても遠く感じて、自分の表情が少し不安げなものに変わっていくのを感じる。
優奈はそんな俺の姿をしばらく見つめると、
「まだ高校二年生ですから。そんなに焦らなくてもこれから始めればいいんですよ」
そう言って、俺を安心させるかのように穏やかな笑みを見せる。
「……ん。そうする。ありがと」
俺も淡く微笑み返すと、それを見た優奈も安堵の息を漏らした。
お読みいただきありがとうございます。
良介や優奈だけでなく、他のみんなの将来の夢は一体なんなのでしょうかね。




