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男共のスポーツ祭り

男たちがただただ遊ぶ回です。

「おっしゃー!遊ぶぞー!」


「うっさ」


 目的地であるレジャー施設を前にして、真司は両手を突き上げてそう叫ぶと、隣に立っていた秀隆は両耳を塞いで顔を顰めて苦言を呈した。

 真司にはその言葉は届いていなかったようで、顔に楽しみだと書いてあるのではと思うほどの笑みを浮かべている。


「じゃあ早速中に入ろうぜ」


 レジャー施設の室内に入って、俺たちは受付を済ませる。高校生料金があるので通常の料金よりも少し少ない額で入ることができた。


「広いなー」


 目の前に広がる光景に純也は声をあげた。


 このレジャー施設はバッティングセンターやサッカーなどのアウトドアスポーツからボーリングや卓球などのインドアスポーツまでありとあらゆるスポーツで遊ぶことができる施設だ。

 もちろんフードコートやリラックスルーム、コミックコーナーもあって、一日あっても足りないほどに遊び尽くせる場所となっている。

 それだけの施設が揃っているので、その分建物の規模は大きくなんと八階建てだ。


 普段体験できないスポーツがこの施設に来るだけで体験できるのだから、この時期は特に足を運ぶ来客が多い。家族連れや恋人同士という姿もあるが、それ以上に同性の友達と遊びに来ている来客が多いような気がする。


 それに案外、女性の割合が多いというのが印象的だった。

 室内は空調設備もしっかり整っていて過ごしやすい。最近は温暖化の影響もあってか、五月上旬でも暑い日が続く時がある。二十度後半。稀に三十度に達する異常気象にあって、身体を動かそうにも暑くて外に出たくないという人がほとんどだ。


 そのような時にこのような施設があれば、暑さを気にすることもなくいろんなスポーツで遊ぶことができる。それはここに多くの人が足を運ぶのも納得と言えよう。


 優奈とも一度こういうところには行ってみたいという話をしたことがある。思い返してみれば、今までのデートはショッピングや食事、水族館などの展覧物を観に行くことがほとんどだ。

 散歩をすることはあるが、二人でスポーツデートみたいなことは一度もしたことはない。


 部活に所属こそしていないが、お互いスポーツをやるのは好きだしある程度はできる。機会が有れば、今度は優奈と一緒にここを訪れてみたいものだ。


「とりあえず色々見て回って気になったやつから遊んでこうぜ」


 俺たちは辺りを見渡しながら施設内を歩き始める。トランポリンでキャッキャと喜ぶ幼子や卓球を楽しむ男女の姿がある。

 

「やっぱ最初は身体動かしたいからさ。バスケやらない?」


 純也の歩く足が止まって指差した。そこにはバスケのコートがあった。だが広さは本来の半分、ハーフコートでゴールは一つしか設置されていない。


「いいけど……そしたら三対ニにならないか?」


「いいんじゃね?短時間でチーム変えていけばいいし、みんなもバスケはそこそこできるから問題ないじゃん」


「秀隆はハンデでシュートは利き手じゃない方な」


「俺、どっちの手でもシュート決めれるんだよね」


「マジかよ。それじゃあシュート禁止な」


「アホか。バスケの楽しさの半分以上削がれるわ。分かったよ。若干左手の方が成功率落ちるから左手でやるよ」


 なんてことを話しつつ、俺たちはコートに入って軽い準備運動をする。俺も優奈から貰ったネックレスを鞄の中にしまって、パーカーを腕まくりする。

 準備を済ませればチーム決めのじゃんけんを行い結果、俺と斗真と純也、真司と秀隆のチームになった。

 最初にしてはかなりバランスの良いチーム分けだろう。


「スタートは真司チームからな」


 斗真は秀隆にボールを手渡す。秀隆はその場で軽いドリブルを披露して見せる。右手左手と次々ボールを突く手を入れ替えて股下を抜く。レッグスルーという技だ。思わず「おっ」と感嘆の声を漏らした。


「手加減はしねーからな」


「もち。やるからにはガチだろ。なぁ二人とも」


「おう」


「うん」


「それじゃあいくぜ」


 まるで試合のような集中力を見せた秀隆のドリブルが試合開始(ティップオフ)の合図となった。


☆ ★ ☆


「うりゃ!」


 斗真の気合の入った声を発する。その声と共に放たれたボールは綺麗な放物線を描き、リングを掠めることなく綺麗なネット音を鳴らした。


「ナイッシュー!」


「イェーイ!」


 同じチームである斗真と真司はハイタッチをして大きな音を打ち鳴らす。


「じゃあちょっと休憩しようぜ。疲れた」


 ボールを拾った秀隆は深く息を吐いた。

 チームを変えながら時間を忘れてバスケをしていたので、気がつけば一時間経過していた。


 運動部でない俺と純也はもちろん、ガチガチの運動部の斗真たちも息を切らしていて、流れ出る汗が疲労を表していた。


 俺たちは自販機で飲み物を購入すると近くの休憩スペースにして腰を下ろした。


「ちょー楽しー!」


「てか純也のシュート成功率エグすぎ!」


「中学までバスケやってたからね」


「マジかよ!新情報!」


 真司たちは楽しそうに会話をしている中、俺はスポーツドリンクを凄い勢いで飲んでいた。口を離して口元を拭えば呼吸を整えていた。


「あー。めっちゃ疲れたなー」


 斗真がタオルで顔を拭きながら俺の隣に座ってジュースを口にする。そして二口ほど飲んだところで俺を見た。


「ところで良介。前の体育から思ったんだけど……体力落ちた?」


「……言うな」


「こうして改めて見ると……筋肉落ちてるよな。もしかして少し太った?」


「だから言うな……結構気にしてんだよ……」


 斗真のぐうの音も的確な意見に、俺はタオルで顔を覆う。


「まぁ天野さんの美味い料理を毎日食ってりゃな。そりゃそうなるって。一応運動はやってんだろ?」


「やってはいるが……中学ほどではない……」


「幸せ太りだな」


「うるせぇ」


 今年に入ってから、特に運動する時間がめっきり減っていた。優奈と一緒に過ごす時間に重きを置いていたからである。

 もちろん家でできる筋トレやランニングはできる範囲で行っているが、それ以上に優奈の作ったご飯が美味しくてつい食べすぎてしまい、運動量と食事量が割に合っていないのだ。


 いや、それは言い訳だ。

 肉体の維持も含めて、身体の管理はもう少し気をつけなければいけない。ランニングの距離だったり腕立て、腹筋の回数とかも中学の頃ぐらいまで戻す必要があるだろう。


「実は良介が太ったなんて知ったら天野さんショックだろうなー。もしかしたら嫌われたりなんて……」


「それは駄目だ。優奈に嫌われたくない」


 太った俺を引いたような目で見つめてくる優奈を想像して、俺は首を横に振る。


「嘘だよ嘘。あそこまで良介にぞっこんな天野さんがただ少し太ったからって嫌ったりはしないって」


「でも太った俺よりは痩せた俺の方がいいだろ?」


「そりゃまぁそうだろうな。そっちの方がカッコいいし、天野さんはあの頃の良介に惚れていたからな」


「……もっと運動するよ」


「おう。頑張れ」


 運動宣言をした俺に、斗真は優しく肩を叩いた。

お読みいただきありがとうございます。


良介ダイエット宣言!

さてさてどうなることやら。


この後ボーリングやダーツなど一日中この施設を満喫しました。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 純也はバスケのシュートが上手いならやってなかったのではなくやってたになるような?
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