ゴールデンウィークの予定
その日の放課後――
今日はバイトが休みのため俺たちは学校が終わればスーパーに立ち寄って、今帰ってきたところだった。バイトがある日は優奈に任せきりになってしまっていたので、こういう日ぐらいは手伝うのが筋である。
「優奈。まだ日にちは決まってないんだけどゴールデンウィークのどこかで斗真たちと遊びに行ってくるよ」
買ってきた食材を冷蔵庫に移動させながら、昼休みに斗真たちと話していたことを優奈に相談する。
「分かりました。詳しい日程が分かったらまた教えてください」
「おう。優奈も何か予定は決まってるのか?」
「梨花さんたちと遊びに行こうと話はしているんですけど、日程はまだ決まってないですね。良くんたちと同じです」
「でも……あの日だけは予定を空けておくよ」
あの日?と優奈は一瞬首を傾げたが、その言葉の意味を理解すると、「ありがとうございます」と蕩けたような笑顔を見せて、
「わたしも、良くんと一緒に過ごしたいです」
ゴールデンウィークの三連休、五月一日は優奈の誕生日である。その日は優奈と二人きりで過ごしたいと思い、斗真たちには事前にその日だけは断りを入れておいて、バイトもお休みを貰っている。
まぁ優奈がその日に既に友達と遊ぶ予定をたててしまっていたのなら話は変わっていたのだが、優奈がそう言ってくれたのだから、その日は優奈と一緒に過ごすことが決定した。
「それでさ。一つ聞きたいことあるんだけど」
「なんでしょうか?」
「誕プレ。何か欲しいものでもある?」
情けない話ではあるが、クリスマスプレゼントに指輪をプレゼントを上げてしまったことで、俺の中でかなりプレゼントのハードルが上がっているのを感じていた。
もちろんあの聖夜に指輪をプレゼントをしたことは後悔してないしするわけもない。だが指輪以上のもので優奈を満足させるものとなるとかなり限定される。
優奈のことだ。俺が選んだものならなんでも嬉しいと言ってくれるだろうが、優奈の誕生日プレゼントなのだから優奈に満足してもらいたいのが彼氏心であろう。
ならば優奈に欲しいものを聞いてそれをプレゼントするのが一番いいだろうと考えに辿り着いて、こうして聞いたのだ。
「そんなの別に気にしなくていいですよ」
「遠慮なんてしなくていい。俺が誕生日は優奈と一緒に過ごせたしチョコもらったしプレゼント貰ったし」
俺だけ貰って優奈には何もないというのは割に合わないだろう。恋人なのだから貰った分はお返ししたい。
「今答え出す必要はないよ。欲しいものが思いついたらそのとき言ってくれればいいからさ」
俺は淡い笑みを見せる。
まだ誕生日まで時間はあるのだから、じっくり考えてくれればそれでいい。
食材を冷蔵庫に全て移動させて、ゆっくりと立ち上がり腰を伸ばしていると、
「……ぃです……」
優奈が消え入りそうな声を発した。
頬には熱が宿っていて、少しモジモジしたような様子を見せて視線を逸らしていたが、
「り、良くんの時間が欲しいです」
「えっ」
「……駄目……ですか……?」
「いや、駄目じゃないんだが……」
上目遣いでそう言われたので、俺は思わずたじろいだ。反則級の破壊力を持っているのだから、あまりその目を向けないでほしい。
「むしろそんなことでいいのか?いつも一緒にいるのに……」
休日は予定がない限りは優奈と一日中一緒にいる。その時点で俺の時間を優奈にあげている。つまりこれまでと変わらない日常を過ごすというのが優奈が欲しているプレゼントということになる。
「わたしはそれが欲しいんです」
「そ、そうか」
優奈がそこまでいうのだったら俺は受け入れるだけだ。頷くと、優奈は嬉しそうに頬を緩ませる。
俺自身、優奈に俺の時間が欲しいと面向かって真っ直ぐに伝えられたのが、恥ずかしながらも心から喜びが湧き上がっていた。
「その日、お出かけに付き合ってもらってもいいですか?」
「いいよ。行きたいところでもあるのか?」
「はい。でも……それは当日までのお楽しみということで」
おそらく優奈の頭の中で一日のプランはある程度出来上がっているのだろう。 優奈の誕生日なのだから、その日は俺は優奈の行きたいところに着いていくと決めているので、口を出すようなことはしない。
「分かった。優奈からのお誘いデート、心から楽しみにしているよ」
「是非楽しみにしていてください」
甘くて優しい笑みを見せた優奈に、俺もまた穏やかな笑みを返す。
今から抱きしめたり頭を撫でたりすると、お互い歯止めが効かなくなって気づけば夕食の時間を越してしまうことがあるので、グッと堪えて俺たちは夕食の準備を始めるまでの間、課題をやり始めた。
お読みいただきありがとうございます。
優奈のお誕生日デート。
二人はどこに行くんでしょうかね?




