バレンタインのお返し
バレンタイン兼誕生日が終わってからは、まるであっという間に時が流れていった。三学期は期末テストと三年生の卒業式くらいしかない。その二つも既に終えているのだが。
期末テストは全員赤点を回避して、無事二年生になることが決定した。
卒業式はつい先日終えたばかりで、体育祭や文化祭でお世話になった島田先輩や綾瀬先輩や日比野先輩と軽く言葉を交わしていた。
三人とも無事第一志望の大学に進学することが決まったらしい。県外の大学であるため、四月からは一人暮らしをするそうだ。
島田先輩と綾瀬先輩は遠距離恋愛を続けるらしいのだが、日比野先輩は数ヶ月ほど前に彼氏と別れていたそうだ。それを聞きつけた真司は、五分に及ぶ交渉の末に連絡先を入手することができた。変なことをしてブロックされないことをただただ祈るばかりだ。
そんなこんながありながらもあとはこの三月を平和に過ごすだけである。
三年生が卒業して高校には一、二年生しか登校していない。
そんな静かな三月上旬。俺は頭を悩ませていた。
「良介。何をそんなに悩んでんだよ?」
俺の姿を見た斗真が不思議そうに尋ねてきた。
「バレンタインのお返しをな。どうしよっかなって」
優奈からは手作りのチョコレートケーキをいただいたのだ。こちらもそれ相応のものをお返ししなければ割に合わない。
だが、俺はお菓子作りはそこまで得意ではなく、優奈のようにケーキを焼いたりはできない。となると市販の何かを購入することになるのだが。
「俺はマカロンをプレゼントしよっかなって思ってるよ」
「可愛いな」
「梨花は昔からマカロン好きだしいいかなーって。天野さんの好きなお菓子でもあげればいいんじゃないか?」
「優奈の好きなやつか……」
そう言われても優奈は基本的にお菓子全般は好きであり、特別これが好きと言ったものが思い浮かばない。
「あー本当にどうしよー」
考えることを放棄して、俺は机に突っ伏した。
「この世の終わりみたいな顔すんなよ。天野さんなら良介から貰ったものならなんでも喜ぶって」
「それは分かってるけどさー」
優奈の性格は俺が一番分かっている。きっと優奈なら満面な笑顔で「ありがとうございます」と言うだろう。でもやはりお返しとして、釣り合ったものを返したい。
母さんも瀬尾さんも気にしなくていいといってくるので、こういった手のお返しというものをしたことがなく今回が初めてなのだ。
「クリスマスプレゼントと一緒。大事なのはそのプレゼントに込めた想いなんだよ。天野さんなら良介の想いだってちゃんと受け取ってくれるって」
斗真は続けて「男に大事なのは勇気と度胸だぞ」と笑いながら言ってくるので、俺は頭を再び回して優奈に渡すプレゼントを何にするか考えていた。
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