誕生日のサプライズ
今話は良介がてでこないため三人称で、短いです。
「石坂さん。良くんを見ませんでした?」
ある日の放課後。
斗真は教科書を鞄に閉まっていると、優奈に尋ねられた。
優奈は教室内を見渡すが、良介の姿は見当たらない。机に鞄がかけられているので帰っていないことは確定である。そもそも優奈に何も言わず先に帰るというのは良介の性格からしてまずありえないことである。
「良介ならついさっき先生に仕事頼まれて先生と一緒に職員室に向かったよ。もう少ししたら戻ってくるんじゃないかな」
「良くん。先生たちにも人気ですよね」
「成績は一位だし素直だし仕事頼めば嫌な顔せずにやってくれるし、それは人気はでるわな」
良介の真面目で温厚な性格は誰しもが惹かれるものがある。一時期は塞ぎ込んでしまいどこか素っ気ない態度を出してしまうことで周りとの距離を作っていたが、今となっては良介の周りにも徐々に人が集まるようになった。
小学校から良介のことを知っている斗真からしたら周りが良介の良さに気づいたことに嬉しさを覚えつつも、それが自分だけのものじゃなくなるような気がしてどこか寂しさも感じていた。
そんな良介の変わるきっかけになったのは間違いなく優奈の存在だ。
小さい頃から近くにいたが故に、斗真に見せることができない一面はあっただろう。高校で出会い、その距離を徐々に縮めていった彼女だからこそ、良介は誰にも見せないようにしていた顔を見せた。
一度は壊れかかった二人の仲だが、今となってはむしろその出来事があったからこそ二人は結ばれたのだ。
口にこそ出さないが、斗真は優奈には感謝している。だから斗真は思った。
――良介と付き合ってくれてありがとう。
「あ、そうだ。天野さんは良介の誕生日って知ってる?」
キャラじゃないことを言ったなと心の中にいる自分を振り払いながら斗真は優奈に尋ねてみる。
「はい。二月十四日。バレンタインの日ですよね」
良介の誕生日はスマホのカレンダー表にもメモ帳にも記録している。その日は良介の好物ばかりの夕食を振る舞おうと決めている優奈だ。
もちろんバレンタインなのだから、チョコレートだってとびきり美味しいものを作るつもりである。
「そうそう。でもあいつ自分の誕生日があまり好きじゃないんだよ。バレンタインの日と被ってるからって」
「わたしはむしろ特別な感じがしていいと思うんですけどね」
「まぁ今年のバレンタインと誕生日はあいつにとっては楽しいものになるんじゃない?天野さんもいるんだし」
「良くんに自分の誕生日のことを好きになってもらえるように頑張ります」
優奈は拳を作って意気込んだ様子を見せる。
「それでさ。明日学校に来た良介を盛大に驚かしてやろうと思ってんだよ。もう何人かには声かけてんだけど……」
「何をされるつもりなんですか?」
「良介には内緒な」
「はい……」
斗真は優奈にその内容を教えた。
斗真が考えているサプライズとは一体なんなのでしょうか。
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