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期末考査

 授業を終えて休み時間。

 数学の授業で分からないところがあったので、俺は先生に問題の解き方を聞きにいっていた。


「――分かりました。ありがとうございます」


 解き方を理解した俺は、先生に一礼して自身の机に向き合って、もう一度問題を解こうとしていた。


「良ちゃんよ。頑張りすぎじゃね?」


 隣で疲れたように椅子に身を預けて、腕をぶらんとさせている斗真が、俺の姿を見て目を丸くしながら尋ねてくる。


「いや、頑張らなきゃだろテスト範囲バカ広いし」


 当たり前だが、二学期の期末考査は一学期に比べてテストの難易度が上がっていて、それと同時にテスト範囲が一学期の倍以上に広いのだ。


 バイト先にもテスト週間に入ったことは伝えていて、俺と純也と奏さんは休みを貰っている。

 羽田さんにも「成績赤点取ったらバイト禁止だからね」と笑顔で辛辣なことを言われた。

 どうやら羽田さん自身、苦い思い出があるらしく俺たちにはそんな思いをしてほしくないと、テスト期間に入るたびにあえて厳しい言葉をかけているらしい。


 将来のことを考えている以上、バイト禁止になるのは死んでも避けたい。休み時間の一秒でも割ける時間があるのなら、勉強に充てたいのだ。


「でもなんだかんだ言って毎回一位取るんだよな。なんか効率いい勉強方法とかあんの?」


「ない。暗記してひたすら問題解き続ける。それしか知らん」


 楽に上位を取れる勉強方法を俺が知っていると思ったのだろう、微かな希望を抱いて尋ねてきた斗真だったが、俺はペンを走らせながらそれを速攻でぶった斬った。


「俺は一回やれば覚えられてなんでもできる天才型じゃないぞ」


 さっきように授業で分からないところだって当然あるし、優奈に解き方を教えてもらうことだってある。あとは量でカバーしているだけに過ぎない。


 世の中にはそう言った人間もいるだろうが、少なくとも俺はそちら側の人間ではない。効率の良いやり方をやったとしても今のような成績を維持できる自信は全くない。自信を持てるようになるまで数をこなす。それが中学時代から身につけた俺のやり方なのだ。


「泣きつかれる前に先に言っておく。今回の期末考査は斗真の面倒を見れるほど俺に余裕はない。自力でやるか瀬尾さんの力を頼ってくれ」


「毎回泣きついてくると思われていたなんて心外だな。俺だって学習してんだぜ。こう見えて一週間くらい前から自主勉強してんだよ」


 彼はフッと笑って見せる。その笑みには今までにない自信に満ち溢れていることを窺わせる。

 俺は思わず「ほう……」と驚きの声を上げる。


「斗真にしては珍しいな」


「まぁな」


「それで、順調に進んでるのか?」


「散々」


「駄目じゃん」


「どうしよ」


 数秒前までの自信は何処へやら。獣に追い詰められた子鹿のようにプルプルと震えている。その目は俺を訴えかれるように見つめてくる。


 俺はしばらく彼の顔を見つめて、やがて諦めたようにため息を漏らした。


「……分かったよ。その代わり、今回は俺もあまり余裕がない。優奈と瀬尾さんも同伴してもらおう。優奈も瀬尾さんもテスト一桁だし、みんなでやったほうがいい」


 今回の期末考査は二学期の成績に大きな影響を与える。テストの赤点は成績の赤点と思って差し支えない。

 斗真は大切な親友だ。成績赤点取って補習など受けてほしくない。


 だが俺も、一位の座は譲れないのだ。

 自分の勉強の時間も確保しつつ、斗真の勉強を見るとなれば人数は多いに越したことはない。

 それに俺も分からないところは聞くことができる。俺は文系全般が得意で、優奈は数学、瀬尾さんは化学が得意だ。


「でも今回は俺も余裕はないから、今まで以上に厳しくいくぞ」


 俺の本気度が伝わったのか、斗真はブルッと身震いするも「おう!」と威勢の良い声を上げた。

斗真はやればできる子なのに、勉強してもやる気が続かなくてズルズル先延ばしして、毎回あっぷあっぷになっているだけなんです。

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