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球技大会 

 天気は晴れ。空を占める雲の割合は少し多いような気もするが、太陽は隠れることなくこの場を照らす。

 今日はまた一段と冷えている。こういう時期ほど怪我をしやすいのでしっかり身体をほぐしておかないといけない。

 しかし、その寒さを吹き飛ばすほどの元気な声が、響き渡っていた。


 俺たちがいるのは青蘭高校のグラウンドーーではなく、ここからすぐ近くにある運動場にいた。

 そこにはソフトボールのコートが四つ存在して、ソフト部の大会にも使用されるらしい。今日は青蘭高校が一日その運動場を貸し切ったそうだ。


 男女比の関係上、二クラスで合同のチームもあるらしくチーム数は十六。それを四つのブロックに分けて総当たり戦を行って、一位のチーム同士で準決勝、決勝を行う。


 俺たちは第二試合目のため、談笑を交わしながら一試合目を見ていた。


「さみぃな」  


 隣で試合を見ていた斗真は鼻をすすり、身体を震わせていた。


「その格好じゃ仕方ねぇよ」


 彼の言葉に腕を組んで肩を縮こまらせながら俺は答える。


 俺の格好は長袖長ズボン。寒さ対策用に長ズボンの下には半ズボンとくるぶしまで隠れたスパッツを履いているがそれでも寒い。対して斗真は長袖半ズボン姿。おそらく下には半ズボンと同じくらいの丈のあるスパッツは履いているだろうが、靴下を除いて膝から下は完全に露出している。


「長ズボンじゃ動きにくいし」


「試合のときは脱ぐさ。今は身体動かしてないから履いてんの」


 試合が始まれば身体を動かすので当然暑くなる。それまでは身体を冷やさないようにするために履いているというわけだ。


「良介。今貸してって言ったら……」


「嫌だよ」


「じゃあそこら辺走ろうぜ。身体温める」


「まぁそれぐらいなら」


 俺たちは近くのランニングコースまで向かい、ストレッチをしてから軽く走り始める。試合は時間制限制でまだ始まったばかりなので、しばらく走ってても問題ないだろう。


「真司と秀隆のチームは何処でやってんだろうな」


「俺らと反対側のグラウンドで試合やってる」


 俺たちは彼らのチームはとは違うブロックだ。お互い勝ち続ければもしかしたら戦えるかもな。


「偵察も兼ねて、応援行かね?」


「いいよ」


 俺たちは少し離れたグラウンドまで、ランニングついでに向かった。


「おっ。頑張ってんな」


 グラウンドに辿り着き視線を送ると、真司と秀隆のチームは守備についていた。野球部の真司は遊撃手(ショート)。秀隆は投手(ピッチャー)をやっている。


 貼ってある組み合わせ表を確認すると、彼らの対戦相手は二年生のチームらしく、現時点では真司たちのチームが勝っていた。

 

 ボールを捉えた音が鳴る。そのボールの真司のいるショートへと飛んでいき、彼は軽快なグラブ捌きでアウトにした。


「ヒュー。さすがは野球部。動きが違うねぇ」


 攻守交代でベンチへと戻ってくる二人が、俺たちがいることに気がついてこちらに駆け寄ってくる。


「応援に来てくれたのか?」


「それと偵察」


「ヤベヤベ。情報見せないようにしないと」


「それにしても真司たちのチーム強いな」


「ウチのクラスの男子は大半が運動部だからな。普通に上手いし」


 野球部である真司はもちろん、バスケ部の秀隆。名前は知らないが、体格的に運動していますという生徒がベンチには多く見受けられる。


「それに……俺たちは絶対に勝たなきゃいけねぇんだ……女子の応援のその背に受けるために!俺たちのチームスローガンは女子にカッコいいところを見せる!だからな」


「あ、やっぱそっち目的なのね」


 頑張る目標があるのはいいことだが、それを口に出したりスローガンにするのはいかがなものかと苦笑する。


「あ、打った」


 斗真が言ってグラウンドに意識を向けると、真司たちのチームの生徒がヒットを打ったのだ。それに対して物凄い盛り上がりを見せる。まるでお祭り騒ぎだ。


「まぁスローガンはあれだけど、みんな上手だから。もし戦うことになったらお手柔らかに頼むよ」


「おう」


 秀隆は笑顔を向けると、バットを持って打席に入る準備を始める。真司もベンチに戻っては仲間を鼓舞していた。


 俺たちは真司たちの試合をしばらく眺めてから、試合会場であるコートに戻った。


 ちなみに真司たちのチームは勝ったそうだ。

お読みいただきありがとうございます。

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