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避けてた理由

昨日更新できなくてすみません!

 教室に戻ってからの優奈の態度はどこかよそよそしさを感じた。

 話しかけようと近寄れば距離を取るかのように平野さんと東雲さんの方に向かったり、授業中に消しゴムを落とした優奈と合って微笑みを浮かべると、いつもは微笑み返してくれるのに今日はすぐに黒板の方へと視線を戻してしまった。


 こうして避けられてしまっては、確認のしょうがない。そもそもなぜ優奈は俺を急に避けるようになったのか。


 (何か嫌われるようなことでもしたか?)

 

 過去の俺が何かやらかしたのではないかと思い、ノートを取りながら過去を遡っていく。

 少なくとも昼休みまではいつも通り接してくれていたので、何かあったとしたら午後の授業からだろう。


 だが、午後の最初の授業は体育で優奈たちは体育館で授業を行なっていたので、グラウンドにいた俺と接する時間などあるわけがない。だから俺が優奈に嫌われるような行動をとることなど不可能なのだ。

 考えれば考えるほど、なぜ優奈が俺を避けているのかが分からなくなり、俺は小さくため息を漏らして、意識を授業へと向けた。


☆ ★ ☆


「優奈。帰ろうぜ」


 帰り支度を済ませている彼女の席まで歩み寄って、言った。


 優奈が俺を避けるのなら、避けられる前に声をかければいいだけのことだ。

 それになぜ急に俺を避けるようになったのか、その理由だって知りたかった。


 そのためにも一緒に帰りたかったのだが、今の優奈がそれを了承してくれない限りは、叶わないことなのだが……


 美しい瞳で俺の顔を捉えると、少し視線を落とせば顔を少し赤くする。


「……分かりました。もう少しだけ待っててください」


 しばらくの沈黙のち、優奈は口を開く。

 拒否されると思っていたので、内心ガッツポーズを作って喜んでいたのだが、俺は表情に出さないようにして「分かった」とだけ言って、優奈の準備が終えるまで、教室で待つことにした。


 校門を出た俺たちは、帰り道を歩いていた。

 驚いたのは、優奈の方から手を繋いできたことだった。もちろん嬉しいのだが、それと同時に俺の中で疑問が生じた。


 (優奈は俺のことを嫌っていないのか?)


 嫌いな人間と手を繋ぎたいと思う者などいない。つまり少なくとも優奈は、現段階では俺のことを嫌っていないと言える。だとしたらなぜ優奈は俺のことを避けていたのか。

 それだけはどうしても確認しなければならない。


「優奈。俺、何か嫌われるようなことしたかな?」


「えっ?」


 立ち止まってそう尋ねると、優奈は少し驚いたようにクリーム色の瞳を大きく開いて俺を見た。


「もし俺が自覚もなしに優奈を怒らせてしまっていたのなら、傷つけてしまっていたのならごめん。悪いところがあったなら直すから言ってくれ」


 それで優奈がいつも通り接してくれるようになるのなら、時間がかかっても直すように努力はするつもりだ。

 だがーー


「わたし、特に怒ったりなんてしていないですけど……」


「……え?」


 優奈の口から発せられたのは、予想とは全く違う返答だった。


「でも俺が話しかけようとしたら避けてたし、顔合わせてもすぐに逸らすし……」


 優奈の言葉に安堵する俺と、納得していない俺がいた。怒ってもいないのならなぜ俺を避けていたのか。その理由を聞くまでは、このモヤモヤとした気持ちが解消されることはないだろう。


「そ、それはその……廊下ですれ違ったとき……」


「あぁ、斗真が言ってたな。目瞑ってたから分からなかったけど」


「良くんが汗を拭ったときにその……腹筋がチラッて見えて……」


「腹筋?」


 優奈は俺の顔を直視できないようで、白い肌を赤くしてキョロキョロと目を逸らしながらコクリと頷く。


「凄いカッコよく見えたと同時に恥ずかしくなって……良くんを見たら思い出してしまって、どうしても……」


「別に俺が嫌いで目を逸らしたり避けてたってわけじゃないんだな?」


「もちろんです。わたしが良くんのこと嫌いになるわけないじゃないですか」


 彼女の口からその言葉を聞いた瞬間、「よ、良かった……」と気が抜けてしまい、思わず膝に手をついた。家だったら間違いなく膝から崩れ落ちていたと思うが、路上であるためなんとか耐える。


「何か優奈に嫌われるようなことしたのかなって

結構不安になってたから本当に良かった……」


「ご、ごめんなさい。わたしが紛らわしい態度をとってしまったばかりに良くんに不安な思いをさせて……」


「いや、俺の思い過ごしだったから大丈夫。それにしても……」


 膝に置いていた手を自身の腹部に当てて触る。

 黒すぎずも白すぎない肌に引き締まったお腹には縦にスッとラインが入っている。

 運動部に所属していない割には無駄な脂肪がなく筋肉質な身体つきで、真司や秀隆にもかなり驚かれていたのを思い出す。


 それでも標準くらいだろうと思っていたのだが、優奈にカッコいいと言われるとこれまで鍛えてきた甲斐があったと、非常に嬉しく思った。


「まぁ……褒めてくれてありがとう」


「いえ……」


 流石にこれ以上の立ち話はなんだと思い、俺たちは再び歩みを進める。


「そ、そんなにカッコ良かったか?」


「は、はい……」


「でも体育祭のときに一度見せてたと思うんだけど……」


「あのときは遠目でしか見れなかったですから……今日初めて間近で見て、凄くドキドキしてしまいました……」


 優奈は俯きながら、ボソッと呟く。

 好きな人の身体を見るというのは、それだけ意識してしまうということなのだろう。

 

「まぁ……徐々に見慣れてもらわないと困るんだけどな。プールとか海とか行けないし」


 恋人ができたからにはやってみたかった夏場での海やプールでのデート。水着姿なので俺は上半身は何も身につけていない状態になる。時間はまだたっぷりあるので、焦らずに慣れていってもらえばいいのだが。


「が、頑張ります……あ、あと良くん。一ついいですか?」


「ん?」


「良くんの腹筋……今度また……見たいです……」


 俺を見上げるように見つめては、可愛らしく横に首を傾げて尋ねてくる。自分でも恥ずかしいことを言っていることを自覚してか、今日で一番顔を赤くしていた。


「……うん。まぁ……機会があれば……」


 自分の腹部を見せるというのも中々恥ずかしい行為ではあるが、減るものでもないし何より好きな人が自分のここが好きと言ってくれたことが嬉しくて、俺は照れを隠しながら、言葉を紡いで言った。

お読みいただきありがとうございます。

ブクマ、評価等いただけたら嬉しいです。

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