恋人として初めての登校
月曜日は一週間の中で一番憂鬱な日と言われる。
ため息を漏らし、重い足取りで学校や会社へ向かうものがほとんどを占めているだろう。
実際、俺も先週まではそうだったのだから。
だが今は、その月曜日が少し好きになった。
優奈と無事付き合うことができ、今日が恋人として初めての登校である。
いつもよりも三十分早く目が覚めた俺は、柄にもなく鼻歌混じりに朝食を済ませて歯を磨き、今は洗面台で髪型を確認していた。
爽やかなシトラスの香りがするウォーターを振り撒いて髪型をセットする。
優奈の隣を歩くのだ。少しでも恥ずかしくない格好でありたいというのが当然の考えだろう。
今までも優奈と一緒に登校していたのだが、恋人としていざ学校へ向かうとなると、変に意識をしてしまい思わず口角が上がってしまう。
ネクタイを締め、クリーニングに出していたブレザーに袖を通す。この時期はブレザーの着用を選べるのだが、朝は冷え込みやすいので俺はブレザーを着ることにしている。
登校前の部屋の掃除も済ませてしまいやることがなくなってしまった俺は、待ち合わせ時刻の二十分前に家を出た。
すれ違う住人たちと軽く挨拶を交わしながら、待ち合わせ場所へと向かう。
辿り着くと、俺は驚きを隠せないでいた。
待ち合わせ時間の二十分前で、俺よりも早く優奈がその場にいたのだから。
「良くん。おはようございます」
俺に気がついた優奈は、天使のような柔らかな笑顔を向けて挨拶をした。「可愛い」と思わず言葉を漏らしそうになったのだが、グッと堪える。
「おはよう優奈。やけに早いな」
「いつもよりだいぶ早く目が覚めてしまって思わず……良くんの方こそ……」
「まぁ俺も似たようなものだ」
この状況に浮かれているのは俺だけではなかったようだ。安心したと同時に、優奈も同じことを思ってくれていたことが嬉しく感じた。
「その……どうします?もう学校に行きますか?だいぶ早く着きますけど……」
「そうだな……」
「その、もし良かったら時間になるまでわたしの部屋でゆっくりしませんか?学校だと……あまり甘えることができないですし、少しでも良くんと二人きりでいたいですから……」
身体をもじもじさせながら、優奈からとても魅力的な提案が出された。全く、最初に出会ったときのあのつんけんした優奈はどこへ行ってしまったのやら。
「んー。学校までゆっくり歩いていこうか。そしたら多少は時間は潰せるだろ」
本当ならば優奈の案に乗っかりたいのが本望なのだが、そうしてしまった場合、時間を忘れて二人の空間を楽しんでしまう可能性がある。
遅刻をしてしまっては元も子もない。俺たちは学生であり本分は勉学なのだ。
案を却下され、優奈はあからさまにシュンとする。その姿も可愛くて、セットしてある髪型を崩さぬように、俺は優しく頭を撫でる。
「学校から帰ってきたらその分甘えてもいいから、な?」
「……絶対ですよ……?」
「絶対」
そう言うと、優奈はたちまち表情を緩ませた。
うん。俺の彼女は今日も可愛い。
「良くん」
「ん?」
「手。握ってもいい……?」
優奈が不安そうな表情を浮かべながら尋ねてくる。さっきの案を却下したこともあり、俺がまた突っぱねると思っているのだろうか。
「あぁ、俺もそうしたかった」
そんなわけない。こんな可愛いお願いを断るわけがなかった。スッと左手を出せば、優奈は右手を出して手を握りしめる。
最初はただ繋いでいただけの手が、優奈の指が侵入してきて互いと互いの指が絡み合う。
「恋人繋ぎ……ですよ……」
優奈が繋いでいた手を俺に見えるように持ち上げてはにかんで見せる。朝のうちにどれだけ「可愛い」と心の中で言わせれば気が済むのだろう。
俺も穏やかな笑みを見せて、小さくて大切な手を決して離さぬように強く握りしめた。
※二人は自分たちの世界に入ってしまい、住人が自分たちのことを見ていることに気がついていません。
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