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八八冒険記  作者: 夢形えいて
序章
7/51

旅立ち(sideマナブ) 07

 「会長、ちょっとそれを見せてもらってもいいですか。」

 シュンは、俺から御朱印帳を受け取ると改めて、中身を確認しだした。

 御朱印帳の表紙には、中心の円を囲むように8つの円が配置されていた。そのどの円も中に何も描かれておらず、シンプルなデザインであった。

 「この表紙の〇がいくつも並んでいるのはなんなんでしょうね。真ん中に『八十八』って書いてあるのが、この御朱印帳を『八八』って呼んでる理由なんでしょうか。」

 表紙の裏には日本地図が描かれていた。その次のページには上部に近畿の地図が描かれており、その下に神社のような名称が並んでいた。神社名の横には番号がふってあり、11番のみ空白となっていた。

 「表紙の裏には、日本地図が載っていて8色に分けられているから、これが、制覇する各エリアを示しているのかもしれませんね。でも中のページは一部のページしか、神社の名前が書かれてないですね。ぱっと見では、載っている神社とかの場所は京都とか大阪とかみたいですが、知らない名前も含まれてますね。」

 シュンは、御朱印帳の中に手がかりがないか、全ページをくまなく調べていた。

 「大阪や京都か。そういえば、祈祷スキル使いが近畿にいるって噂があるんだったな。この御朱印帳の神社を回りながら、祈祷スキル持ちを探すってのはどうだ。」

 「ヨシ先輩。それいいですね。それなら、ここに載っている神社を回ってアヤさんの回復を祈願しながら、祈祷スキル使いを探せますね。」

 ヨシの意見に俺たちは、頷いて賛成した。

 「そうと決まれば、今日はこれで解散だ。明日から早速、動き出すぞ。」

 俺は、これで決定というように宣言した。

 「会長、分かりました。シュン、必ずアヤちゃんの元気な顔を取り戻そうな。」

 「はい、ありがとうございます。」 

 「シュンさん、大丈夫ですよ。こっちには神様が味方してるんですから。」

 「はは、そうだな。この御朱印帳が祈祷スキル使いまで導いてくれることを期待してるよ。」

 皆の顔に少し笑顔が戻っていたのをみて、安心したヨシがそう言った時、小さくキューと音が聞こえた。

 「少し落ち着いたからか、何かお腹空いてきました。」

 みんながその音の方を見るとシュンが恥ずかしそうな顔をしていた。 

 「珍しいなシュン、ユウみたいなこと言うなんて。」

 少し照れているシュンを茶化すようにヨシが言った。

 「まぁ、シュンは、昼から何も食べてないんだから仕方ないさ。今日は遅いし、みんな晩 御飯を食べていってくれ。ありあわせで悪いが何か作ろうか。」

 俺は席から立ち上がると、冷蔵庫に向かい中から野菜や肉を取り出していった。

 「こんなこともあろうかと、鶏ハムを作ってきたんです。良かったらどうぞ。」

 ユウもテーブルの近くに置いた自分のリュックからタッパーを取り出した。

 「こんなことってどんなことやねん。」

 取り出したタッパーをテーブルに載せるユウにヨシが突っ込むように言うと、シュンも笑っていた。

 「鶏ハムがあるなら、こっちのができるまでに三人で先に始めててくれ。せっかくだし、あのワインを開けよう。」

 俺は、冷蔵庫の横にある個人用の小さいワインセラーに向かい、中から赤ワインのボトルを取り出し、テーブルに置いた。ヨシにワインを任せキッチンに戻り、野菜や肉を切り始めた。テーブルに置かれたそのワインをヨシが嬉しそうに見ていた。

 「美味しそうなワインですね、会長。早速飲ませてもらいます!」

 ヨシは、椅子から立ち上がり、食器棚に向かった。

 「ヨシ先輩、僕がやります。」

  シュンが椅子から立ち上がりかけると、ユウが止めた。

 「シュンさんは疲れてるんだから座っててください。準備は僕らがやりますよ。」

 ヨシに続きユウも食器棚に向かった。ヨシとユウは食器棚から取り出したグラスやお皿、箸を並べ、椅子に座った。

 「すごく良い匂いがしますね。」

 ユウは、テーブルの準備ができると俺の方を振り返った。俺が切った野菜と肉をフライパンで炒め始めると、部屋に香ばしい美味しそうな匂いが広がっていった。

 「さぁできたぞ。簡単な野菜炒めだが。」

 「いや、すごく美味しそうですよ。会長」

 ユウが早く食べたいとばかりの眼差しをしていた。俺は出来たばかりの野菜炒めをのせた皿をテーブルに置き、椅子に座った。ヨシがそれぞれのグラスにワインを注いだ。俺がグラスを持ち上げると、あとの三人も続いてグラスを持ち上げた。

 「アヤちゃんのことが心配だが、俺らには御朱印帳がある。謎は多いが、やるべきことは 決まった。アヤちゃんのためにも頑張ろう!、乾杯!」

 「「「乾杯」」」

-----------------------------------------------------------    

 こうして、謎の御朱印帳をめぐる俺たちの冒険の旅が始まった。ごく普通の大学生だった若者たちが、この国の危機を救うことになるとは、この時はまだ誰も知るよしのないことである。

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