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八八冒険記  作者: 夢形えいて
序章
4/51

旅立ち(sideマナブ) 04

 「今日も早いな。みんな授業はちゃんと受けてるのか。」

 授業が終わりいつも通り部室に行くと、ヨシ、シュン、ユウの3人が麻雀をしていた。

 「大丈夫ですよ。今日はたまたま僕とユウの講義が午前中だけだったんです。」

 ツモ切りをしたシュンが、卓上の捨て牌を見ながら答えた。

 「俺は、まぁ講義が自主的な休講ってことで。」

 いい手が入っているのか、ヨシは、手牌を見つめたまま、答えた。

 「そんな事してるとヨシも俺みたいに大学の主まっしぐらになるぞ。」

 「ちゃんと選んで自主休講にしてるから大丈夫ですよ。」

 俺の心配をよそに、ヨシは次に何を切るのかの方が大事なようだ。

 三人とも終わるまで話をする雰囲気でもないので、俺は、しばらく待っておくことにした。

 「会長、今日もいい天気ですね。」

 俺が鞄を置いて椅子に座ると、手が良いのかユウが機嫌良さそうに話かけてきた。

 「そうだな。ユウ、いい感じみたいじゃないか。ところで、今日は、ちょっとみんなに相談したいことがあるんだ。その半荘が終わったら、少し時間をもらえないか。」

 俺は、ユウの手を見ながら三人に声をかけた。

 「わかりました。」

 三人とも麻雀に集中しつつも一応、返事をしてくれた。待つ間は、この勝負の行方を楽しもうと割り切り、冷蔵庫からビールを取り出し飲みながら観戦することにした。

 「リーチ。シュン、昨日はあの後、どこに行ってたんだ?」

 ヨシは、そっと点棒を卓に置いた。

 「アヤの買い物に付き合わされただけですよ。たぶん、今日も顔出すと思いますよ。」

 シュンは、ヨシの会話に付き合いながら、真剣に待ちを読みはじめた。

 「ヨシ先輩、さりげなくリーチしてるじゃないですか。話でごまかさないでくださいね。」

 ユウは、自分の手を崩したくないのか、一発を勝負するか悩んでいる様子だった。

 「ばれたか。まぁ安い手なんで仕方なくだよ。」

 シュンは、結局、一発を警戒して現物を切ることにしたようだ。一方のユウは、勝負することにしたのか危険な牌を切ったが、無事に通ったようでホッとした様子であった。 

 「アヤは昨日も美味しそうな肴を買ってたんで、今日、持ってくると思いますよ。」

 シュンも一発を凌げたので、少し余裕を取り戻していた。

 「そうか、じゃあ、この勝負が終わったら、飲みながらアヤちゃんを待っとこうか。」

 ヨシも一発を積もれなかったことで、気が抜けたのか、終わった後が気になるようだった。

 「勝負に関係ない俺は一足先に始めてるよ。」 

 俺は、誰にともなくそう呟き、ビールを口にした。

 「今日は、ツイてましたよ。まさか、最後に倍満あがって逆転できるなんて思わなかったです!」

 テーブルの上の麻雀牌を片付けた後、三人は思い思いに好きなものを飲みながら、先ほどの勝負の話をしていた。 

 「結局、最後はユウの一人勝ちやったなぁ。ところで、アヤちゃん遅いな。もう授業は 終わってる時間やんなぁ。」

 ヨシは、悔しそうな顔をしながら、ハイボールを飲んでいた。

 「そうですね、友人とお茶でもしてるのかもしれませんね。ちょっと連絡してみます。」

 シュンは、飲んでいたチューハイをテーブルに置くと、携帯を取り出して、アヤちゃんに電話をした。 

 「あれ?出ないなぁ。今日は、何もないって言ってたのに。」

 呼び出しが続く携帯を持ちながら、シュンは心配そうな顔をしていた。

 「友達としゃべってるんじゃないか。」

 シュンの心配性を知っているヨシは、安心させるように声をかけた。

 「そうですね、でも、ちょっと気になるので、講義をしてた教室まで見に行ってきます。」

 シュンは携帯を閉じると慌ただしく部室を出ていった。

 「シュンは、あいかわず心配性だなぁ」

 「ヨシ先輩、シュンはそれだけアヤさんを大切にしてるってことですよ。」

 ユウも少し気になるのか、心配そうにシュンが出ていった扉を見つめていた。 

 「そうだな。あ、会長、相談したいことってのは何ですか。」

 ヨシは、この空気を変えたかったのか、おもむろに俺に話をふってきた。

 「俺もアヤちゃんのことが気になるし、また、みんなが揃った時に話をするよ。」

 俺もなにか嫌な予感がして、シュンが出ていった扉を見つめていた。

 「分かりました。じゃあ今日のところはこれで解散しましょうか。」 

 ヨシも、本心では気になっていたのか、少し心配そうな顔をしていた。

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