中々進まない外周探索
「しばらく外周の未開地を探索して分かったんだ。」
「なによ?」
「探索が中々進まないな。」
もちろんルナがスイーツハントをしているというのもあったが、それ以外の問題が俺たちの探索を阻んでいた。
魔物の数が多いのだ。
しかも魔物のボス率も高い。
魔の森で修業をした自信があったが、ここの魔物は魔の森より強い者が多い。
「特に熊のレベルとボス率が異様に高いよな。」
「ですがレベルの上りも良いです。」
「レベルアップは順調だよ。ウイン以外はね。」
俺はオールラウンダーのジョブになってから中々レベルが上がらない。
「また熊が居るな。1割以上がボスクラスだぞ!」
俺たちはハイペースで魔物を狩った。
「戦士レベル100になりました!」
「おめでとう。」
「やったわね。」
「これでルナもウインの激しいプレイについてこれるね。」
」
「次はどのジョブにするか迷っています。」
「どれとどれで迷ってるんだ?」
「治癒士・魔法使い・運び屋です。」
ルナはMPを使うことがあまりないので、治癒士と魔法使いは悪くない選択だと思う。近接戦闘以外のスキルは魅力的だ。だが、
「運び屋がおすすめだな。ストレージを使えるようになると、ポーションを大量に入れて置ける。荷物運びと回復の両方が出来るぞ。治癒士と魔法使いはその次の方が良いだろう。」
「うーん。魔法使いも捨てがたいです。」
「確かに魔法使いになれば遠近両方の攻撃が出来て火力はアップするけど、今このパーティーはベリーを入れて3人が魔法攻撃持ちだ。でもストレージ持ちは俺一人だけだからもう一人いてくれた方が助かる。」
・・・・・
ルナはしばらく考え込んでいた。
俺は邪魔しないようにそっとしながら奥へと歩く。
「分かりました。運び屋にします。」
ルナのレベルはどんどん上がっていった。
外周探索を続けていると、嫌な気配がした。
「まずい!後ろに下がるぞ!」
「何よ?」
「下がれ!名前持ちかもしれない!」
名前持ちの単語を聞いた瞬間、全員が素早く後ろに下がった。
「熊の魔物だが、かなり強い反応だった。」
「バグズとどっちが強いかわかるかい?」
「反応は同じくらいだった。どっちが強いかはわからない。」
「放置しましょう。」
ルナは素早く判断をした。
「僕もルナの意見に賛成だよ。」
「俺としてはこのまま放置したくないな。危ないのはあるけどな。」
「私も撤退したいわ!」
「ウイン、君は生き残るかもしれないけど、僕たちは死ぬだろうね。ずっと放置するわけじゃないんだ。外周探索が終わってからゆっくり決めても遅くはないよ。」
「私も外周探索が終わってもっと強くなってから挑みたいです。それに今やっているのは外周の探索です。すべての魔物を倒す必要はありません。」
確かに、みんなを守りながら戦いきれる自信は無いな。
ここで無理をする必要もない。
魔物を狩りながら探索を進める目的は、みんなのレベルアップなのだ。
名前持ちとの戦闘でリスクを取る必要もない。
それにもし名前持ちなら倒してからが厄介だ。
「分かった。これからも強い反応が出たら放置する方向で行こう。」
「それがいいわ。」
俺たちは強い反応の魔物を避けて魔物を倒していた。
だが、ルナが騒ぎ出した。
「あ、あれは!ビックぴよです!ビックぴよの産む卵は大きく、味が濃厚で貴重です。卵はお菓子作りには欠かせない材料です。手に入れるべきです!」
卵が大きいけどめったに出回らないのか?ルナの言う通りにしよう。
いつもは天使のようなルナだが、スイーツの事になると周りが見えなくなるのだ。
「手に入れるのは良いんだけど、卵ってビックぴよの腹の中にあるのか?それとも産んだのをもらうのか?」
「卵は産んだものをもらいましょう。ビックぴよの生息地中心に卵を守るための護衛がいるはずです。そこを強襲します!」
「分かったけど、まずは周りのビックぴよをある程度倒そう。乱戦になったら卵を割ってしまいそうだ。」
「分かりました。エッグ作戦を始めましょう。」
いつの間にかエッグ作戦になってるし。
始めてみて気づいた。ビックぴよの群れが10万を超えていることに。
俺たちはゲリラ戦を開始していた。
ビックぴよはすぐに仲間を呼ぶ。そしてビックぴよのレベルも高かった。
もう10回以上突撃と撤退を繰り返していた。
ルナは明らかに疲弊していたし、ベリーとエムルも疲れの色が見えた。
「ルナ?そろそろ休まないか?」
「今日はもう一回行きましょう。」
「いや、休もう。」
「もう一回行きましょう!」
俺は全く疲れてないから良いんだけど。
「みんなには休んでてもらって俺がその間に数を減らしておこうか?」
「ではエムルとベリーに休んでもらって、二人で行きましょう。」
「僕は大丈夫だよ。」
「私も大丈夫よ。」
一番疲れてるのはルナなんだけどな。
「わかった。この一回で今日は休みな!」
「分かりました!もう一回お願いします。」
こうしてビックぴよ狩りはしばらく続き、ついに俺たちは卵まで迫った。
「残念なお知らせがある。1000体以上のボスがいる。一番楽なのは、エムルにブラックホールで卵もろともつぶしてもらう事なんだけどどうだろ?」
「駄目です!」
ルナは言った。
「それじゃ、俺がおびき出してエムルにブラックホールで倒してもらおう。これならそのすきにルナが卵を取れる。ビックぴよ本体の素材は諦めることになるけど良いよな?」
「分かりました。」
「俺がおびき寄せるから、エムル、頼むぞ。」
「分かったよ。」
ボスがばらけた場合を考えて、ベリーも構えておいて欲しい。
「わかったわ。」
「頑張ります。」
俺は気配を消してビックぴよに近づいた。
そして、
「魔物呼び!」
ある程度集まったところで、
「挑発!」
俺は逃げながら思った。
あ、ダメだ。魔物がばらけるな。
「ブラックホール!・・・・・・・ブラックホール!」
黒い球体にビックぴよが吸い込まれ、圧縮される。
「すまん。ばらけた!サイクロン!サイクロン!サイクロン!サイクロン!」
俺は範囲魔法で出来るだけ敵を倒した。
「ぴいいいいいい!」
まずい!ビックぴよが仲間を呼んだぞ!
「ベリー!ルナを守るぞ!」
「分かったわ!」
「うぉおおおお!挑発!」
「フレイムソード!」
俺は必至でビックぴよを引き付け戦う。
ベリーはレイバーティンを抜いて、レイバーティンにフレイムソードをまとわせるというベリーの最強攻撃を駆使して敵を狩った。
「みんな大丈夫かい?」
「卵は・・・無事です。無事に手に入れました。」
「もうダメ!限界。」
ベリーとルナは倒れこんでいた。
「ここにキャンプハウスを建てる。今日は終わりだ。明日も休むぞ。」
ルナのレベルは280になっていた。
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