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魔王と話をしてみた。

「私が魔王ガルゴンだ。部屋に案内しよう。」

魔王ガルゴンは、20代くらいの紳士的な男に見えるが、実際に何才かは分からないな。

なんせ魔王のレベルは250だ。

トータルレベルが上がると年を取りにくくなるのだ。


レベルは俺が今まで見てきた中で一番高い。

俺自身はトータルレベル900越えだが、自分以外の者でここまで高レベルなのは見たことがなかった。

後魔王の固有スキルが魔王か。レアスキルだな。

たしか、ジョブも魔王になって治癒士と魔法使いの魔法を全部覚える上に特級の攻撃闇魔法を使えるんだったか。



「分かった。俺の名はウインだ。」


俺たちは応接室に移動した。





魔王と俺はソファに腰かける。

セイラは魔王の斜め後ろに立つが、まるでメイドのようだ。


「それで、どのような御用かな?」


「ただ話をしてみたかったんだ。勇者パーティーを撃退したみたいだけど、殺しはしなかったようだし、なんか違和感を感じたんだ。その気になれば勇者パーティーを全滅させることも出来たと思う。デイブックに攻めてくる様子もないし。色々引っかかりがあるんだ。」


魔王は徐々に先生のような口調になり話を進めた。

「・・・なるほど、結論から言うと、デイブック民主国も我らも戦争をする気は無い。デイブック民主国はただ、国民の敵意を我らに向けたいだけだ。と、結論だけ話しても分かりにくいと思う。説明をしたいのだが良いかな?」



「うん、よくわからないから説明を頼む。」


「うむ、まずこの大陸の国力についてだ。この大陸には中央の魔の森から見て・・・」

魔王が説明を始めた。


大陸中央の魔の森から見て、


・北が魔王が居る   ディアブロ王国 人口20万人


・南東には俺の故郷 デイブック民主国 人口80万人


・南西には       アーサー王国 人口10万人


と三つの国がある


俺が居たデイブック民主国は人口80万と国力で他国を圧倒している。

個の力で言えば魔王のレベルは高いが、デイブックは多くの冒険者と軍の兵を抱えている。質はともかく、量では圧倒的だ。


さらに経済力に物を言わせた魔道具の力で魔物を隣国にけしかけてることで、簡単に国を滅ぼす力を持っているようだ。


「圧倒的な国力を誇り他国を簡単に滅ぼせる力を持ったデイブック民主国の権力者が恐れることは何だと思うかね?」


「他国を圧倒しているから他国は怖くない。・・・・・・自国民の敵意?」


「そう!その通りだ!そして、自国民に敵意を向けられないようにするにはどうすれば良いと思う?」


「他国に目を向けさせる。悪者としてか。・・・・だから魔王を敵にしたのか!」


「その通りだ!国民の目を他国に向けさせる。そして悪者にはずっと生き残ってもらい、悪者で居続けて欲しい。そういう思惑があるのだ。もちろん我らに本気で攻めてこないのは2番目の理由も関係しているのだがね。」


「2番目の理由?ってなんだ?」


「2番目の理由、それは、2つ目の脅威の存在だ。魔物だよ。我らを滅ぼしてしまえば、この地域に居る魔物がほかの国へと侵攻する。我らが居なくなればデイブック民主国は魔物の進行によって今よりも衰退するだろう。国が貧しくなり、我ら悪役が居なくなれば、国民の敵意は権力者に向きやすくなる。」


「なんとなく分かったけど疑問があるんだ。」


「何かね?」


「デイブックは攻める気は無いってことだったけど、勇者パーティーはここに攻めてきてる。なんかおかしくない?」


「うむ、これは予想になるのだが、マスコミが煽って勇者パーティーに我らを攻撃させようとしている。勇者たちでは私を倒せない事を分かっているのではないかな?」


「倒せないから安心ってこと?だから、四天王も勇者を適当にあしらって撤退させたのか。ただ、勇者パーティーをけしかける意味が分からないんだが。」


「その質問については、マスコミの本質を知ってもらう必要がある。マスコミは企業の宣伝費で多くの報酬を得ている。マスコミが適度に不安を煽った方が、物が売れやすくなるのだよ。」


「ん?不安を煽ると物が売れやすくなる?意味が分からない。説明を頼む。」


「これは心理的な話になるのだが、ネガティブな新聞記事を多く描くことで、民衆は不安になる。不安になると無意識に物を貯めこむようになるのだ。ネガティブな記事の後に、企業の宣伝した商品が乗っていたら、その商品を買いやすくなる。つまり企業の製品を多く買ってくれる。そうすることで企業はマスコミにより多く宣伝費を出すようになる。と言うのを繰り返して、マスコミはどんどん力をつけていくのだ。例を出すと、魔王の不安を煽る記事の次に自衛のための剣を買いませんか?と言う宣伝が入っていたら剣が売れやすくなるだろう?」


「わかったぞ!だから今中途半端に勇者パーティーが魔王城に攻めてくるのか!そして勇者に負け続けてもらい、マスコミは勇者敗北の記事を書く。そうするとマスコミの利益が増える。魔王の話は分かりやすいな。」


「ふふふ、喜んでもらえて光栄だ。ただ、今のデイブックは不安を煽りすぎて、少し不景気になっている部分もあるがね。」


「ところでさ?デイブックと魔王が仲良く出来ないのは分かったけど、この国はアーサー王国とは仲良く出来ないのかな?」



「うむ、難しい問題だな。我ら魔族が交渉の為アーサー王国に行こうとすると、対立を招く恐れがある。今の所放置しているのだ。人間族であるウインが交渉に向かってもらえれば活路が開けるかもしれないが・・・」

魔王はそう言うと俺をじっと見つめてきた。


「え?お、俺えぇーーーー!?」


「ウインなら、いや、ウイン殿なら良い結果が得られるかもしれない!」


「ちょっと待ってくれ、俺はデイブックでかなり嫌われているんだ!話がおかしくなるかもしれない!」


俺は魔の森でキャンプ生活をすることになった経緯を説明した。


「なるほど…そういった経緯があったのか、だがそれでもやってみて欲しい。失敗しても構わない。それに、アーサー王国の王族と大臣たちはかなり知的な人間揃いらしい。フェイクニュースには引っかからないはずだ。それにウイン殿はおそらくこの大陸では最強の強さを持っている。何があっても大丈夫だ。」


「ん?俺元勇者パーティーでは、下級ジョブってバカにされてたけど?」


「それは勇者たちに見る目が無いからだ。四天王を余裕で圧倒出来るのは異常だ。私にも出来ない事だ。トータルレベルがどのくらいあるか聞いても良いかな?」


「900台だ。」


「900!!!それだけあればドラゴンですら一撃で倒せるだろう!!」


セイラも驚愕する。



「ウイン殿、話を脱線させてすまなかった。話を戻すが、アーサー王国に向かってほしい。頼む。」

魔王は土下座をして俺に頼み込んだ。


「わ、分かったから土下座は辞めてくれ!」


「おお!ありがたい!」

そう言って魔王はすっとソファーに戻った。


「私の娘を連れて、数日後にはアーサー王国に向かってほしい。頼む(・・)!!」



「娘を紹介しよう。エムル!入ってきなさい!」


扉を見ると、

薄紫の髪と目を持ち、魔女のような服装をし、頭からは羊の角が生えた

美少女が立っていた。


「僕の名前はエムル、4年ぶりだね!この日を待ちに待ったよ!」


最後までお読み頂きありがとうございます!

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