表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/124

勇者パーティーの失敗続き①&②

勇者の失敗続きの①と②を一つの話にまとめました。

ウインが居なくなった後、ブレイブは上機嫌になった。

魔の森に逃げるとは馬鹿なやつだ!もう生きてはいまい。

魔の森に入ったら生きて帰ることは無い。

それがこの国の常識だ。

魔の森の入り口ならまだ生きている可能性もあったが、奴は追い込まれた末に奥地へと逃亡した。




あいつが居ない。邪魔者はもう居ない!レアスキルを持った俺たちで魔王城に挑めば必ず魔王を打ち倒すことが出来る。


そしてベリーは俺の物だ。

早速だ、早速魔王城に行こう。俺の名声を轟かせる。

そうすれば金も権力も女もみんな俺にすり寄ってくる。










宿屋

ブレイブは自信満々で言った。

「このパーティーで魔王城に攻め入る」


「え?準備や他のメンバーの補充も必要でしょ!」

ベリーが真っ先に反対する。


「物資の準備は済ませてある。他のメンバーは必要無い!」


ブレイブの発言にガーディーも賛同した。

「ウインが居ないのだ。前よりはうまく行くに決まっている。」


ベリーが渋ったため、マリーはすぐさま賛成の立場を取った。マリーはベリーの事を良く思っていない。

「良いんじゃない?行きましょう。ベリーは渋っているけど、嫌ならパーティーを抜ければいいじゃない!あんたなんて居なくても一緒よ!」


「分かったわよ!私が抜けるわ!3人で頑張って頂戴!」


「それはダメだ!!」

ブレイブが奇声を上げる。


「あなたが決める事じゃないでしょ!」


「明日は強制参加だ!抜けることは許さない!マリーも輪を乱すな!」


ベリーはまた始まったかと思った。こっちの意見は一切聞かず、脱退するのも許さない。


話を出来ない。


冒険者ギルドにパーティー脱退の相談をしても相手にされない。



結局明日魔王城に向かうことになった。









魔王城に向かう途中の森


「地図が無い!どういうことだ!物資調達の者の不手際だぞ!」

ブレイブは物資の準備をギルドに丸投げし、確認をしなかった。


度重なる無謀な行動にベリーが口を出す。

「自分で確認しなかったんだからしょうがないでしょ!ウインが居ればこんなことにはならなかったわね!」


「この程度のトラブルは良くある事だ!問題無い!」

そう言って先に進み始めた。









この日4回目の魔物の群れとの戦闘だった。

「くそ!なんでこんなに魔物が出てくるんだ!」


「斥候が居ないと魔物の群れによく遭遇するよね?普通でしょ?」


ガーディーも愚痴を言い出す。

「今回は失敗だ!撤退するべきだ!計画が悪すぎる」


「失敗していない!!!何もせずに口だけ出すな!!」

今まで何かあるとウインのせいにしていたブレイブとガーディーだったが、責任を押し付けるものが居なくなった結果、二人の仲も悪くなっていった。










ベリーは出来るだけブレイブを刺激しないようにゆっくりと口を開いた。

「もう物資が残り少ないわ。撤退しましょう。」


「失敗していない!!俺のせいにするのはやめろ!!」


いつもベリーを目の敵にしているマリーもこの時ばかりは耐えられなくなり口を開いた。

「撤退よブレイブの準備が悪すぎるのよ!」


ブレイブは頑なに失敗を認めなかった。









野営の準備は全部ベリーが行った。

ベリーは本当にうんざりしていた。


焚火を囲むほかの3人は言い争いをしている。

ガーディーとマリーはブレイブに対する批判で、ブレイブは決して非を認めず、ガーディーやマリーのせいにしていた。


うんざりしながらベリーが会話に割って入った。

「誰のせいとかそういうのは無しにして、今回は撤退しましょう。」



「ベリーがそこまで言うなら撤退しても良い。」



ベリーは内心あきれた。


だが撤退を認めてもらっただけで上出来だった。普段は一切話が通らない。


勇者パーティーは、ボロボロになりながら撤退したが、帰ってからも3人の仲はぎすぎすしていた。


ベリーは、ギルドにパーティー脱退の申請書を提出しようとしたが、ギルドは書類を受け取らない。


ギルド側は明らかに法律違反をしていた。

パーティー脱退の権利を明らかに犯している。









「しばらくは通常の依頼をこなす!」

ブレイブはそう言って通常の依頼を受け始めたが、ウインが居た頃のような素早い任務達成は出来なくなっていた。

前より達成期間が遅れるだけならまだ良かったが、納期の遅延が発生する依頼も出始めた。


ブレイブは周りに当たり散らした。

「お前ら!たるんでるぞ!まじめにやれ!」

このことによってベリー以外の3人で言い争いが始まる。

このパターンを何度も繰り返していた。


通常依頼をこなしても足並みが揃う事が無い処か、パーティー内の仲は日に日に悪くなっていた。





ベリーが宿屋に入るといつものようにカウンターで3人がもめていた。ベリーは無視をして自分の部屋に戻ろうとするが、ブレイブに呼び止められる。


「ベリー!君はどうするべきだと思う?意見を出してくれ!!」



「このパーティーを解散するのが良いと思うわ!」



ブレイブはさらに怒りだす。

「解散は無い!!輪を乱すなよ!!みんなでうまくやる方法を考えるんだ!!」



「斥候と錬金術師か運び屋が必要だと思うけど、このパーティーに入りたがる人間がいるかしら?」


「君がそこまで言うなら、探してきても構わない。ただし斥候だけだ。ベリー。君がギルドに掛け合って探すんだ。選んだ候補から俺が最終的に選別しよう。」

ブレイブは責任を人のせいにし、手柄はすべて自分の物にしたがる。

その性格が言葉にも現れていた。


ベリーはあまりにめちゃくちゃな内容に感情的になる。

「私は解散したいと言ったはずよ!」


「解散は無い!」








ベリーはギルドで斥候のメンバー候補の選定を形だけで済ませようとしたが、候補者が5人も集まってしまった。

今の勇者パーティーの現状を伝え、諦めてもらおうと思ったが、勇者のイメージは、マスコミによって操作されているため、信じてもらえない。


ブレイブは5人の候補の中から一番顔立ちが整った若い女性を選んだ。



斥候のシーが加入し、再び勇者パーティーは魔王城を目指すが、

案の定問題が発生した。

ブレイブは自身の剣を抜いてじっと見た。

「剣の調子が悪いんだ。」


ベリーは何も言わず黙っていた。


「お前がベリーの意見を無視して錬金術師を入れなかったからだ!」

ガーディーは決してベリーをかばったわけではない。

ただ、ブレイブを非難する材料として利用しただけなのだ。


「おい!ガーディー!調子に乗るなよ。」


ガーディーとブレイブはお互いをののしりあいながら道を進んだ。


斥候のシーは耐えかねて口を開いた。

ベリーの方からあらかじめ勇者パーティーの現状は聞かされていたが、意を決してしゃべろうとしているのが見えた。

「お互いに批判しあうのは良くないんじゃないかな」



「黙れ!下級ジョブが!」

「俺に意見するな!新入り風情が!」

ブレイブとガーディーが即座に怒鳴る。


「シーはみんなの為を思って言ったのにひどいわ!」

ベリーは耐えかねて口を開くが、一切効果が無かった。


それからしばらくまともな会話は出来ない状態になった。


シーはガーディーとブレイブの前では口を閉ざすようになった。


しかもその後マリーはシーの事を召使いのように扱う。

シーはベリー以外にまともに話せるものが居なくなる。



さらに問題が起きた。


マリーのMPが無くなったのだ。

正確には、マリーはMPが3割以下になると絶対に魔法を使わなくなる。

理由は体調が悪くなるからだ。

「撤退よ!馬鹿な計画のせいで私だけが苦労してるじゃない!!」


「みんながそこまで言うなら撤退しよう。」

ブレイブは責任を人のせいにしつつ撤退を決めた。






撤退後


「ベリー、勇者パーティーに加入させる錬金術師候補をギルドで集めてくるんだ。候補の中から俺が選ぶ」


「ブレイブ!その前に自分の失敗を認めろ!!」


またブレイブとガーディーの喧嘩が始まった。


ベリーは何も言わずにギルドへと向かおうとしたが、シーもついてきた。

「ベリーさん、勇者パーティーっていつもあんな感じなのかな?」


「うーん、昔斥候がいる時はまだ良かったんだけど、今はあんな感じね。」


「その人って前言ってた。フェイクニュースでひどい目に合った人かな?」


「そうね。」


「ベリーさんは勇者パーティーを辞めないのかな?」


「何度も辞めようとしたけど、ギルドが申請書を受け取らないのよ!」


「それってギルドが法を破ってる・・・のかな」


「そうね、きっとブレイブとギルドは裏でつながっているのよ!」




ギルドに着くと、錬金術師の募集をお願いした。


ただ今回は前よりももっと丁寧に勇者パーティーの現状を説明した。


それでも候補者は減らない。


ブレイブは候補の中から、一番美人のマインを勇者パーティーに入れた。






今度は魔王城に向かう前に問題が起きた。


錬金術師のマインが、ポーションの素材を集める為、みんなに協力を要請したが、

ブレイブ・ガーディー・マリーが協力を断った。

さらにシーとマインの装備強化の要請も断ったのだ。




ポーションの材料とシーとマインの装備素材集めの為、シー、ベリーが協力して素材を集めることになった。

だが、皆笑顔だった。


次の準備が終わるまで、ブレイブ・ガーディー・マリーと顔を合わせなくて良くなる。



素材集めに三か月以上かかるというマインの提案をブレイブ・ガーディー・マリーはあっさりと認めた。


それほどパーティー内の不仲は深刻になっていた。


マイン・シー・ベリーの3人での採取は実に充実しており、ついでにシーとマインのレベル上げも手伝った。






だがまたもや問題が起きる。

素材集め4か月目に差し掛かった頃、ギルドから勇者パーティーに合流するよう要請があったのだ。


ブレイブ・ガーディー・マリーがギルド内で問題を多く起こすようになり、ギルド側としては、ベリーに勇者パーティーのおもりをさせたいという意図があった。


冒険者ギルドは、ブレイブ・マリー・ガーディーの問題行動を熟知していた。

だが、マスコミギルドによって持ち上げられている勇者パーティーに厳しい処分を下し、世論を敵に回すのを恐れた。しかも冒険者ギルド側で勇者パーティーをまともに相手をする労力を割きたくもない。

結果ベリー達を盾のように使うという自らを守り、厄介払いをするような行動を選択したのだ。

もちろんベリーのパーティー脱退は認めず、盾で居続けてほしい。

それが本音だった。



マインが加わっての魔王城の攻略が始まった。

メンバー同士でもめながらも、何とか魔王城までたどり着くが、

女性陣4人の休憩をしたいという要望を無視して、魔王城に攻め入ることになったのだ。




魔王城に入ってすぐに、4人の美女が現れた。


「我ら四天王、私は青竜のセイラ!」


「赤鬼のアカ!」


「黒弓のチョコ!」


「黒き吸血鬼のバンピー!」


四天王が名乗りを終えると、青竜のセイラが服を脱ぎ捨て、青竜に変身して襲い掛かってきた。


「ぐおおおおお!」


「やっとここまでたどり着いたんだ!たどり着きさえすれば俺が勝つんだ!俺一人で倒してやるよ!ブレイブタイム(戦闘力2倍)


セイラのコールドブレスがブレイブに迫る。


ブレイブは避ける事も出来ずに直撃を受けた。

「ぐおうああ!撤退だ!!!」


ブレイブは我先にとブレイブモードを発動させたまま魔王城を後にした。

ブレイブモードは一分しか発動できない。

ブレイブは、戦闘開始から1分以内に四天王から逃げ出したのだ。

残りのメンバーも後に続いて撤退する。






「四天王一人に勇者は惨敗だな」

ガーディーは嬉しそうに話した。


「違う!俺はベリー、マイン、シーを守ろうとしたんだ!!!」


「どういうことかな?」

「え?え?」

新しく勇者パーティーに入ったシーとマインはブレイブの言動を理解できなかった。



「俺が素早く決断できていなければ、マインもシーも死んでいた!ほかのメンバーに攻撃が来る前に撤退を決めたんだ。」


ベリーは我先に逃げ出したブレイブの失態には触れず、質問をした。

「魔王城の攻略はしばらくあきらめるという事で良いわね!?」


「そんなことは無い!俺一人なら倒せた!」


「私とマイン、それにシーはこのまま帰るけど、それで良いのね!ブレイブは残って魔王城を攻略するのね?」


「違う!俺はみんなを守る義務がある!町まで送り届ける!」


「いったん戻って私とマイン、シーはパーティーを脱退するってことで良いわよね!」


「それは認めない!」


「次は私たち抜きで魔王城に乗り込むんじゃないの?」


「俺一人なら倒せるが、みんなで協力して倒すことに意味があるんだ。だからみんなでまた魔王城に乗り込む。」


「すぐに死ぬ私やマイン、シーを連れてもう一回ここに来るってこと?すぐに死ぬ私たちを連れて私たちを殺すの?それはおかしいわ!」


「俺はみんなを守る義務がある!町まで送り届ける!」


「だから!そうじゃなくて!!」


「もういいよ。いったん町に戻ろう。話がいつまでたっても終わらないよ。」


勇者ブレイブの異常な言動は、シーやマインも十分すぎるほど理解したのだった。

ブレイブは自分が追い詰められるととにかく話を逸らすか人のせいにすることで乗り切ろうとする。

結果パーティーの行動は改善されないまま、パーティーの仲が悪くなり続け、同じ失敗を何度も繰り返していた。

パーティー内で協力する姿勢は一切なく、他者から奪う行動しか取らない。

結果最初は勇者パーティーに協力的だった者も、どんどんブレイブ達と距離を取り、関わらないようになっていた。



ベリーは小さな声でつぶやいた。

「ウイン・・・どこにいるのよ。」


ベリーは自分の首輪をそっと撫でた。


最後までお読み頂きありがとうございます!

ここまで少しでも、ほんの少しでも面白いと思っていただけた方はブクマ、そして下の☆☆☆☆☆から評価をお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] これが勇者パーティの2年間の行動ですか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ