勇者パーティーの失敗続き⑤
勇者ブレイブは呼び出しを受けた。
マスコミギルドのトップが勇者であるブレイブにお願いしたい・・・か
最初は無視するかとも考えたが、力を借りたいというお願いだった。
しょうがない。聞くだけ聞いてやっても良い。
くだらない話だったら、すぐに帰れば良いだけだ。
いけ好かないマスコミか、それとも俺を正当に評価できるまともな人間か、見極めてやる。
ブレイブが案内され、応接室に入ると、白髪交じりの男性が立っていた。
「君がブレイブ君か、私はマスコミギルド長のアオールだ。よろしく頼むよ。」
「それで?何の用だ?」
「素晴らしい能力を持った君にぜひともお願いしたいことがあるんだよ。」
こいつはまあまあまともな目を持っているな。
もうしばらく話を聞いてやっても良いか。
「実は、このデイブック民主国の南でゴブリンのスタンピードが起きてしまったんだよ。そこで、特別な君にお願いしたいのは、そのスタンビードを救う英雄になってほしいのだよ。」
「ゴブリンごとき、俺の敵ではないが、ただ倒してくればいいのか?」
「そうだね。そうして欲しいんだよ。そしてみんなを守ってほしいんだ。そしてこれはそのための道具だよ。」
そう言ってアオールは小さめのトランクケースを手渡してきた。
「なんだ?武器か?」
「これは魔物をひきつける魔道具だよ。もし、もしも、この国の国民の命が危なくなったら、これでゴブリンを西のアーサー王国にひきつけて、みんなを守ってほしいんだよ。もちろん君は勇者だ。君は問題なく戦えるとは思う。ただ、ほかの人間はそうではないんだよ。」
「こんなものが無くても、俺が全滅させられる!」
「もちろんそうだとは思うんだ。ただ、もしもこの国の国民に犠牲が出てしまうと、勇者ブレイブの良い記事を書けなくなってしまう。私はね、君にはもっと上に居て欲しいんだよ。優秀な君のパーティーがBランクなのはおかしいと思っているんだ。だからこの魔呼びの魔道具は君に持っていて欲しいのだよ。どんなに君が優秀でも、周りの人間が死んでしまえば君の足を引っ張ることになってしまうんだよ。今までもそうだったのではないかな?」
「たしかにそうだな。」
そうだ。俺はみんなに足を引っ張られ続けてBランクにいる。
だが本来俺はBランクに収まる人間じゃない!
皆が俺を邪魔するせいで評価されない!
「この魔道具は、君の周りの人間が足を引っ張ってこないためのお守りのように考えてもっておいて欲しいのだよ。どうかこの国を救ってほしい。この通りだ。」
アオールは深々と頭を下げた。
「そこまで言うなら、俺の力でみんなを救ってやる。」
「ありがとう!うまく行った時には、全力で勇者ブレイブの有能さを記事にさせてもらうよ。」
「安心しろ。俺が居れば絶対に成功する。」
こうして勇者ブレイブは上機嫌になり帰っていく。
「せいぜい頑張ってくれ。アーサー王国からの敵意は全部ブレイブに背負ってもらう。」
アオールは右の口角を上げた。
南に向かう前に勇者パーティーに対する記者会見が行われたが、ブレイブは上機嫌だった。
ブレイブは、
「俺がみんなを守る!」
とマスコミにアピールし、さらに調子を良くしていた。
勇者パーティーが南に向かう途中、ブレイブとガーディーはいつものように罵りあっていた。もはやこの二人の関係は修復不可能だ。
勇者パーティーが最前線に出る形で、ゴブリンとの戦闘が開始されたが、ゴブリンの様子が異様だ。
約10万のゴブリンが隊列を組んでいる。
「なんだ!あの数は!聞いてないぞ!」
軍隊のように統率されたゴブリン、これはゴブリンキングが居る証拠だった。
「ゴブリンキングが居るのか!」
そうだ!こいつらをアーサー王国に擦り付ければ良い!
その為の魔道具だ!俺は問題なく戦えるが、みんなを守る必要がある!
俺にはみんなを守る責任がある!
ブレイブは魔物ではなく、味方に向かって叫んだ。
「俺が魔物を引きつける! 俺がみんなを守る!」
そう言うと、勇者は西へと向かって走りながら、魔呼びの魔道具を発動させた。
ゴブリンたちが一斉にブレイブを追って西へと移動した。
ゴブリンに包囲されそうになると、ブレイブはすかさずブレイブタイムを使い、ゴブリンの包囲を突破した。
◇
ブレイブは走り続けた。
アーサー王国とデイブック民主国をつなぐ街道を走り続け、アーサー王国の検問所があるところまでゴブリンを誘導した。
アーサー王国兵「おい待て!ここで止まれ!」
ブレイブは兵士の制止を無視してアーサー王国内部へと侵入し、走り去っていった。
「お、おい!あれを見ろ!ゴブリン!あいつが押し付けたのか!」
「それだけじゃない!あいつデイブックの勇者ブレイブだ!」
「早く!馬を出せ!今すぐに危機を知らせるんだ!総員撤退だ!寝ている奴をたたき起こせ!」
ブレイブは無事ゴブリンをアーサー王国へと擦り付けた。
デイブック民主国はゴブリンの危機を回避したが、隣国であるアーサー王国に危機が迫っていた。
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