打倒してしまってもかまわんのだろう?
俺たちは3か月に渡り、順調に女性を救出し、ゴブリンを討伐を済ませ、残りは城に籠城するバグズとの戦いを残すのみとなった。
タケルが皆をねぎらって回る。
「ウイン、明日は城攻めじゃ。たっぷり休んでおくのじゃぞ。」
「ああ。」
「分かっておると思うが、撤退の合図をしたら撤退じゃ。わかっておるの。」
タケルが真剣な顔で俺を見つめる。
「分かっている。」
作戦は決まっている。
全方向から5万の軍で総攻撃をかける。
その隙に俺が城の上にある串団子型のビーム兵器を破壊する。
ミワクが作った城には防壁が無い。
その代わりに魔道兵器による集団せん滅で城を守っているのだ。
つまり俺の兵器破壊は重要な役割を果たす。
タケルが俺の背中を叩く。
「気負うでない!兵器の破壊は全員で行う。」
そういってタケルは他の者をねぎらう為去っていく。
落ち着かず陣を歩くと、
ルナ・ベリー・エムル・きゅうは一か所に固まり、お茶会を開いていた。
俺も見習うか。
「一緒にケーキを食べたいが大丈夫か?」
「どうぞ。」
ルナが隣の席をポンポンとやさしく叩く。
俺が座るとルナとエムルが吸い付くように寄ってくる。
「久しぶりにウインと一緒に話が出来るよ。すーはーすーはー。」
エムルが俺に抱き着き匂いを嗅ぐ。
「忙しかったです。今日はのんびりしましょう。」
エムルが俺に抱き着きながらきゅうを抱っこしようとする。
ぼおおおお!
きゅうは炎を出し、エムルを威嚇した。
どんどんエムルへの対応が厳しくなってるな。
「お前、きゅうに近づくな。嫌がってるだろ。」
きゅうはベリーに抱かれ、団子でほっぺを膨らませながら、エムルを睨む。
「残念だよ。でもウインに抱き着けるから良いのさ。」
きゅうのほっぺだしぼむと、きゅうがあっちに行こうよとベリーの服を引っ張る。
エムルと一緒に居たくないようだ。
「よしよし、怖いエムルと離れましょうね~。」
ベリーはきゅうを抱きながらここから離れていく。
「すっかりきゅうに嫌われましたね。」
「全員に好かれようとするのは無理なのさ。」
エムルは気にせず俺の匂いを嗅ぎ続ける。
「ウイン。この戦いが終わったら、抱いてくれますよね?」
俺はコーヒーをのどに詰まらせてむせる。
「僕も抱くんだよ。戦いが終わったら僕とルナ両方を夜が明けるまで激しくいたぶるように」
俺はエムルの口をふさぐ。
「分かってる。戦いが終わって、大陸に戻ったら街から離れた所にログハウスを作って一か月はみんなでゆっくり過ごそう。」
エムルの鼻息が荒くなるが、俺はエムルの口を押え続ける。
「買い出しも必要ですね。みんなでお買い物にも行きましょう。」
「そうだな。明日すべてを終わらせる。」
お茶会のつもりが、そばまで食べ、長い食事会に変わった。
ベリーの元に向かうと、きゅうが眠そうにしていた。
「きゅう、エムルが怖かったよな。よしよし。」
きゅうをなでなでする。
きゅうはその通りだよと目で訴えてくる。
ついでにベリーも撫でる。
「んああん!」
ビクンビクンと反応する。
周りの目もあったせいか、ベリーが俺の腕を掴む。
「だ、ダメ!それ駄目!」
ベリーは可愛いな。
「続きは明日の戦いが終わってからだな。」
「も、もう!」
俺は早めの休息を取る。
夜中に目が覚める。
「早く寝すぎたか。」
俺が散歩を始めると、焚火をするオガとウォールの姿があった。
「二人早起きだな。」
「ウインもだぞ。」
「おらねむれねーだよ。」
「ふむ、早く寝すぎた。スキルの回復アップの効果もあって、今日は眠れないな。」
俺は二人の近くに腰を下ろす。
「オガ、緊張するなら何か口に入れておくか?」
「肉と甘いものが良いだよ~。」
「俺にはコーヒーとパンを頼む。」
俺はコーヒーを淹れる。
「オガはコーヒー飲めるか?」
「飲めるけども~砂糖とミルクたっぷりが良いだよ。」
オガとウォールにコーヒーとサンドイッチを渡す。
串にささった肉を焚火に突き刺し、ぼーっと肉を見る。
「俺も肉が食いたくなってきた。」
ウォールが肉をじっと見る。
「ああ、」
俺は肉を追加する。
じゅう~という音と肉の焼ける匂いが食欲をそそる。
俺たちは肉に視線を集め、じっと見守る。
「出来たぞ。」
オガは緊張しているとは思えないほど食欲が旺盛だった。
ウォールはゆっくりコーヒーを啜った後、少しずつ肉を口に入れていく。
辺りが少し明るくなってくると、魔王がやってくる。
「男だけ3人揃って、焚火か。」
「魔王も何か食べるか?」
「いただこう。コーヒーと食事を頼む。」
魔王は少しやつれていた。
当然だ。人質救出という繊細な作戦をしばらく続け、今日は精鋭部隊とともに城に突入する大事な役目を背負っている。
「魔王、疲れているな。肉じゃなくあっさりしたものの方が良いか?」
「パンと肉にしてくれ。」
俺はコーヒーとサンドイッチを渡し、肉を焼いていく。
肉を焼き終えると魔王に差し出す。
「なあ、魔王。」
「どうした?」
「今まで神経をすり減らしてきたと思うけど、今日で終わりだ。」
「そうだな。」
魔王の表情が暗い。
「もし俺に余裕があれば、名前持ち全部、打倒してしまってもかまわんのだろう?」
俺は場を和ますため、変顔をして言う。
「ふ、そうだな。」
魔王の失笑。
すべったか!
「あれだ、言いたかったのは魔王一人で気負う必要は無いぞ。全員で戦うんだ!」
「言いたいことは伝わった。コーヒーのお代わりを頼む。」
少し魔王の表情が楽になった・・・気がする。
ウォールも便乗する。
「俺の分もくれ。」
「おらはあまいサンドイッチとミルクが欲しいだよ。」
こうして俺たちは今日の最終戦を迎える。
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