女性救出作戦
ベリーと四天王やメアたちは普通に接していた。
セイラとウォールが目で合図を送ってきた。
二人が気を使って手をまわしてくれたんだろう。
ヤマトの王が帰ってきた知らせを受け、俺たちは本土中央の街の外に待機。
見るからに偉そうな男が歩いてくる。
若く、野性的な印象を受ける。
「お前がウインじゃろ?」
俺の背中をパンパンと叩いてくる。
どうやら中身も野性的な性格らしい。
「ああ、いや、はい、私がウインです。」
「はっはっはっは!無理な敬語はやめんか!背筋がかゆくなるわ!」
そういってまた俺の背中を叩く。
「分かった。ヤマトの王、タケルか?ん?様も付けなくて大丈夫か?」
「タケルじゃ!様もいらん!裏切る事が無ければ何も気ににせんわ!」
ウォールとセイラも集まってくる。
「西のゴブリンだけど、出来れば倒して女性を救出したい。いつ動ける?」
「今日の昼過ぎには出発じゃ。移動しながらやり方を考えるんじゃ。」
「そうか、こっちの部隊の指揮はここにいるウォールとセイラが取っている。3人で話をして欲しい。」
「なんとなくは考えとる。ワシらがゴブリンに攻めこむ。お前らがその隙に救出する。どうじゃ?」
悪くないと思う。
ウォール達の部隊とヤマトの部隊を急に合流させても、連携が取り切れない可能性がある。
特に救出作戦という繊細な作戦では連携が大事だ。
それよりはヤマトの軍が陽動で動き、ウォール達が救出する方が良い気がする。
「俺も良いと思う。セイラとウォールはどうだ?」
「俺も賛成だ。」
「私も良いと思います。」
「決まりじゃな。移動しながら詳細を詰める。ウォールとセイラはワシについてくるんじゃ。」
ヤマトの王って言うから、優柔不断な人間を想像してたが、即断即決な男だな。
レベル100越えのサムライ・・・レアスキル持ちだな。
あの王でもまとめきれないヤマト・・・か。
俺はヤマトの闇の深さを感じていた。
西のゴブリンの生息地に到着するが、大群での行軍だ。当然ゴブリン側には筒抜けで、ヤマトの軍とゴブリンの戦闘が始まる。
「計画通りだな!」
俺はウォール達1000人の精鋭と救出の為、ヤマトの軍と離れて行動していた。
斥候系のゴブリンは俺がすべて瞬殺した。
女性の居場所も感知済みで、後は救出に向かうだけだ。
問題は女性の位置が一か所にまとまっていない点だ。
部隊を複数に分けて救出に向かう。
俺は後ろに100人の精鋭を控えさせ、女性の周りのゴブリンを斬り倒した。
俺が後続部隊に合図を送る。
俺は後続がたどり着く前に女性がいる大きめのテントに入り、ゴブリンを倒す。
後続部隊も突入し、女性の拘束を解いていく。
「助けに来たぞ。」
「あ、ありがとうございます。」
「うううう、えっぐえっぐ。」
女性は泣きながらお礼を言うが、中には目がうつろな者も居る。
俺たちは急いで女性を後方のキャンプ地へと運んだ。
100人の騎士達は優秀で、迅速な動きを見せる。
後方には、メアと斥候、護衛の精鋭。
食事やテント、水にポーションなどの物資を用意してある。
「ウイン君!一番乗りです。」
「ああ、一回目はうまくいったが、問題はこれからだ。」
恐らくゴブリンは、女性を人質に取ってくるだろう。
2回目の救出もすんなり成功した。
俺たちが3回目の救助の時、案の定女性が人質に取られた。
ゴブリンは女性の首にナイフを突き付け、女性を盾にする。
俺はこの時の為に棒手裏剣を用意していた。
ゴブリンが反応する前にゴブリンに投げつけ、一撃で頭を撃ち抜く。
その隙に100人の精鋭が助け出す。
この流れで、俺たちは順調に女性を救出していった。
今回の作戦で数千人の女性を救出した。
タケルの軍が合流する。
「今回は、ウイン・ウォール・チョコが大活躍だったようだの。」
今回は斥候スキルが有利に働く環境だった。
「ですが、問題も発生しました。食料が足りません。」
セイラの言う通り、数千人の食事が追加で必要になったが、タケルの軍にも余分は無い。
「俺達で南西の魔物を狩るしか思い浮かばないな。」
俺の意見にタケルが頭を下げる。
「すまん。ウイン達で対処して欲しいのじゃ。」
ウォールとセイラは驚いた表情をする。
「なんじゃ?」
「タケルが頭を下げたのが意外で驚いたんだ。」
タケルは俺の背中を強めに何度も叩く。
「はっはっは!ワシも最低限の礼儀位心得ておるわ!」
タケルの軍は西のゴブリンの殲滅の為残党狩りの行軍を続けた。
俺たちは本土南西部にキャンプを張り、魔物を狩り食料の確保に動いた。
本土でも食料が不足していたため、救出した女性は狐族も人間族も旧デイブックに移動させることになった。
俺たちが女性を船に乗せ終わるのと、タケルの軍の帰還はちょうど同じタイミングで終わる。
大陸からの1000の援軍は本土に残したままだ。
タケルに救命の名目で残って欲しいと伝えられている。
ただ、これ以上の大陸からの援軍は、食料不足の影響で呼べないという事だった。
俺とベリーが城へと向かう。
「次はタケルと話をするんだよな?」
「そうだと思うわ。」
俺が城に入るとすぐにタケルが歩み寄る。
待たされるかと思ってたけど、早いな。
「ウインとベリー、こっちに来るんじゃ。」
中に入ると、ハナ・シノが居て、タケルが座るであろう両脇に控える。
「遠慮はいらん。座らんか。」
そう言いながらタケルが座る。
「飯はまだじゃろ?」
「まだだな。」
「ちょうど良い。後少しで飯が来る。」
すぐに食事が運ばれて来た。
「私の好きな食べ物ね。」
ベリーが言う。
「そうじゃ。ハナに聞いて作らせた。きつねそば・いなり寿司・串団子じゃ。遠慮せず食え。」
ベリーは上機嫌で食べだす。
尻尾がぶんぶんとゆれる。
尻尾のおかげで前より感情がわかりやすくなったな。
「ベリー。ハナから事情は聞いた。つらい思いをさせたの。」
タケルが頭を下げる。
「大丈夫よ。そのおかげでウインと会えたわ。」
「そういってもらえると助かるの。」
こうして俺たちは黙々と食事を済ませた。
「さて、本題じゃが、軍の備蓄が切れ、軍をしばらく動かすことが出来ん。」
そんな気はしていた。
軍の装備はボロボロだったし、兵も痩せている者が多い。。
しかもさっきまで食料にならないゴブリンを討伐していた。
「そこでじゃ。大陸の1000の兵を貸してくれんか?」
「もともと協力するために来たんだ。問題ないぞ。」
「それは助かるのお。それと出来るだけ物資を送ってもらえんか?」
「今移民の受け入れ中でどれだけ送ってもらえるか分からないな。だが、ウォールに言えばいくらかは送ってもらえるはずだ。ポーションなら、俺たちが使う分以外は今出せるが、必要か?」
「必要じゃ。今受け渡して欲しいのじゃ。」
こうして余分なポーションをすべて受け渡した。
俺とタケルは廊下で話し込んだ。
「このお返しは後で必ずする。」
タケルは深く礼をした。
「後でな。落ち着いてからにしてくれ。」
「所でウイン。名前持ちを3体討伐したようじゃの。話を聞きたいのじゃ。」
「討伐って言っても、俺だけじゃなく精鋭2000の軍でやったぞ。」
「うむ、話には聞いておる。今までで一番苦戦したのはどいつだった?」
「ゴブリンキングバグズだな。」
俺は間髪入れずに答えた。
「ゴブリンのー。大陸にいた頃はレベル280だったと聞いておるぞ。分からんのが、牛のブルーザのレベルは500じゃ。ブルーザの方が手ごわいように思えるが?」
タケルが興味深そうに聞く。
「確かにレベルはブルーザの方が高いし強い。だが、結果だけ見れば、バグズだけは討伐できていない。それと、バグズは何をしてくるか分からない。まるで人間のようだ。」
「人間のようだ・・・か。ふむ、妙に納得できる答えじゃったわい。」
恐らくタケルは王として苦労しているのだろう。
俺とそこまで年も変わらないように見える。2~3歳上くらいか?
「おそらく、バグズは影を潜めて力を蓄えている。」
「わしもな、嫌な感じはしとった。西のゴブリンを無理して討伐したのはそのためじゃ。じゃが今は兵を動かせん。今できるのはせいぜい魔物の肉を狩るくらいじゃの。」
「女性が攫われてなければ、俺一人でかく乱に行きたいんだが、それがネックだな。」
「ふむ、キュウビの同族を減らしてきてくれんかの?」
キュウビか。
気になってはいた。
北のキュウビが居なければ、この本土の状況はもう少し良かっただろう。
バグズに手を出せない今、キュウビの力を削いでおくのも悪くないか。
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