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3分読み切り短編集

世界の果て

作者: 庵アルス

「世界の果てってさぁ」

「うん」

「地球平面説信者が言い出したのかなぁ」

 友人は時々、突拍子もないことを口にするなと僕は呆れるやら感心するやらである。

 今のは中々面白いと思う。地球は球体なのだから、果て、つまり終わりはない。あるとしたら球体ではない別の形⋯⋯すなわち、地球が球体であると証明される以前に信じられていた、地球平面説における概念だろう。

「でも、今日(こんにち)まで残ってるじゃないか」

「あー⋯⋯そうだよねぇ。地球平面説が廃れて久しいのだから、それに準ずる言葉なら、なくなって然るべきだよねぇ」

 友人はうんうんと考え込んだ。

「⋯⋯朽ち果てるの果てる?」

「なんてことを」

 世界が朽ち果ててしまってたまるか。僕は少し強めに言った。

「いやぁ、ごもっともなんだけどさぁ」

 友人は反省の色もかすかに、それよりは自分の思案を大事そうに、顔をしかめる。

「『ここが世界の全て』! ⋯⋯って感覚あるじゃん?」

「わからない」

「え? えー⋯⋯、なんていうか、うーん、なんだろう、漠然とした感覚なんだよ」

「その説明が漠然としすぎ」

「だって上手く言えないんだもん」

「感覚だもんな」

「そう。あ、わかった。日本人って、大体、日本で育って日本で死ぬじゃん?」

「まぁ、多いだろうな」

「だから、現代日本における常識で、自分の常識が作られる、みたいな」

「なんかわかった気がする」

「それがひと息に覆るとしたら、世界の終わりっぽく感じるかなぁ、って」

「わかるけどわからない」

 理解できるような、できないような話だ。

 信じている、自覚さえないほど肌に染み付いた概念が、ある瞬間から消え失せる。

 ある者は戸惑うだろう。またある者は受け入れずに怒るだろう。

 ただ、それは世界の終わりとかいうよりは、世紀末の混乱に近い気もするが。

 けれど仮に、ここが世界の果てだとしても、ここで世界が終わるのだとしても、友人となら悔いはないと思った。

「あ、新発売のからあげちゃんの、ハバネロエンペラー味買ってきたけど食べる?」

「そんなもん食べたら僕の消化器官が終わりを迎えそう」

 いや、やっぱり嫌かもしれない。

2020/11/27

小学生時代、習字の時間にひとりだけ習字セット忘れて絶望する感じ。

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