8.ロボットとフック
翌日起きてネット掲示板のアースレジェンド晒しスレを覗くと、書き込みが増えていた。
プレイヤーネーム:堕天使ルシフェル4
罪状:暴言・煽り・トロール
初手にプリーストを選択するチンパン。味方に来たらドッジ必須
俺は激怒した。
初手プリーストの何が悪いのか。
慈愛の精神で味方を勝利に導こうとする行為の何がいけないのか。
証明する必要がある。
俺は正しいのだと。
アースレジェンドとかいう民度最低のゲームをプレイするチンパンどもにわからせてやる必要がある。
俺はゲームにログインすると、早速ランクマッチを選択する。
キャラ選択画面でプリーストをピックする。
敵は間抜け面のロボットのようなキャラを選択してきた。
何だっけこのキャラ?
まあいい。
何であろうと俺はプリーストでみんなを癒やす。
試合が開始された。
敵を発見。
3対3の集団戦になりそうだった。
ロボットがびょーーーん!と凄まじい勢いで腕を伸ばしてきた。
俺の分身たるプリーストちゃんが捕獲されて、一瞬で敵の真ん中に引っ張られた。
俺はボコられて即死した。
何だ今のは。
ふざけんなよ。
俺は戦線に復帰したが、またびょーーん!と引っ張られて敵の真ん中に連れて行かれ、ボコボコにされた。
この試合、俺が4デスして負けた。
「プリースト先出しはよくないよ。ロボットを当てられる」
味方が教えてくれた。
「ロケットフックっていうスキルなんだ。貧弱で回避スキルもないプリーストは引っ張られて即死さ」
「どうすればいいんだ?」
「タフなキャラを使うか、構成的にロボットが出てこないことがわかってからプリーストを出すのがいいね」
「でもフックに当たらなければいいんだろ?」
「それはそうだね」
そうだ。
結局、敵のスキルに当たらなければいいのだ。
当たらなければ勝てることを証明すべく、俺は次の試合もプリーストを選択した。
またロボットが出てきて俺は3デスして負けた。
「プリーストとかいう雑魚キャラ使ってんじゃねえよ」
「うるせえよチンパン」
俺は不当な暴言に屈することなくその次の試合もプリーストを選択したが、またロボットが出陣してきて一生引っ張られて負けた。
まだ慣れていない。
避ければ勝てるんだ。
全てのスキルを避けろ。
ヘビーゲーマーの俺なら可能だ。
俺が味方をキャリーして英雄になるんだ。
その後5試合くらいプリーストを出したが、毎回ロボットを当てられてボロカスにされた。
俺は怒り狂ってVRゴーグルを投げ捨て、プリーストとかいうクソの役にも立たない穀潰しは二度と使わないことに決めた。