6.ノックアップコンボ
俺は昼過ぎに起きた。
適当に顔を洗ってシリアルを食べる。
両親は海外出張でいない。
この家には俺一人だ。
まあだから快適にニートできているとも言える。
もはや日課となったアースレジェンドにログインする。
このゲームは大変面白い。
ゲームはな。
世界中で大人気な理由がよくわかる。
ただしプレイヤーが酷い。
民度が低いという評価は至極真っ当だった。
試合中の暴言や煽り合いは当たり前、切断やAFK、スマーフも日常茶飯事。
eスポーツと呼べるマトモな試合は、10回に1回もないのではなかろうか。
キャラクター選択画面に移る。
俺は岩の塊のようなタンクキャラ、ゴーレムを選択する。
味方はサムライと、味方キャラの攻撃力や移動速度を上げることを得意とするエンチャンター。
試合開始だ。
俺たちは3人まとまって行動する。
俺はこのゲームのセオリーが大体わかってきた。
タンクやエンチャンターといった集団戦が強いキャラがいるときは、みんなでまとまって進軍するのがいい。
逆に孤立した敵を瞬殺でき、集団戦があまり強くないアサシン等が味方にいるときは、森などに潜みながらバラバラに行動するのがいい。
今回は俺がタンク、味方の一人がエンチャンターなので、みんなでまとまって進んでいる。
突如、横合いの森からアサシンが飛び出してきた。
俺はタンクなので瞬殺されない。アサシンをガシッと食い止める。
そこに他の敵も飛び出してきた。
ここが狙い目だ。
ズドーン!!!!!
俺のゴーレムが必殺の突進スキルを使って、敵をまとめて打ち上げる。
ほんの1~2秒ほどだがノックアップ中の敵は行動不能だ。
味方のエンチャンターが、サムライの攻撃力を上げるスキルをかける。
「ハッサァァ!!」
サムライが気合一閃、ノックアップ中の敵をまとめて切り刻んだ。
このアースレジェンドでは定番のコンボだが、とても気持ちがいい。
俺が今回選んだこのゴーレムは、味方に攻撃力の高いキャラがいるときは強いのだ。
その後試合は一進一退の攻防を続けたが、初手で優勢を築いた俺たちが勝利した。
「nice team」
俺はチャットした。
「good team」
「ty」
味方もそれぞれ返答してくれる。
tyはThank youの略語だ。
とてもいい試合だった。
そう。10回に1回くらいは気持ちのいい試合ができる。
だからこのゲームはやめられないのだ。
アドレナリンがドバドバだ。
中毒性がある。
味方が今回選んだサムライは、人気キャラのわりに味方に来るとろくな動きをしない。
大体一人で突進しては死に続けて負ける。
しかしごく稀に今回のような当たりのサムライがいる。
味方がマトモだと勝てるし、味方が酷いと負ける。
運ゲーといえよう。
もちろん自分がマトモなのは大前提だ。
暴言で味方の士気を下げるなどもってのほかだ。
他プレイヤーがどうであれ、自分は冷静に落ち着いてプレイしなければならない。
次の試合にも味方にサムライがきた。
先程の興奮が冷めやらない。
またいい試合をしたい。
頼むぞ。
サムライが突進を続けて一人で5デスして負けた。
俺は「fuck you noob, uninstall plz」とチャットした。
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