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幸せな人生の為の転生者狩り  作者: さいじゃ君
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幸せな人生の為の転生者狩り

────俺は初めて人を殺した

刃が相手の首に当たったその瞬間から手に伝わる肉と骨を断つ感触と己の手で分かたれていく敵の頭と体を写す目はステータスの高さ故か噴き出す血の一滴一滴を見逃すこと無く脳に記憶を刻み込む

瞬間から催す吐き気、人を殺し助かったことによる罪悪感と安堵に気が狂いそうになる

無情に照らす太陽は熱を帯びて血の臭いをむせ返らせる所為で胃の中身は一滴も残りそうにない…全くもって最悪だ


「……ハァ…ハァ…糞ッ!気持ち悪ぃ……!」


こんなことをしてる場合じゃないのは分かっている、盗賊はまだ全員死んだわけではないのだから…

ゲンは立ち上がり盗賊の死体に目を向ける


「…悪ぃが俺が生きる為だ、てめぇの物いくつか貰うぜ…」


もし他の盗賊に追われた時の為に盗賊の剣を予備として背負い防具を身に付ける、盗賊が腰に装備していたウエストポーチごと貰い自分に装備する

中には青い液体の入った水筒と紫色の液体の入った小瓶が一本ずつ入っていた


「よし、ここを離れるとするか」


準備を終えて崖とは逆の方を向いたその瞬間、顔面を掠って頬を切り裂く石が崖に穴を空ける

突如として目の前に現れた気配はすぐさま消える


「消えた…!いやッ上かッ!!」


強く踏み込み地面を軽く抉りながら後ろへ跳ぶ

巨躯の四肢を持つ不揃いな体格の影がゲンのいた場所に落ちてくる

その殺気を放つ異形の怪物が口を開いた


「オマエハナニモノダ?」


これはもう逃げれそうにないな…しょうがない予定を変えるか…

コイツを殺らなきゃ俺が殺られちまう、なら殺す!!


「…通りすがりの盗賊狩りでいいか?」


全く…冷や汗が止まらねぇぞこの野郎


「ヤッパリテキダッタ、シネ」


「やっぱ盗賊の仲間かよ!!」


怪物はその巨躯な体に見合わないスピードで距離を詰め右ストレートを打ち出す

すかさず体を屈めて怪物の攻撃を躱して横に跳び距離を取りながら剣を引き抜き構えて怪物に向き合う

打ち出された拳から発せられた拳圧が崖の壁に大きな亀裂を走らせる


「ハヤイナ」


「…!出鱈目かよ!」


どうする…あのパワーはヤバい、一発でも受けたら確実に死ぬ…

だがスピードは俺と同等かそれ以下、それなら!!


「こっちだ糞デカブツヤロー!」


ゲンは元いた場所へ走る


「ニガサナイ!」


怪物は木々をなぎ倒しながら真っ直ぐ突き進んでくる


頑丈なヤローだぜコノヤロー!

どうするとりあえず広いとこでの正面衝突は避けねぇと…なんか使えるスキルは…これは、試すか


「〘雷包〙!!」


突如ゲンの全身を雷が包み込み通った所に黒く焦げた後をつけその場から消える

意識が追いつく頃にはさっきの気絶させた盗賊達が倒れていた


「……は!?いつの間に着いたんだ…?このスキルか?へぇ……使える、これならいける!!」


ゲンは倒れている盗賊の剣を一本抜き取り上に投げ軽く魔力を上に向かって流す、そうすると自分から雷が剣に向かって飛来し着弾した雷は剣に纒わりつきながら剣とゲンの間をまるでピンと張った糸の様に繋がり流れ続ける


「よし、こんな事も出来んなら大丈夫そうだ」


一応鉄以外も試したが雷が真っ直ぐ向かうことなく命中すらしなかった

そしてゲンは倒れた盗賊の鉄製の物を全て奪い、雷を纏いながら凄まじい速度で至る所に鉄を剣を刺し鉄製の物を置いていく

五本の剣を自分の周りに刺し準備を終え怪物を待つ

すると目の前から一本の木が他の木を貫通しながら飛んでくる


「来たか!!しゃらくせェ!!」


飛んできた木を雷を纏った剣で一瞬にして焼き切りそのまま剣を投擲する


「グァァア!!」


そして目の前から聞こえる怪物の声に向かって少し多めに魔力を流し雷へと変換させる

多めに流された魔力はその量に比例し着弾と同時に大きく雷を散らしながら爆発する


「そこだな!」


さらに自分の周りの剣四本を怪物へと投擲し一本を強く握りながら剣と同じ方へと走る

視界の先に現れた化物には四本の剣が惨たらしく刺さっており大量の血を流しながらその場で這いつくばっていた

人の血とは全くもって違う異臭を放つ血と〘雷包〙によって焦げた体から放たれる煤の臭いが鼻を刺激する

瀕死の化物に優しい声音で言い放つ


「悪ぃがここまでだ、せめて安らかに行きやがれ」


化物は恨めしそうな顔でゲンを睨みつける


「ユル…サ……ナイ…ジゴ…ク…デマッテ……イルゾ!!」


「勝手に待ってろ…」


そのまま剣を大上段から全力で振り下ろし化物の首を落とした

ふと、二度の殺しでありながら殺した事に何も思わない自分がいる事にたった今気付いたゲンは訳も分からず込み上げる笑いに身を任せた


「ハハハハハハッ!!なんだこれ!笑いが止まらねぇ!!ハハハハハハッ!!」


涙は無い、だが身体は言う事を聞かず勝手に崩れ落ちる

急によぎった過去(トラウマ)とさっきの死体、血の匂いが更に記憶にリアリティを持たせる

やはり身体は正直だ、死んだ感情を共に吐き出すかのように吐く

気付いた頃には胃の中は既に空で出るものは感情だけだ


「キメェ…キメェキメェキメェキメェキメェ!!」


…………あ…………………?

消えた…何かが自分の中から消えた、そんな感覚をゲンは覚えた

そして化物の死体を再度確認して、ただ一つ浮かんだ言葉を口にする


「…壊れやすいなこの生き物(おもちゃ)…」

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